春休みのある1日
華凛「優雅、ここ間違えてるわよ。」
優雅「えっ、どこだ?」
華凛「この場合、トムは行ったきりで帰ってきてないから『went』じゃなくて『gone』になるでしょ。」
優雅「うわっ、やらかしたなぁ。」
今日も朝から優雅達は勉強している。彼ら曰く、「慣れないことをするよりもこっちの方がいい」とのこと。どうやら在学中もこうしてよく2人で勉強していたらしい。
その一方で俺はというと、小腹を菓子パンで満たし終えて今から二度寝をするところだ。昨晩は3時過ぎまで徹夜でゲームをやっていたこともあり、俺は只今絶賛睡眠不足状態なのである。
自室に戻り、直ちに睡眠態勢に入る。春の暖かい日差しを窓越しに浴びながら寝る。太陽が高い時間だからこそできる最高の睡眠方法だ。
「昼は起き、夜は寝るものだ」という固定観念に囚われている人間はきっとこんな贅沢な睡眠は一生味わうこと無く死んでいくのだろう。ああ、なんともったいないことか。
数時間後、俺は目を覚ました。時計を見ると17:00と表示されている。すっかり夕方という感じだ。少し頭が痛い。どうやら寝過ぎてしまったらしい。さすがにこんな時間では外で遊ぶのは難しいだろう。
しかし、だからと言ってどこにも出掛けずに1日を終えてしまうのも何だかもったいない気がしたので、自販機で飲み物でも買ってこようかと俺は外へ出ることにしたのである。
それにしても今日は1日良い天気だった。今、俺の頭上には黄昏時の綺麗な空が広がっている。鮮やかなオレンジと暗い青のコントラストがとても綺麗で、俺はついつい見入ってしまった。この光景が見られただけでも、外出したかいはあったのかもしれないな。
華凛「あっ、やっと起きたみたいね。」
いつの間にか俺の目の前にはビニール袋を片手に持った華凛と優雅が立っていた。惑星探しにすっかり夢中になっていたからか全く気が付かなかった。
優雅「凌駕は本当に星が好きだからな。」
凌駕「星座はあんまり詳しくないけどな。」
星が好きと言っても星座にまつわる星占いや神話については俺は正直よく分からない。俺の場合は宇宙という未知の世界に思いを馳せるのが好きというか、宇宙人は本当にいるのかなとか、そういうことを考えるのが好きな感じだ。SFが好きだと言えば少しはこの感じが伝わるだろうか。そういえば小学生くらいの頃に、星が好きだという女の子と話したら全く話が噛み合わなくって気まずい思いをしたことがあったな。
華凛「アンタって意外とロマンチックな趣味してるのね。」
凌駕「意外とは失礼な。」
華凛「あらゴメンなさい、つい本音が出てしまいましたわ!」
優雅「お〜い、語尾変わってるぞ。」
なんだろう。このくだらないやりとりがとても楽しい。もし穂奈未がいたら、どんなことを言うんだろうか。
華凛「あっ、そうだ!」
華凛は突然声を上げる。
優雅「ん。何か買い忘れたか?」
優雅はビニール袋の中を掻き回しながら答える。
華凛「そうじゃなくて。あんた!」
と言うと華凛は俺の方を見て何かを取り出し、そしてそれを2つ俺の手元に力強く差し出す。
凌駕「お好きなクレープ50円引き...、割引券?」
華凛「そうよ!駅前にあるクレープ屋の割引券。」
何かと思えば割引券か、まあくれるというのなら受け取っておくか。
でも、クレープ屋って男1人ではなんだか入りづらい雰囲気を感じるからあまり行かないんだよな。クレープ自体は大好物なんだが。
凌駕「くれんのか?あんがと。」
と言い俺はその内の1つを取る。すると、
華凛「こっちも受け取りなさい。」
凌駕「いや、2つも要らないって。」
大体こういう割引券は1会計につき1枚というのが鉄則だ。繰り返し並んで使いまくるという猛者もたまにいたりはするが、少なくとも俺にそこまでのメンタルの強さは無い。
華凛「もぉ、本当に兄弟揃って鈍いわね!」
凌駕・優雅「ふぇ?」
まるでフュージョンでもしたかの如く、俺達はぴったりとセリフが合ってしまった。
華凛「デートに誘うのよ、穂奈未を!」
優雅「えっ、あ、そそそうだった!いいか、凌駕。これを使って穂奈未をデートに誘うんだ!」
凌駕「・・・。」
そうか、だから2つだった訳か。
ならばまずはあいつに電話して電話番号を教えてもらわなければ。
って穂奈未の電話番号はもう知っているから、あとは電話をかけて来週の日曜日にデートを取りつけるか。
場所は無難に中央公園あたりだな。
服装は、スーツ一択だな。これを着ていけば夏だろうが冬だろうが間違いないだろうな。
って、俺は何を言っているんだ?
あいつって誰だ?
中央公園ってどこだ?
そもそもスーツなんて持ってねーし。
ってかデートにスーツ...だと?
凌雅「ハハハ...ハハハ...ハハ。」
華凛「ちょっ、ちょっと!しっかりしなさいよ!」
優雅「あ、もうキャパシティオーバーだな。」




