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俺の愛する幼馴染(負けヒロイン)  作者: 炎右ロイ
第3章
15/17

不穏な予感

水希「あっ...。」

凌雅「あっ...。」


「あっ」って言うと、「あっ」って言う。こだまでしょうか、いいえ、これはあいさつです。


水希「ご、ごきげんよう?」

凌雅「お嬢様か!」

水希「一応、お嬢様ですけど。」

凌雅「えっ。」

水希「えっ。」


「えっ」って言うと、「えっ」って言う。こだまでしょうか、それともひかりでしょうか。いやいや、どっちでもないよ!というか、水希さんマジでお嬢様なのか。まあ、だから何という感じだが。

それにしても、あれ以来、水希さんとはよく話すようになった気がする。とはいっても、基本的に俺は聞いているだけな訳だが。しかし今のところ、水希さんの話は雑談の域を出ない中身の無い話ばかりで、優雅がらみの話は少しも出てくる気配が無かった。


穂奈未「あれっ、凌雅君?」

凌雅「穂奈未!」

水希「ひゃっ!」


俺はすぐさまその声の主の方へ振り返った。長い時間うなずくだけで、まともに声を出していなかったためか、予想以上に大きな声が出てしまった。


穂奈未「もー、ダメだよいきなり大きな声出しちゃ!」

凌雅「ご、ごめんなさい。」


わりと普段から怒られることが多いからか、つい条件反射で俺は謝ってしまった。我ながら悪い癖だなと思うが、長年染み付いた癖というものは、治らないんですな、これが。


穂奈未「謝るのは私じゃないでしょ。」

凌雅「ごめん、水希さん。」

水希「いえ、気にしないで下さいな。」

穂奈未「うん、よろしい。」

凌雅「・・・。」


改めて俺は、穂奈未の優しさを実感する。こうやって、穂奈未は必要とあらば俺を叱ってくれる。しかも、叱る時は必ず、「何がいけなかったのか」と「今から何をすべきか」を簡潔に説明してくれる。決して、怒鳴り声を上げたり、ネチネチと悪態をつくようなことはしない。だから、こちらも気分を害すること無く「反省」し、「改善」することができるのだ。


水希「お久しぶりです。」

穂奈未「お久しぶり、水希ちゃん。」

水希「そう言えば、昨日聞いた話なんですけど...。」


そう言うや否や、俺のことはそっちのけで2人は話を始めてしまった。しばらくは俺も話を聞いていたものの、やはり中身の無い話が続いたので、俺はいつものように話の内容を理解するのを諦め、聞き流すことにした。


話し始めてからまたまた2時間が経過した。しかし、今回においては俺は飽きることは無かった。決して話の内容が面白かった訳ではない。というか、話の内容は全くと言っていいくらいに覚えていない。では何故、俺は飽きなかったのだろうか?理由は至極簡単だ。大好きな女の子の、穂奈未の顔をずっと見ていても、誰にも文句を言われることは無いからだ。話し下手な俺にとっては重労働である「言葉を話す」という行為をせずとも、大好きな女の子の、穂奈未の声をずっと聞いていられるからだ。


穂奈未「そう言えば、凌雅君と水希ちゃんはさっきまで何の話をしてたの?」


そう言うや否や、穂奈未はこちらの方へ顔を向ける。ちょうど視線がぶつかり、目と目が合う形になり、俺はドキドキしてしまう。ドキドキとは言っても、緊張しているというよりは、何というか例えようのない幸福感があって、できることならこの瞬間のまま時間が止まってしまってくれないかなと思ってしまうような、そんな感じだ。


凌雅「えっと...。」


しかし、今の俺にはその質問に返事をすることができなかった。なぜなら、水希さんが何の話をしていたのかなんて、全くもって覚えていないからである。


華凛「あっ、凌雅!」


俺が振り向くと、息を切らした華凛が膝に手をついて立っていた。いつもとは違うその様子から、俺は何か嫌な予感がした。


凌雅「何かあったのか?」

華凛「優雅と連絡が付かないの!電話をかけた感じでは、着信はしているみたいなんだけど...。」

水希「!!!」

凌雅「!」


華凛の話を聞き、その場にいたみんなの表情が変わる。穂奈未の顔からは笑顔が無くなり、優雅の身を案じているのか胸に手を当て、力強い眼差しで華凛の次の言葉を待っている。一方で水希さんは何かを察したのか、あるいは何かを知っているのか、今まで見たことの無いような、でも喜怒哀楽で言うとすれば間違いなく「怒」の表情をしていた。


