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俺の愛する幼馴染(負けヒロイン)  作者: 炎右ロイ
第1章
8/17

再び向き合う友情

穂奈未「そういえば、そろそろお腹空かない?」

凌雅「まあ、言われてみればそんな気もするな。」

穂奈未「凌雅君は何が食べたい?私は何でもいいよ。」

凌雅「俺も、何でもいいや。」

穂奈未「もう、そういうのは一番困るよ〜。」

凌雅「そう言われてもな〜。」


正直に言うと、俺は雑談をするのが苦手だ。何か目的があれば話しかけることはできるのだが、無い場合はどう話し始めればいいのか、どんな言葉で話しかけたら良いのかが未だによく分からないのだ。そして、おそらくこのことは穂奈未もよく理解しているのだろう。だからこそ、いつも穂奈未は俺を気遣ってこんな感じでいつも話しかけてくれるのだ。大人しい穂奈未の性格を考えれば、本当は話し役よりも聞き役に回りたいだろうに。


穂奈未「ねぇ、聞いてる?」

凌雅「あ、うん。カレーとかどうだ?」


こう真近で目を見られると、ドキッとするな。それにムッとした顔も可愛いし、なんかいい匂いがする...。ああ、可愛いなぁもう。抱きしめたいなぁ、穂奈未!


穂奈未「もうお昼の話はおわったよぉ〜、もう。」

凌雅「えっと、何の話してたのさ。」

穂奈未「いやもういいよ。大した話じゃないし。」

凌雅「そっか。」


ここからクレープ屋まではまだ少し距離がある。いや、ここは道のりというべきだろうか。単に駅前と言っても、道路を挟んだり、改札の反対側だったりすると結構時間がかかったりするのである。つまり、距離は近いが、道のりは遠いのである。


穂奈未「あ、凌雅君。私ちょっとトイレ行ってくるね。」

凌雅「あ、じゃ俺も行く。外で待ち合わせでいいよな。」

穂奈未「うん。」


トイレは少し混んでいる。待ち合わせをしたのは失敗だったかな?けれども、今更「間に合わなそうなら他のトイレに行ってもいいよ」なんて言えないしな...。などと考えながら俺は列の最後尾に並んだ。見た感じでは、男子トイレよりも女子トイレの方が並んでいる人は多いようだ。



しばらくして、用を足し終えた俺は、道をぐるっと180度見渡す。すると、正面から約45度くらいの壁際に、クレープを片手に持った華凛が立っていた。


凌雅「クレープは無事買えたんだな。あ、そうだお代は?」

華凛「いや、アンタ達の分は買ってないわよ。」

凌雅「えっ、優雅が並んでるって...。」

華凛「優雅が買ったのはアタシと自分の2人分だけよ。」

凌雅「そ、そっか。」


思い返してみれば、別に4人分買って来るとは言ってなかったしな...。


華凛「もう、しょうがないわね。かわいそうだからコレをあげるわよ。」


と、見せられたものは、例の割引き券。顔を上げると、華凛は何食わぬ顔で俺の返事を待っていた。


凌雅「もう要らねーよ!」

華凛「あら、残念ね。」


しかもクシャクシャだし...。けど、こんなボケをかましてくるくらいには、こいつと仲良くなれたということか。って、別に仲良くなりたかったわけじゃないんだからな!ほ、ホントだぞ!って、俺は誰に対して言っているんだ?



しばらくして、穂奈未が戻ってきた。右手には、おそらく手洗いに使ったであろうハンカチが握られている。そんなに急がなくてもいいのに...。


穂奈未「終わったよ〜。じゃあ行こっか、凌雅君。」


と言って、穂奈未はどこかぎこちない笑顔を俺に向けた。


凌雅「?」


穂奈未の表情に違和感を感じ、俺は一瞬固まってしまう。しかし、穂奈未の目を見て俺はすぐに感じ取った。そっか、そうなんだな。穂奈未の次の行動の予測ができた俺は静かに身を引いて、その様子を見守ることにした。

穂奈未は華凛の顔をじっと見据えている。一方で華凛は先程とは打って変わり、バツが悪そうに目をそらしている。


華凛「・・・。」

穂奈未「と、華凛ちゃん...。」


時間としてはほんの数秒だったと思われるが、その静寂は妙に長く感じられた。そして、その静寂は華凛の声によって破られた。


華凛「穂奈未...。そ、そういえばさっき優雅とはぐれちゃって。探してくるわ!」


あからさまに動揺した様子で、華凛はその場を立ち去ろうとする。


穂奈未「待って!!」


そして、立ち去ろうとする華凛を、穂奈未は腕を掴んで引き止めた。結構強い力で掴んでいるように見える。


華凛「はっ、離してよ...。」

穂奈未「イヤ、イヤだよ...。このままなんて...、イヤだよ。」


目を潤ませて俯きながらも、必死に次の言葉を探す穂奈未。そして、悲しそうに穂奈未を見つめる華凛。


華凛「アタシは...、アタシはあなたを捨てたのよ!あなたの気持ちを知っていながら、アタシは自分のワガママを通したの!もう、あの頃には戻れないの戻るわけにはいかないの!それが、アタシの決めた道だから!・・・。それがアタシの...、選んでしまった未来なんだから...。」


