ようやく物語が動き出す!が。よい子は真似しないでね的な命懸けの障害が!
涙があふれてきた。
ぽこざるは、たまらなくなってレストランを飛び出し、みぞを飛びこえ、ひこざるのところにつっこんだ。
ひこざる、よけた。ぽこざるは電柱に頭をぶつけながらも、泣きながら、今思い出したことをひこざるに語った。
「ぼく、復しゅうするよ」
「ちょ、ちょっとぽこざるくん、その料理長にどうやって復しゅうするんだよ」
「ぼくの得意なイタズラで」
「そんなこと言ったって……だいたい、どうやっておさる王国に帰るんだい?」
そう言われて、ぽこざるはビクッとした。そんなことぜんぜん考えていなかったからだ。
ぽこざるは目を回して、頭から、みぞに落っこちた。べちょべちょだったから、ぽこざるもべちょべちょ。そしていきなり泣き出した。うるさい。
ぽこざるがそんなことしてる間に、またまたひこざる、ひらめいた。
「ここって、飛行場近いよね」
というわけで空港にうまく忍びこんだ。
この2匹は、最強に運がいい。
おさる王国は、日本から韓国に行く間にある島だ。なんと、今日に限って、韓国行きの便がある。2匹は、空港内を回って、韓国行きの便が出るまで後15分だと知った。
それから、飛行機のタイヤに乗っかって行くことにした。
こっそり外を見ると、もうすぐ発着する飛行機が見えた。2匹は、最後の最後まで見つからないように用心して、韓国行きの飛行機のタイヤにしがみついた。
成功。
飛行機はしばらく、滑走路を進んで、それから上空に飛び出した。
これでうまくいく、と思ったものの、途中でタイヤが機体の中に! 大ピンチだ。
2匹は、タイヤが入り終わって閉まった扉のさけ目にはいつくばった。
飛行機は同じところを何度も回っている。このままだったら、落ちてしまう。
そのとき、ひこざるが言った。
「飛行機が左にかたむいたら、右のつばさまで、歩いていこう!」
なるほど、左にかたむいたら、飛行機の壁をつたってつばさまで行ける。後は、うつ伏せにつかまって乗っていればいい。
飛行機がに左にせん回した。今だ!
しかし、とんでもない向かい風。ふき飛ばされそうだ。風台風よりもすごいかもしれない。
その時、飛行機が向きを変えた。
こんなやばいことはない。落ちる!
と思った瞬間、2匹は、つばさに手がとどいた。
とんでもなくラッキー! でも、向かい風がすごい。
そしてとうとう、韓国に向かってまっしぐらだ。今までと、向かい風がまるでちがう。
もう限界だ、と思ったそのとき、おさるの形をしたおさる王国が見えてきた!
「飛び下りるよ、ひこざる!」
「ちょ、ちょっと待って! 雲がないからわかんないけど、ここは、雲より高いんだよ! 飛び下りたら、死んじゃうよ!」
「えええええ⁉」
しかし、2匹はもう限界だった。
手をはなしてしまった。海にまっさかさまに落ちていく。
しかし2匹は、海にたたきつけられることはなかった。
とんでもないしょうげきで落ちでいく2匹を、なんと、あのクジラのじいさんが助けてくれたのだ。しおをふき上げて。
2匹は涙を流してクジラのじいさんにお礼を言った。じいさん、
「さ、ここで下りてもらおうかの。それにしても、いきなり落ちてきたから、おったまげたぞい」
とだけ言って、砂浜の近くに下ろしてくれた。
2匹は、おさる王国に戻ってきたのだ。
砂浜に上がると、ぽこざるは考えた。
「よく考えれば、なんでぼくはあんな縁もゆかりもないサルに従ってたんだろう」
「バイト先の上司だから、仕方ないよ」
と、ひこざる。ぽこざるは、さらに続ける。
「とにかく、ぼくはあの料理長に復しゅうするんだ。まず、料理長の家からお城までの道に、落とし穴を2、3個ほるんだ。それから、落とし穴の途中に、ひもを5、6本引いて……後は、料理長が橋を渡ってると、その橋をのこぎりで切り落とすっと……最後にタルを転がして、料理長をボコボコにする! うん、完ぺきな作戦だ!」
「どこが完ぺきなんだよ……」
と、ひこざるはつぶやいた。
ぽこざる、何も考えないで、料理長の家の近くに、どこからかシャベルを持ってきて穴をほりだした。おそい。スローモーションを見ているようだ。だいいち、昼間っから道のど真ん中でどうどうと……。
後をつけてきたひこざるは、あきれた。そして夕方。
「よし、できたぞ」
なんと、昼から夕方までかけて作ったのに、深さはわずか40センチほどだ。落とし穴になってない。しかもぽこざるは、上に草とか枝とかなんにも乗せないで、穴をむき出しにして戻ってきた。
「もうおそいから、今夜はひこざるんちに留めてよ」
「いいけど、あんな穴でいいの? ぽこざるくん?」
「いいじゃん、いいじゃん、ぽんぽこぽーん!」
ぽこざるは、おしりをたたいてみせた。ひこざるは、あきれてものも言えない。
ひこざるの家に着いた。ぽこざるは、さっそく寝てしまった。玄関で。
「ぽこざるく~ん、なにも玄関で寝なくても……」
仕方がないから、ひこざるはぽこざるをほっといて、自分の部屋で寝た。
ぽこざるの大いびきが聞こえる。うるさくて、簡単には寝れない。ヘッドホンをつけなくてはいけなかった。
そして朝。
朝食は、ぽこざるの大好物のたまご焼き。昨日は、ぽこざるもひこざるも夕食を食べてない。だから、たまご焼きに飛びついた。
ぽこざるは、歯磨きを10秒だけで終わらせて、また出かけていった。
「落とし穴って時間かかるから、もういいや」
料理長は、朝早くお城へ行って、夜おそく帰ってくる。つまり、もう落とし穴には気づいているはずだ。
でもぽこざるは、そんなこと気づかない。
「次は、通り道にひもを引いてっと」
と、はりきって、道路の両サイドの木と木の間に、どこからか持ってきたひもをしばりつけた。木の数は合計18本。なのに、ひもは6本も足りない。
ぽこざる、
「まあいいや」
と、家が建ち並ぶすき間に入りこんだ。そしてタル屋に行って、
「タルを6つ、タダでくださーい」
と呼びかけた。タル屋の主人にどなられた。
「ちぇー」
とぽこざる、しぶしぶお金をはらった。バイトでかせいだお金。
タルを6つゲットした。それを道のわきに、下から3つ、2つ、1つと重ねる。
「やった、できたぞー!」
うれしくて、飛び上がった。ごちん。せっかく積んだタルが、全部くずれて台なしだ。
そのうち2つは、ぽこざるの顔面、脳天に直撃した。痛い。ぽこざるは泣いた。今度は1時間。
でも、これで計画は実行できる。
ぽこざるは、もっと何かしたくなった。そこで、ひこざるの家に行って、でっかい画用紙をもらった。
それに、海で拾ったマジックで『悪のぽこざるのせいで、料理長は恐怖のどん底に!』と書きこんだ。きたない字。ぱっと見ただけでは、読みにくい。
そんなことしてる間に、もう3時。