華凛「そう...。どうやらアンタ達は見てないみたいね。」

穂奈未「ごめんね、華凛ちゃん...。」

華凛「謝らないで、穂奈未は何も悪くないんだから。」

凌雅「華凛。」

華凛「何?もしかしてアンタ...。」

凌雅「残念だが、俺も優雅の場所は知らない。だけど、優雅の携帯の場所なら、お前なら分かるんじゃないのか?」

華凛「!!」


最近の携帯、つまりスマートフォンには基本的に位置情報を取得したり、発信したりする機能が付いている。いつだったのかはもう忘れてしまったが、前に優雅に、スマートフォンの位置情報を共有するアプリを勧められたことがある。優雅曰く、「失くした時に便利だから」とのことだったが、常に自分の現在地を知られてしまうのは俺的には何だか気持ち悪かったので丁重にお断りさせて頂いた訳だが、もしかしたら華凛は優雅の勧めを受け、そのアプリを使っているのではないかと思ったのだ。

自信満々っぽく言ってはみたものの、ほぼ当てずっぽうで確信は無かったのだが、どうやら当たりだったようだ。華凛は、すかさずポケットからスマートフォンを取り出して操作を始める。手が汗まみれで反応が悪いのか、やや手間取るようなそぶりを見せている。


凌雅「どうだ、見つかったか?」

華凛「ええ。でも、ここって...。」

水希「喫茶店...、ではありませんか?」

凌雅・穂奈未・華凛「えっ?」


予想外の一言に、俺達の視線は一斉に水希さんの方へ向く。すると、水希さんは静かにゆっくりと、それでいて俺達3人全員に聞こえるように力強く、言葉を続けた。


水希「ワタクシには心当たりがあります。」

華凛「...ここかしら?」


念のためと言わんばかりに、華凛はスマートフォンの画面を水希さんに見せた。


水希「はい、間違いありません。付いてきて下さい。」


そう言うと、水希さんは俺達の様子を確認しつつ歩き始める。


穂奈未「華凛ちゃん、大丈夫?」

華凛「そうね、正直に言うと少し目眩がするけど、まだ平気よ。」


華凛を気遣い、穂奈未は腰を下ろして肩を貸した。あんな風に振る舞ってはいるものの、華凛が今かなり疲れていることは俺でも分かった。ちょうど道の先に自動販売機が見えたので、ダッシュで駆け寄りスポーツドリンクを購入する。運良く交通系のICカードを使えるタイプのものだったため、素早く操作を終えることができた。


凌雅「ほらよ、お代はいらないからな。」

華凛「ありがと。」


念のため、「お代はいらない」という言葉を付けて俺は華凛にドリンクを渡す。華凛は責任感の強い女だ。たとえジュース1本であろうとも、自分で飲むからにはキッチリ自分で払おうとする。だからハッキリと「これは奢り」だと言っておかなければならないと俺は思った。熱中症間近の頭に、「お金を返さなければならない」という余計な考えを持たせたくはないからな。


凌雅「案内してくれ、水希さん。」

水希「ですが...。」

凌雅「いいんだ、頼むよ。」

水希「!分かりました...。」


今の華凛は、たとえ俺達が休憩を提案したとしても、休むつもりなど無いだろう。華凛の優雅に対する気持ちの強さは、俺も穂奈未もよく知っている。それに、俺にとっても優雅は大切な弟だからな。


華凛「急ぎましょう。1秒たりとも無駄にはしたくないの。」

凌雅「ああ、もちろんだ。」


こうして俺達は、優雅がいると思しき喫茶店へ文字通り最速で辿り着けるよう、長距離走ばりのペースで走っていった。


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