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俺の愛する幼馴染(負けヒロイン)  作者: 炎右ロイ
第3章
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水希さんの苦悩

華凛「ここまで来れば、大丈夫かしら?」


どれくらい走ってきたのかは定かではないが、見たところ背後から誰かがつけている気配は無い。どうやら、上手く撒くことができたらしい。


凌雅「2人とも、強く握っちゃってごめん。痛くなかったか?」

穂奈未「ううん、気にしないで。」

水希「これくらい平気です。」


さっきは必死だったけど、よくよく考えたら俺、女の子の手を握ってしまっていたんだよな。手には微かに穂奈未と水希さんの体温が感じられる。今更ながら、少しドキドキしてしまう。


優雅「でも、どうして僕の居場所が分かったんだ?」

華凛「これよ、これ。」


そう言って、華凛は優雅に携帯の画面を見せた。


優雅「あー、そっか。」

華凛「そういうこと。」

凌雅「つまり、お前はその携帯を持っている限り、華凛に居場所は筒抜けという訳だな。」

優雅「別に僕は居場所がバレて困るようなことはしてないぞ。」

凌雅「ん?まだ俺、そこまでは言ってないはずだが。」

優雅「えっ...、あ。」

華凛「優雅。一体どういうことなのか説明してもらえるかしら?」

優雅「ほ、本当に何も無いぞ!」


何となくそういう気分だったので、俺は優雅を軽くからかってやる。華凛も分かっているからか、まるで「女好きな男主人公が他の女の子に色目を使ったことを問い詰めるヒロイン」のような感じで優雅を壁際に追い込んでいる。うん、どうやら2人とも大丈夫そうだな。


華凛「それで、何で捕まっちゃってた訳?」

優雅「それが、最初はただ道を聞かれただけだったんだ。で、僕がそれに答えたらあっちが「どうしてもお礼がしたい」って言ってさ。僕は何度か断ったんだけど、半ば強引に押し切られちゃって...。」


なるほどな。冷静になって考えたら分かると思うが、道を聞かれるということは、当然相手には「目的地」がある訳だ。


敢えて面倒くさく言うのであれば、

相手は「目的地に行く」という目的を持っているが、「目的地への行き方」という手段が分からないから道を聞いているはずなのだ。そしてもっと言えば、「できる限り早く目的地に着きたい」はずだ。つまり「目的地への行き方」さえ分かれば、真っ先に「目的地に行く」という目的を達成するために、「目的地への行き方」という手段を用いて行動を開始する、つまり「目的地へ向かう」のが当然の流れになるはずだ。

もちろん、「行き方」を教えてもらったことに対するお礼の言葉を言うくらいはあり得る流れだとは思う。中には「ほんの気持ちだから」と称してアメ玉をくれる人もいるだろう。まあ、もらったとしても俺は食べないけど。しかし、だからといって喫茶店に連れ込むのは明らかに不自然だ。


その時点で、

喫茶店内で時間を使う=その分だけ「目的地」に着く時間が遅くなる


という式が成り立つ。しかし、これでは先程言っていたこと、少なくとも「できる限り早く目的地に着きたい」という部分と矛盾が生じてしまう。

では、どう考えるのが暫定的に正解に近くなるか、それは相手がそもそも「目的地に行く」ことを目的としていなかったという考え方だ。要するに、連中は「最初から優雅を捕まえるつもりだった」と考えるのが妥当なところだろう。

と、ここまでダラダラと考えをまとめてみたものの、俺も優雅と同じ状況に置かれたら、間違いなく捕まっていただろうなと思う。あー、なんか思い出したらまた腹が立ってきてしまった。


穂奈未「凌雅君?」

凌雅「うわっ!」


俺は反射的に声がする方へ振り向き、驚いて声を上げてしまう。なぜなら、俺の想像していた位置よりもずっと近い位置に穂奈未がいたからだ。それこそ俺が手を伸ばせば抱き寄せることすらできてしまうくらいの近距離だ。


穂奈未「あっ、戻ったね。さっきまで怖い顔してたよ。」

凌雅「ご、ごめん。思い出すとつい、な。」

穂奈未「いいよ。私も多分凌雅君と同じ気持ちだから。」

凌雅「えっ。あっ、ああ。」


穂奈未の「同じ気持ちだから」という言葉が妙に耳に残り、一瞬ドキッとしてしまう。が、後から文脈的な理解が追いつき、俺の頭の中での解釈が修正される。そうだ、今はさっきの出来事について話しているんだった。


