優雅のとばっちり
華凛「穂奈未とデートの約束を取り付けるまで帰って来ないこと。いいわね。」
凌雅・優雅「ハイ...。」
なんでこうなったし。
凌雅「っていうか、なんでお前まで?」
優雅「知らないよ!でも一度華凛がああなっちまうと、テコでも動かないからな...。」
何だか、先が思いやられるな...。
凌雅「なんか、すまん。」
優雅「気にすんなよ。」
まあ考えようによっちゃこれで良かったのかもしれない。こうでもならなきゃ、きっと俺は考えまくるだけで行動には移せなかっただろうしな。
穂奈未の家の前まで来て、俺はふと思った。
凌雅「あ。」
優雅「どうした?」
凌雅「今思ったんだが、ここまで来なくても電話して誘えば良かったんじゃ...。」
優雅「あ。」
しかし、ここまで来ておいてわざわざ家に帰ってから電話をするのも変な話だ。それに、華凛も入れてくれないだろうしな。よ、よし押すぞぉ...。いち、にの、
ピンポーン...。
凌雅「ってななな何勝手に押してんだよ。まだ心の準備が...。」
優雅「え、あ。悪りぃ。」
なんでそんな躊躇なくピンポンが押せるんだよ。これがコミュ力の差というヤツなのか。
穂奈未「あっ優雅君、凌雅君。」
後ろを振り返ると、そこには買い物袋を肩にかけた穂奈未が立っていた。
優雅「おはよう穂奈未。」
見た感じでは違和感の無い会話だったかもしれない。だが、俺には2人が「前と同じ」様に振る舞おうと努力しているように思えてならなかった。なんというか、会話が不自然に自然過ぎるというか、そんな感じだ。
穂奈未「あっ、凌雅君それって...。」
穂奈未は俺の手元を見て言う。
凌雅「あ、えっとこれは...。」
穂奈未「私もさっき同じのをもらったんだ。凌雅君も2枚持ってるんだ...。」
凌雅「う、うん。」
よく考えてみれば、俺達は同じ街に住んでいるんだ。だから買い物する場所も大体同じだし、こうなることも別に不思議ではないよな。それよりも、穂奈未はどうやら、何か言いたいけれど言えないというような感じだ。ま、まさか穂奈未は俺を...。いやそれは無いな、うん。
しばらくの沈黙の後、穂奈未は意を決したように深呼吸をして、口火を切った。
穂奈未「あ、あのさ。良ければ今度4人で遊びに行かない?優雅君と凌雅君と華凛ちゃんと私でさ...。」
優雅「えっ?」
穂奈未「あっ、嫌ならいいんだ...。」
俺にはすぐに分かった、穂奈未のやりたいことが。何故この4人なのかを考えれば、答えは一つだ。今度こそ穂奈未の役に立ってみせる。迷うな俺!
凌雅「いや、行こう。俺達4人で!」
優雅「はっ?何で僕や華凛まで?」
凌雅「いいから来い!予定が空いているのは知っているからな。」
何故俺が優雅の予定を知っているのかというと、優雅は逐一必ずカレンダーに予定を記入していて、そのカレンダーを俺は今朝見たからである。かわいそうだが、これが「正直者はバカを見る」ということだ、我が弟よ。
優雅「お前、本当にそれでいいのかよ...。」
穂奈未には聞こえないように、優雅は俺の耳元で言う。
凌雅「いいんだよ。」
対して俺はあえて穂奈未にも聞こえるくらいの声で答える。
優雅「でも、これで華凛は納得するのかよ?」
凌雅「するさ。それはお前が一番分かってんじゃないのか。」
正直なところ、華凛がどんなヤツなのか俺はまだ語れる程よく知っているわけではない。だが、「デートの約束」は取り付けたというのはマジなんだ。文句は言わせないぜ。穂奈未の勇気を無駄にしないためにもな。
穂奈未「え、えっと。」
凌雅「あ、もしもし華凛。次の日曜日、穂奈未と俺と優雅とお前で遊びに行くことになったから。うん。じゃあよろしく。」
優雅「えっお前今、」
凌雅「華凛も楽しみにしてるってさ。待ち合わせは駅前でいいよな、穂奈未。」
穂奈未「う、うん。華凛ちゃんにもよろしくね...。」
優雅は気づいたらしいが、今の電話は嘘だ。ラ・ヨダソウ・スティアーナ。
凌雅「おう、じゃあまたな。」
俺は半ば強引に優雅の手を引いてその場を後にした。
優雅「なぁ、本当にあれでいいのかよ。」
家の近くまで来たというのに、まだ言うかコイツは。
凌雅「何度も言わせんな。あれでいいんだ。」
優雅「何でだよ。」
まだ気が付かないのか。本当に鈍感なヤツだ。
凌雅「穂奈未はな、お前や華凛と仲直りしてまた一緒に遊びたいんだよ。」
優雅「あっ。」
あの時、穂奈未は確かにこう言った。
穂奈未『優雅君もみんなもすごく楽しそうに過ごしてた。あの頃は本当に楽しかったな...。』
穂奈未はずっと前から悩んでいたんだ、「優雅と付き合いたい」という気持ちと「みんなで楽しく過ごす毎日を守りたい」という気持ちの狭間で。
そして、結果的に「優雅と付き合いたい」という気持ちの方は未来永劫叶わないことになってしまった。だからおそらくは、穂奈未は悩み抜いた末に「みんなで楽しく過ごす毎日」を取り戻すことに決めたんだろう。だったら、俺はそれを全力で応援したい。
凌雅「やっと分かったか。」
優雅「あっ、おーい華凛。荷物半分僕が持つよ。」
いつのまにか、道の向こうにいた華凛に優雅は声をかけている。なんだかはぐらかされたような気もするけれど、分かったんだよな...?
華凛「ありがと。アンタ、穂奈未はちゃんと誘えたんでしょうね?」
凌雅「もちろんだとも。」
優雅「4人でだけどね。僕達も一緒にだとさ。」
華凛「ふーん...。」
凌雅「・・・。」
華凛「まぁ、いいわ。」
俺は、一瞬華凛が言葉に詰まったのを見逃さなかった。おそらくはコイツも...。俺が絶対になんとかしてみせる。そして、穂奈未の笑顔を取り戻すんだ。