選んでしまった、か。そういえば前に華凛は言っていたっけな。


華凛『アタシは知ってた...。穂奈未が優雅のことを好きだってことは。前に話してくれたのよ。』


あいつは穂奈未の気持ちを知っていた。そしてこうも言っていたな。


華凛『こんな言い方をするのは良くないかもしれないけど、アタシは恋という勝負で勝って、穂奈未は負けた。これで納得してもらえないかしら...。』


それに、さっきだって...、


華凛『まさか、はぐれたわけじゃないわよね?あの子に何かあったらと思うとアタシは...。』


正直なところ、穂奈未と華凛の以前の関係については俺はよく知らない。けれども、華凛が今でも穂奈未のことを大切に思っていることだけは...、それだけは自信を持って断言できる。


穂奈未「なら、なんで震えているの?なんで、私の手を振りほどかないの?」


穂奈未の手には、もう大して力は入っていない。華凛が振りほどこうと思えば、間違いなく簡単に振りほどくことができるだろう。


華凛「ふ、震えてなんか、ない...。アタシは強いの...。アタシは...、幸せを勝ち取ったのよ...。」


穂奈未「華凛ちゃんが今本当に幸せなら...、私はここで引き下がるよ...。」


穂奈未は掴んでいた腕を離す。声の調子の弱さから、穂奈未の本心が痛い程に伝わってくる。本当はこんなこと、穂奈未は言いたくないんだろうな...。


華凛「アタシは、・・・。今とっても幸せよ...。」

穂奈未「幸せな人はそんな顔しないよ。喜怒哀楽は万国共通だから…。きっとどの国の人が見ても、今の華凛ちゃんは幸せには見えないよ!」

華凛「そんなの関係ない!アタシが幸せと言ったら幸せなのよ!・・・。今のアタシは幸せでなくちゃ、いけないのよ...。」

穂奈未「華凛ちゃん...。」


確かに華凛は強い。きっと目的のためならどんな努力も惜しまないヤツだ。この件で言えば、華凛は「優雅への恋を叶えるために、穂奈未と過ごす日常を捨てる努力をした」のだろう。そして、その恋が叶ったからには、もう自分は穂奈未と一緒にいてはいけない。華凛自身がそれを許すことができないのだ。


凌雅「こんなのって、悲しすぎるだろ...。」

華凛「それでも、アタシは今の幸せを守るの!このままが、お互いのためなのよ...。」


お互いのため、だと?穂奈未があんなに悲しそうな顔をしているのに...、言いたくないことまで言ってしまっているというのに...、それがお互いのためになっているとでも言うつもりなのか?だったら...、だったら...、ふざけるな!


凌雅「ふざけるな...、本当にこのままがお互いのためになっていると...、本気で思っているのかよ。」


華凛「ええ...、そうよ。」


凌雅「そんなわけ...、そんなわけあるもんかぁ!!」


穂奈未「!!凌雅君やめて!!」


穂奈未が俺を抑えに入る。しかし、ここで止まるわけにはいかない!俺の大好きな...、俺の愛する幼馴染のためなら...、俺はっ!


凌雅「お前の中ではそれで完結してるのかもしんねぇけどな、穂奈未のためだって言うのなら当然、穂奈未の立場になって考えたんだよな!」


華凛「そ、そりゃ考えたわよ。」

凌雅「いや、考えてないね!考えたとしてもそれは穂奈未の意思とは違う!絶対に!」


自分の感情がめちゃくちゃ熱くなってしまっているのが分かる。しかし、それでいて頭の中は不思議なくらいにクールな感じだ。これから華凛がどんなことを言うのだとしても、絶対に言い返してやることができるという自信が今の俺にはあった。


華凛「ど、どうしてアンタにそんなことが言えるのよ!?男のアンタには分からないでしょうけど、恋愛がらみで友達関係が崩れることなんて、女の子の間では別に珍しいことではないのよ!」


凌雅「なら、なんで穂奈未は泣いてんだよ...。なんでお前は泣いてんだよ!」

華凛「な、泣いてなんかないわよ!」

凌雅「いーや、誰がどう見ても泣いてるね!...穂奈未はな、あれからずっと苦しんでいたんだ。辛かったんだ。でもそれは単に失恋したからだけじゃない...。大切な友達が、お前が離れていってしまうことが辛かったんだよ!」


穂奈未「凌雅君...。」

凌雅「華凛!お前はな、穂奈未から好きな人を奪い、そして今度は一番大切な友達まで奪おうとしてんだよ!」


華凛「!!アタシは...。」


凌雅「恋に関してはお前の勝ちだ。正直言ってスッゴイ悔しいけど、お前の勝ちだ!もう文句は言わない。でも...、でもさ...、穂奈未の友達だけは、返してくれよ...。」


さすがに、言い過ぎてしまっただろうか。でも、俺には黙って見ていることなんてできなかった。だって、2人の、本当の「お互いのため」は...。きっとこんな結末なんかじゃないはずだから...。


穂奈未「華凛ちゃん...、もういいの。もう自分を責めないで。そして華凛ちゃんの本当の気持ちを聞かせて?」


そう言うと、穂奈未は握りしめていたハンカチを、華凛の目の前に差し出した。


華凛「あ、これって...。」


穂奈未「そうだよ。あの時にお揃いで買ったハンカチ。...今でも私の大切な宝物なんだ。」


華凛「穂奈未、ごめんなさい...。アタシは、アタシは穂奈未と一緒にいたいよ...。友達でいたいよぉ...。」

穂奈未「うん...、うん!」


年甲斐も無く、抱き合って泣き崩れる2人。しかしそれも当然だよな。お互いを想うあまりに離れてしまっていた心が、今再び繋がったんだ...。


凌雅「・・・・・・。」


ここで俺が何か言うのは、きっと野暮ってモンだろうよ...。まあ、あえて一言添えるなら、きっとこれで良かったんだ。うん。


それにしても、何か忘れているような...。



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