華凛「いい、優雅。ああいう連中は何言っても無駄なの。だから会話の途中だったとしても逃げなさい。」

優雅「で、でも」

華凛「でも?」

優雅「ハイ、分かりました。」

華凛「よろしい。」


反論の余地を与えないこの話しっぷりは、流石華凛といったところか。

ふと目線をずらすと、なんだか居心地が悪そうに縮こまっている水希さんの姿が目に入った。あー、何だか悪いことしちゃったな。とりあえず声をかけてみようかな。


凌雅「水希さん、今日は助かったよ。」

水希「いえ、礼には及びませんわ。」

凌雅「・・・。」

水希「・・・。」


やべーどうしよう。会話終わっちゃったよ。そうだよな。いきなり話を振られても、それはそれで困るよな。あーごめんよ水希さん。


穂奈未「ねぇ、水希ちゃん。もしかしてだけど、私達に何か言いたいことがあったりしない?」


会話が途切れて微妙な空気が流れる俺達に対して、穂奈未は切り込むように質問を投げかける。そうか、やっぱり穂奈未も気がついていたんだな。そういえば俺もこの前からずっと気になっていたんだった。でもいざ面と向かってしまうと言葉が出てこないんだよな、俺って。ああ、ゲームみたいに選択肢でも出てくればいいのに。


水希「一応あるにはあるのですが...。」


そう言って水希さんは目を逸らした。何か「言えない」理由でもあるのだろうか?「あるにはある」でも「言えない」。なら、いつ言えるんだ?少なくとも今は言えないんだよな。それは何故だ、って...あ、そうか。そういうことだな。


凌雅「おい華凛、この後の予定は?」

華凛「特に無いけど、何よ。」

凌雅「じゃあ先に帰ってくれないか。」

華凛「は?」

凌雅「悪いけど、ここにいられると邪魔なんだ。」

華凛「何よそれ、ひっどい!」

優雅「おい凌雅、いくらなんでもその言い方は無いだろう。」

凌雅「優雅、お前も邪魔だ。彼女いない歴=年齢の俺から言わせれば、リア充はぶっちゃけ目の毒だ!頼むから今すぐ俺の視界から出ていってくれ!」

優雅「何よそれ、ひっどい!」

華凛「あっ、ふーん...そういうことか。」

優雅「えっ、そういうことって?」

凌雅「そういうことだよ。」

優雅「だからそういうことって何さ。」

華凛「まったくアンタはホントに鈍感なんだから。ほら、さっさと行くわよ。」

優雅「痛っ。引っ張らないで。」


ホントはまったくもって「そういうこと」が理由では無いのだが、「そういうこと」にしておいた方が後々都合が良さそうなので、「そういうこと」にしておくとしよう。


凌雅「よし、もう見えなくなったな。」

穂奈未「ねぇ、凌雅君。別にあんな言い方しなくても良かったんじゃないかな?」

凌雅「でも、あいつら俺より頭良いからな。下手に気を回すとなんか勘ぐられそうだし。こういう場合は雑なくらいがむしろ丁度良いだろうさ。」


と、口ではこう言ってみたものの、別に深い意味は無い。要するに、さっきの時点じゃあの言い方しか思いつかなかっただけだ。


水希「なんだか気を遣わせてしまったみたいで、ごめんなさい。」

凌雅「いいよ別に。それで、水希さんが言いたいことって?」


まあ大体の察しは付いているから、優雅達をここから追い払った訳であるが。


水希「えっと、その、さっきの出来事なんですけど...。最近似たようなことがあちこちで起きているようなんです。」

凌雅「うん。」


それは知っている。華凛や園城先輩も言っていたな。


水希「知り合いから初めて聞いたときには、少々いき過ぎたナンパのようなものだと思っていたのですが、同じような話を何度も耳にする内にワタクシは思ったんです。これらの事件には何らかの関連性があるのではないか、と。そこでワタクシはお母様にこのことについて相談してみたのですが、今のところなにも分かっていないようで...。お母様程の人脈があれば、何か分かると思ったのですけど...。」

凌雅「ん、水希さんのお母さんってそんなに凄い人なの?」

穂奈未「あれっ、凌雅君知らなかったの?水希ちゃんのお家はこの辺りでは有名なお金持ちなんだよ。本長財閥って聞いたことない?その代表は確か...、水希ちゃんのお父さんだったかな?」

