哀しい愛の物語
これは遠い昔にあった誰も知らない物語。
モンスターが蔓延る世界の小さな村のお話。
その村には木こりを生業としている歳若い少年がいた。
少年は真っ直ぐな性格で、村の皆からも好かれていた。
ある日、少年がいつもの様に森に木を切りに行き、仕事を終えて帰ろうとした時に木に寄りかかって眠っている少女がいた。
そのまま置いていくわけにはいけないと思った少年は少女を起こし、声をかけた。
「こんな所で何をしているんだい? 」
少年の声に少女は目を覚ます。
だが、まだ起きようとしない少女にもう一度少年は声をかける。
「何故こんな所にいるんだい? 」
その問いに少女は目をつむったまま答える。
「お母さんの病気を治すために薬草を取りに来たの。 けど、疲れて眠くなってしまって、ここで眠っていたの」
少女の話に違和感を感じながらも、少年は少女に、
「一緒に帰ろう? お母さんが心配するよ」
その言葉に少女は悲しそうな顔をしながら答える。
「お母さんの病気が伝染ったらいけないから、家にはかえれないの」
少年は悲しそうな顔をしながら、
「お父さんは? 」と、尋ねる。
「お母さんしかいないの お父さんは新しい畑を開拓している時にモンスターに殺されたわ」
少女は悲しそうな顔しながら、少年にこう言った。
「だから、お兄ちゃんまた明日も会いにきてね。約束だよ? 」
「ああ……約束だ」
少年は心の中でモンスターに食われる少女に祈りを捧げ、帰路に着いた。
翌日、少年の考えとは違い少女は木の根元に座っていた。
翌日も、そのまた、翌日も。
少しの間が流れ、少女と想い合う様になった。
少年は少女と会う時間を楽しみにし、少女もまた、少年と会う時間を楽しみにしていた。
少年がいつもの様に森に木を切りにいくと、少女がいつもと同じ木の根元に倒れていた。
少女は少年が来たことに気づき弱々しく微笑んだ。
「ねえ、聞いて欲しいの」
少女は弱々しい声で少年に話し掛ける。
「私ね、ほんとはモンスターなの。 貴方を初めて見たとき、美味しそうな人間が来たなと思ってたの。 だから、貴方に近ずいたのよ。 貴方が油断したところを食べるために」
「けど、私は貴方を食べることができなかったわ。 何故だかわかる? それはね、私が貴方を好きになってしまったからよ。 モンスターが人間を好きになるなんておかしいのにね」
そう言って、少女は笑った。
「そんなの分かってたよ。 君がモンスターだって。 けど、僕は君が好きだっっ! 」
少年は涙でぐしゃぐしゃになった顔で叫んだ。
「おかしい人ね。 モンスターを好きになるなんて」
少女は、弱々しく、だが、美しい顔で微笑んだ。
「でも、ありがとう。愛してるわ」
「そして、ごめんね。 私、もう少しで死ぬの。 モンスターも食糧である人間を食べないと生きれないのよ。 だから、最後にお願い」
「貴方の腕の中で死なせて?」
少年は無言で抱きかかえ、
「愛してる」と、笑顔で言った。
少女もまた、少年に向かって、
「いつまでも愛してるわ」と言って、静かに目を閉じた。
少年は少女の身体を強く抱きしめ、いつまでも、いつまでも、声を荒らげて泣いたという。
これはモンスターだった少女と人間だった少年の哀しい恋の物語。
処女作です。駄作ではありますが、皆様に楽しんで頂けたら幸いです。