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俺の愛する幼馴染(負けヒロイン)  作者: 炎右ロイ
第1章
9/17

華凛と凌雅

華凛「えへへ、穂ぉ〜奈ぁ〜未ぃ〜。」

穂奈未「もぅ、華凛ちゃんったら。」

凌雅「・・・。」


無事クレープを買うことができた俺達は、駅前のベンチに3人並んで座っていた。並びは左から俺、穂奈未、華凛の順だ。華凛は今までに見たことが無い程にデレデレしている。そして、それを穂奈未は天使のような笑顔で見つめている。一方で俺はというと、クレープを食べながらその様子を凝視していた。嫉妬心というよりは、何というか路上で恥ずかしげも無くキスをするカップルからついつい目を離せなくなってしまった時のような、そんな感じだ。


華凛「ちょっと、何見てんのよ!」

凌雅「み、見てねーし。」


ええ見てましたとも、英語で言えばgazeレベルでな。


穂奈未「そう言えば優雅君は?」

華凛「あ。トイレに行くって言って置いてきたんだった。」

凌雅「おい!」


クレープ屋に1人で並ばされたり、置き去りにされたり、ホントに優雅も大変だな。


華凛「とりあえず電話してみましょうか。・・・。あれ、出ないわね。繋がってはいるみたいだけど。」

穂奈未「もしかして、何かあったのかな...。」

凌雅「・・・。」


確かに俺は性格上、物事を考え過ぎてしまいがちなところがある。だからこれも、もしかしたらただの考え過ぎなのかもしれない。


華凛「確か、あっちの方で待たせていたはず...。あれっ、いない。」

凌雅「!!ちょっと探してくる。」

穂奈未「!!凌雅君、だったら私も」

華凛「ちょっと待った。ここは3人で手分け、つまり1人がここで待って残り2人でそれぞれ別の方向を探す。この方が効率的ね。」


さすがは優等生、頭の回転が速いな。


穂奈未「それなら私は向こうを探すね。この辺は買い物でよく来るし。」

華凛「ならアタシはあっちを探すわ。一度通ってるから大体道は分かるし。」

凌雅「ちょっ、俺が待つ流れなのか?言い出しっぺは俺なんだけど」

華凛「じゃあアンタ、この辺の道分かるの?」

凌雅「・・・。」


くっ、適材適所というわけか。


穂奈未「凌雅君、待つのは辛いかもしれないけど...、何かあったら必ず連絡するから...、ここで待ってて。...私達を信じて。」


まあここまで言われてしまっては仕方がないよな。


凌雅「...分かった。2人とも気をつけてな。」


俺は不安を感じつつ、2人を見送った。だが、俺は知っている。正しい判断が必ずしも最良の結果を導くとは限らないということを。



あれから30分くらいは経っただろうか。未だに2人からの連絡は来ない。そういえば、華凛が「繋がってはいるみたいだけど」と言っていたな。ならば、今かけたら優雅の電話に繋がるのではないだろうか。と思った矢先、俺の携帯に着信が入った。優雅からだ。


凌雅「優雅、今どこにいるんだ!」

優雅「悪い、ちょっと道を聞かれてな。今からそっちに戻るよ。それよりも」

凌雅「何だ?」

優雅「華凛に連絡がつかない。」

凌雅「なんだって!?」

優雅「すまないが、僕が戻るまでの間、華凛を探してくれ。頼めるか?」

凌雅「分かった。お前も気をつけろよ。」


俺は通話を切り即座に華凛の携帯に電話をかける。繋がってはいるようだが出ない。続けて穂奈未に電話をかける。


穂奈未「もしもし凌雅君?」

凌雅「穂奈未、無事か?」

穂奈未「私は平気。それより華凛ちゃんが」

凌雅「ああ、今優雅から聞いたよ。」

穂奈未「私もそっちに向かうから。先に探してて。」

凌雅「分かった。穂奈未も何かあったら連絡してくれ。」

穂奈未「うん。...凌雅君、気をつけてね。」



気付けばもう日が傾き始めていた。空は美しい夕焼け色に包まれている。しばらく歩いて行くと、分かれ道に突き当たった。


凌雅「また分かれ道か。」


当てなどない。だったら隈無く探すだけだ。左から順番に見ていくことにしよう。どうやらこの道はあまり人通りが多くないようだ。

ふと横を見ると、電源の入っていない自動販売機が置かれている。後ろの壁面には何語だかよく分からない不気味な落書きがあり、まるで進入者に対して警告を発しているようにも思える。さらに奥へと進んでいくと、前の方から若い女性の怒鳴り声が聞こえてきた。もしかしたらと思い、恐る恐るその声の方へ近づいてみる。


「だから何度も言ってんじゃん。尾崎君とは別れた方がいいって。」

「今日だってデート中にどっか行っちゃったんでしょ?マジありえなくねぇ?」

「今頃は他の女の子とデートしてたりして!」

華凛「・・・。優雅はそんなことしないわ...。」


華凛はいつもとは打って変わって、俯きながら答えていた。俺は「優雅がそんなことするわけないだろ!」と内心では思いながらも、精神的には妙なくらいに落ち着いて、どうしたら華凛を助けられるのかを考えていた。しかし、このままゆっくり考えていて良い状況では無いということも事実だ。よし、とりあえず話しかけてみることにするか。


凌雅「あ、あの、すいません!」

「あん?」


こっ、怖えぇ!だけど、華凛を助けなきゃ!でもどうやって?!えぇい!何か、何か武器は無いのか!などと考えていると、連中は驚いた表情をしてざわつき始めた。


「な、何でテメェがここに?!オメェがあっち側に連れてったんじゃねーのかよ!」

「ば、馬鹿な!確かに尾崎は向こうに連れてったはず...。こっちはバイクでぶっ飛ばして戻って来たんだぞ!」


ん?尾崎を連れてったって、何を言っているんだ?