水希「はい、その通りです。」

凌雅「・・・。マジ?」

水希「マジですわ。」

凌雅「マジか...。」


そう言えば、いつだか水希さんが自身のことを「お嬢様」とか言っていたっけ。


穂奈未「それで、水希ちゃんのお母さんが、児童養護施設を経営しているんだよね。」

水希「はい、その通りです。」

凌雅「そうなんだ...。なんだかご両親とも忙しそうだね。」

水希「ええ。お父様にはもう長いこと会っていない気がしますわ...。お母様もいつも寂しそうにしていて...。施設の子ども達の前では笑顔を絶やさずにいますが、ワタクシには何だかお母様が無理をしているような、そんな気がしてならないのですわ...。」

凌雅「そっか。」


正直言って、家族とは上手くいっているわけじゃない。たまに口を開いたと思えば、テストの結果とか将来の進路とかそういう話ばかりだ。そして大抵は優雅のことを引き合いに出した上でのダメ出しだ。小さい頃は俺も両親に構ってもらおうといろいろなことを試行錯誤した時期もあったような気がするが、今じゃ正直言って顔も見たくない。実際、華凛が家に居座るようになってからは、わざわざ両親に会わずとも生活には困らなくなったしな。というのも、ヤツらはもう家事全般は華凛や優雅に任せてしまっているようで、ほとんど家には帰っていない様子だ。

って、また俺は心の中で一人語りをしてしまった。いけないいけない、今すべきは俺の家族との関係性についての話では無く、水希さんの話だ。えっと、要するに水希さんは「お母様が無理をしてないか心配」ということだよな。


穂奈未「凌雅君、聞いてる?」

凌雅「うわっ!」


だから近い、近いって!人と話す時は目を見て話をしなさいとか俺も小さい頃から習ってきたけど、さすがにこの距離マズいって!あードキがムネムネしてきた!愛しさと切なさと何かが頭の中を駆け巡っていくのを感じる...。トゥンク...。



水希「あ、あの、続き...、話しても良いでしょうか?」

凌雅「あっ、なんかごめん...。話を続けてくれるかな。」


俺は背中を反らし、鼻から大きく息を吸い込む。そして自分の頬をパチンと叩き、水希さんの方へ向き直って次の言葉を待った。


穂奈未「それで、お母さんは何て言ってたの?」

水希「「仕事のし過ぎかしらね?」とは言っていましたが、あまり詳しいことは話してくれませんでした...。確かにお母様は仕事熱心なところはありますが、最近のお母様はどこか今までとは違うような...、そんな感じがするんです。」

凌雅「「今までとは違う」か...。」

穂奈未「うーん...。」


そもそも俺は水希さんのお母さんがどんな人なのかを知らないので、ここでとやかく色々言っても、水希さんの役に立つようなアドバイスはできそうも無いのだが...。俺から言えることがあるとするなら...。


凌雅「今までとは違うことをしている、もしくは誰かに今までとは違うことをされている、と考えるのが妥当か...。」


うーん、やはり曖昧なことしか言えないよな...。何とかして力になってあげたいんだけどな...。


穂奈未「凌雅君。」

凌雅「は、はい?」


えっ?あ、もしかして何か変なこと言っちゃったかな...。そう言えばどこかで聞いたことがあるが、悩み相談をする場合、男の方は解決策を求めようとして話をするが、女の方はただ共感して欲しくて話をするので、会話が噛み合わなくなるということがよくあるらしい。ってことは、今の会話は「バッドコミュニケーション」だったってことなのか?


穂奈未「あっ、そんなに考え込まなくていいよ。何か今の感じって、凌雅君らしいなって思っただけだから。」

凌雅「俺らしい?」

水希「何かちょっと分かる気がします。なんて言うんですかね、凌雅さんって口数はあまり多くないですけど、顔や身体の動きを見ていると、今なにを考えているのかがなんとなく分かるような気がするというか...。」

凌雅「えっ、そこまで分かりやすいかな?」

穂奈未「うん、とっても分かりやすいよ。」

水希「ですよねー。」

凌雅「・・・。」


あれっ、なんだろうこの気持ち。この気持ちはなんだろう。悔しいような、でもどこか嬉しいような...。





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