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俺の愛する幼馴染(負けヒロイン)  作者: 炎右ロイ
第3章
16/17

不気味な喫茶店

水希「ここです。」

凌雅「喫茶店、なのか?」

華凛「一応、営業しているみたいね。」


案内されたのは繁華街を少し外れた通りの先。人通りこそ多いものの、誰もが素通りしてしまう人気のないお店が立ち並ぶ中、ドアにかすれた文字で「OPEN」と書かれた札がぶら下がった木造の建物があった。店の外観も、あまり掃除されていないのか、どことなく不気味な感じで、俺は思わず立ちすくんでしまう。


穂奈未「凌雅君、大丈夫?」

凌雅「う、うん...。」

華凛「びびってる場合じゃないでしょ、アタシが先に行くわ。」


そうだ、華凛の言う通りだ。こんな時にびびってる場合じゃない。今は一刻も早く、優雅を探し出さなきゃいけないんだ。


華凛を先頭にして、俺達は周りを警戒しながらゆっくりと入店する。見たところ店内はそれほど広くはなく、入口からでも充分に客席を見渡すことができた。


華凛「いた、優雅!」

優雅「華凛!?」


ほんの数秒で、華凛は優雅を見つけ出した。優雅はこちら側から見て1番奥のテーブルの壁側の席に座っている。そして、廊下側の席に女が1人、テーブル挟んで対面側の席に男が1人、それぞれ座っていた。この配置は、よく宗教勧誘を行う連中が使う手口の座り方だ。大方対面側の席の男が話をして、廊下側の席の女がターゲットの退路を塞いで逃げにくくするといったところだろう。実に計算された手口だ。おそらく、2人ともこの手のやり方をするのは初めてでは無いのだろう。


凌雅「優雅、帰るぞ。」

優雅「あ、ああ。」


とりあえず、俺はその場から逃げるよう優雅に促す。


「まだ話は終わっていませんよ!」


そう言って廊下側の女が優雅の退路を塞いだ。何て強引な手段なんだ。俺は自分の中に湧き上がる強烈な怒りを感じたが、優雅の身を案じてグッと堪える。相手の出方が分からない以上、下手に手を出すのは危険だ。


優雅「先程も申し上げましたが、僕は今の彼女と別れるつもりはありません!」

「何故そこまでその子にこだわるのかね?そのような一般庶民の娘よりも...。」

華凛「一般庶民で悪かったわね。」

「ひっ!」

ガタッ!


声量こそやや抑えめではあるものの、華凛の放つ迫力に対面側の男は完全にびびっている。そして廊下側の女は驚いて体勢を崩し倒れ込んだ。別に計算して動いた訳ではないのだろうが、今がチャンスだ。その隙を突いて優雅はテーブルから離れる。そして、念の為俺は優雅の前、つまり優雅よりもテーブルに近い位置に立った。


穂奈未「優雅君、大丈夫!?」

優雅「うん、心配かけてごめん。」

凌雅「よし、今すぐここから離れるぞ。」

優雅「あ、お代出さなきゃ!」

凌雅「くっ、いくらだ?」


俺はすかさず隣の空きテーブルからメニューを取り、財布を出すのに手間取っている優雅にも見えるように、両手を使って目の前に広げた。

実はこれも罠の1つだ。喫茶店では形式上、会計を個別にしづらいところがある。しかし、そんなことをいちいち気にしていたら、いつまで経っても逃れることができないのだ。


優雅「えっと480円、でも税抜だから...。」

穂奈未「税込だと、こうかな?」


そう言って、穂奈未が計算機アプリで税込価格を出し、俺達にも見やすいように携帯の画面を見せた。


凌雅「ナイスだ穂奈未!」

優雅「うわっ、細かいの多くてぴったり払えない...。」

凌雅「くそっ、いくら足りないんだ!」


消費税が変わってもメニューを使い回せるようにするためか、価格を税抜で表記している店は正直結構多い。まあそれは分かる、分かるけども。だったら頼むから中途半端な値段にしないでくれ!中途半端な480円にするくらいなら、いっそのこと切り上げて500円にしてくれー!


優雅「あっ1円玉がもう無い!」

穂奈未「なら、私のも使って!」

優雅「でも」

凌雅「いいから!今は借りとけ。穂奈未には後で返せばいい!」


ぴったりの小銭が揃ったのを見計らい、俺は近くの店員を捕まえて、事情を話して代金を手渡す。この手の輩はよくいるのか、店員は二つ返事でお金を受け取って、「STAFF ONLY」の向こう側へと消えていった。


華凛「アンタ達、一体どこの誰よ!アタシのダーリンにこんなことしておいて、覚悟はできてるんでしょうね?」

「ひいぃ!」


華凛の怒りのボルテージはかなり高まってきている。しかし、相手はどこの連中か全く分からない。華凛の気持ちは正直痛いほどよく分かるが、今は1秒でも早くここから離れるべきだろう。


凌雅「華凛!もう目的は果たしたんだ。ずらかるぞ!」

華凛「くっ...。」


今にも手が出てしまいそうなくらいに怒りの表情を見せていた華凛だったが、すぐに振り返って優雅の手を引き、店外へと走っていった。俺も何となく予想はしていたが、やはり華凛はここで怒りに任せて行動するほど衝動的な人間では無いようだ。ホント、お前は強いよな...。なんて感傷に浸っている場合じゃないか。


凌雅「穂奈未!水希さん!行こう。」

穂奈未「う、うん...。」

水希「ええ。」


俺は2人の手首をしっかりと掴めたことを確認し、華凛達の後を追った。






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