凌雅「えっと...、優雅はそんなことしないですよ。」

「は?何言ってんだテメェ。ってか、男が自分のこと名前で呼ぶとかマジキモいんですけど。」

凌雅「え?...あ。」


なるほど、そういうことか。どうやら連中は俺のことを「優雅」だと思いこんでいるらしい。双子は似てるってよく言うけど、そんなに似てるかな、俺達。


華凛「やっぱりね。」


どうやら華凛もこの状況を理解したらしい。まあ俺よりも頭が良いのだから当然か。


「なっ、何勝手に納得してんだよ!」

「アタイらよりも、そいつの言うことが正しいって言いたいわけ?」

華凛「ええ、そうよ。」


物怖じせずに凛とした態度で華凛は答える。俺はというと内心まだガックガクなのに、華凛はまるで引っかかっていたことが解決してスッキリしたような表情をしている。やっぱりすげぇよ、華凛は。


凌雅「ささ、行こうぜ華凛。」


とりあえず、華凛さえ逃がすことができればもうここには用は無い。すかさず俺は華凛の手を引いて立ち去ろうとする。が、まあそう上手くいくはずもなかったらしい。


「逃がす訳ないじゃん。」


一瞬だった。俺はいつの間にか後ろに回った女の1人にもう一方の手を掴まれてしまっていた。ヤバイと思った俺はとっさに体を回転させ、その勢いを利用して手刀を叩き込んだ。


凌雅「ふんす!」

「ひぎぃ!」

凌雅「うぇ?!」


決まった。というか気持ちいいくらいに決まってしまい、変な声が出てしまった。我ながら結構な威力だった気がする。


「ひっ、ひいい!」


それを見て驚いた別の女は一目散に逃げていった。


「クソが!覚えてろよぉ!」


続いて手を掴んでいた女も、どこかで聞いたことがあるような捨て台詞を吐いて逃げていった。人は見かけによらないとはよく言うが、余りにも呆気ない幕切れに俺はただ立ち尽くすしかなかった。



日はすっかりと暮れて、暗くなった夜道を俺は華凛と2人で歩いていた。


華凛「アンタ、意外とやるじゃない。」

凌雅「ま、まあな...。」


華凛の言葉に、俺は思わず顔がニヤけてしまう。へへっ、もっと褒めてくれてもいいのですよ。それにしても、さっきの連中は一体何だったのだろうか。などと考え始めるや否や、華凛は溜息混じりに話し始める。


華凛「よくあるのよね、こういうことが。」

凌雅「そうなのか?」

華凛「ええ、ウンザリするくらいに。それにしてもホント、女って怖いわよね。あんな連中にまで話が伝わるんだもの。」


いやいやお前も女じゃねーか、なんてツッコミはさておき、確かに華凛の言う通りだ。女の情報網はマジで怖いと俺も思う。小さい頃、ちょっとした失言で女の子を泣かせてしまったことがあったのだが、それからほんの数分後に会ったこともないようなヤツまで集まってきて、キモイだのサイッテーだの罵声を浴びせられまくったっけな。


凌雅「もしかしてさっきの奴らは?」

華凛「顔をマスクとかで隠してたから確信は持てないけど、多分アタシとは初対面でしょうね。」


まあ華凛と面識があるくらいのヤツなら、俺と優雅を見間違えるようなことはしないはずだ。つまるところ、それくらい俺達とは赤の他人レベルの連中にまで話が広まっているということだ。


凌雅「警察とかには相談したのか?」

華凛「いいえ。それに犯人が分からない状態で行くのは返って危険な場合もあるし、提出できるような具体的な証拠も無いのよね。」

凌雅「そうか...。」


優雅は、学校内じゃ知らない人はいない程の有名人だ。誰に好意を向けられ、また誰に恨まれているのかを完全に把握するのはまず無理な話だろうよ。


華凛「だから強くなるしかないのよ。アタシが、優雅も、自分自身も守れる位に...。」

凌雅「・・・。」


その言葉を聞いて、俺は何も言えなかった。それは華凛の決意の固さに感銘を受けたからかもしれないし、華凛が直面している残酷な現実を知り圧倒されてしまったからかもしれないし、現実と戦い続ける華凛と現実から目を背け続けた自分を比較して強い劣等感を感じたからかもしれない。クソッ、また何もできないのか、俺は...。


華凛「ふふっ、ホント優雅の言ってた通りね、アンタはさ。」


重い雰囲気を変えたかったためか、華凛は柔らかい表情で俺の方を見つめて話し始める。


凌雅「な、何がだよ。」

華凛「口数は少ないけど、顔を見れば考えてることがよく分かるってことよ。」


似たようなことを穂奈未にも何度か言われたことがあるけど、俺ってそんなに分かりやすい感じなのか?


凌雅「えーと、あぁ今日も綺麗な月が見えるなあ!」

華凛「あら?今頃は大体下弦の月のはずだから、今の時間はまだ見えないはずよ。」

凌雅「しまった!」

華凛「ふふふっ、星には詳しいんでしょ!」


悔しそうにする俺を見るや否や、華凛は勝ち誇ったような態度でニヤニヤし始めた。くそぅ、な、何か言い返さなければ...。


凌雅「ああもちろんだとも。あっちに見えるのが」

華凛「シリウスね、おおいぬ座の。そしてあれがこいぬ座のプロキオン、オリオン座のベテルギウスで合わせて冬の大三角と呼ばれているのよね。」

凌雅「くっ、くそぉ...。」

華凛「あれれぇ?どおしたのかなぁ?」


やっぱすげぇよ、華凛は。ちくしょー、悔しいが、完敗だ...。


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