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石頭ジョージの小さな冒険と帰還  作者: ふくろう亭
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5 船体

 なんとかして船体の状態を確認したい。すべてはそれからだ。まず見えるところから、そして最後はハッチを開けて外に出て。

 長い航海中にやるべき課題はそれなりに用意されていた。途中で観測用の衛星や探査機を放出したり、無重力や真空を利用した実験を行ったりと、個人別にしっかりプログラムされている。

 だから真空を使うための実験用の小さなエアロックが付いていた。両手を突っ込んで作業出来る程度の小さなものだが、これを使うことにした。

 カメラを用意してちょっとした工作を施して準備の上外側の小さなハッチを開ける。微妙な操作が出来るように手動でも使えるようにしていたのが幸いした。そっとカメラを外に突き出し船体が映るように画角を変えていく。モニターが見えないので勘に頼るしかない一発勝負だから時間を掛けた。

 カメラを取込み外のハッチを閉じあえてエアを充填せずに内側を開ける。エアも貴重品だ。

 船体の片側だけだが思ったより良く撮れていた。モニターで確認出来ないのでカメラの小さな画面で再生する。やはりというかソーラーパネルを支持していたマストが根本から消えている。船体を貫通したものよりはるかに大きなサイズのものが衝突したのだろう。

 逆でなくて良かった、さすがにマストを吹き飛ばすようなのが船体を直撃していたら自動修復も間に合わずに意識を失っていただろう。それとも船体そのものが爆散していたかもしれない。

 船体側にちぎれたケーブルが見える。あそこの工作は苦労したんだよな、丈夫に作っておいて良かったよ、あんなところからエア漏れしたら自動修復も効かないところだった。ケーブルの被覆と導線の隙間からエアが漏れないかな、融着しているから大丈夫か。真空対応だからな。少しずつ後部が見えてくる、ちょっと艇体に擦ったような跡が見えた。これで船体にモーメントがかかって回転したのかな。それなら軌道までは影響がないかもしれない。

 あれ、なんかあるな。

 細いワイヤーロープが艇体にくっつくように伸びている。

 これは、マストを立ち上げるためのワイヤーだ。立ち上げてソーラーパネルを展開した後はそのままマストを支持するために張っていたものが残っている。

 ひょっとすると。小さな画面をズームして凝視した。

 あった。

 ワイヤーの先にソーラーパネルの残骸らしきものが見えた。


 さて決断タイムだ。

 残っているソーラーパネルを回収してつなぎ直し、電力を回復させる。それだけのことだ。これで全て解決だ。そうすれば本部船に連絡をして回収を依頼する。ちょっと格好悪いが緊急事態だ仕方がない。ライセンスに変なものを仕込ま無いようにお願いしなきゃな。

 でもソーラーパネルが使い物にならなかったら。貴重な電力を消費しての作業が無駄になる。

 そうか、まず電源を入れて本部船に連絡するんだ。なんでこんな簡単なことに気が付かなかったんだ。

 それからだよ、ジョージ君。

 外に出られるように外部作業用の宇宙服に着替える。思ったより船内の温度は低く、気圧も下がっていた。空気も変な匂いが混ざっている。予想以上に事態は深刻化している。

 準備を整えて電源を回復させた。船内が明るくなった。空気環境はそのままにしておく、まだエアは大事にしたい。

 さて位置の確認をして、通信を行おう。

 あれ、ビーコン反応が拾えない。前にも後ろにも誰もいないのか。本部船の信号も取れない。そもそもこの船からの信号が回復しない。

 仕方がない、通信機のスイッチを入れる。呼び出しコールは緊急事態発生だ。返事を待つ。待つ。待つ。

 だめだ、ノイズさえ入らない、どういうことだ。ひょっとして。

 通信機の出力を点検する。だめだ何も出ていない。これは船体尾部が吹きとんでいるのだろうか。アンテナやらビーコンやら船尾灯やらの並んだ船体尾部が。


 意を決して船外に出たジョージの目に映ったのはなぎ倒されたアンテナ群と細いワイヤーでかろうじて繋がっているソーラーパネルの残骸だった。

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