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俺の愛する幼馴染(負けヒロイン)  作者: 炎右ロイ
第3章
14/17

夏休み前の奇跡

凌雅「暑い...。」


梅雨も明けて、気づけば30℃を超える暑い日が連日続くようになった。大学ではそろそろ期末試験も近いということで、講義に来る人も目に見えて増えてきた。

というか、一体どのように上手く立ち回れば、あんな風に出席をごまかすことができるのだろうか?まあ、そんなハイリスクローリターンかつ卑怯なことをするよりは、大人しく正々堂々と出席する方が気は楽だと個人的には思うのだけれど。

俺は正直言って勉強は大嫌いだ。大学に来た理由も単純に大卒の肩書きが欲しかっただけ、そう言ってしまってもいい。だが、大学の講義は今までの学校の授業とは違い、その分野がホントのマジで好きな人が話をするためか、よく聞いていると意外と面白い講義も多いのだ。もちろん、取らないと卒業できない必修科目に関しては、今までの学校とほとんど同じノリといった感じではあるが。


今日受ける講義が全て終わり、家に帰る進路を取りつつボーッと歩いていると、後ろから小さな声で喋っている女子大生がいた。まあ、おそらく同じ大学の人だろう。


「あ、あの、尾崎凌雅さん。」

凌雅「えっ、俺?」


どうやら、俺に話しかけていたらしい。うーん、この人、どこかで見たことがあるような?もしかして、高校も同じだったとか?


「えっ、えっと、ワタクシはその、優雅君のと、友達で...。」

凌雅「え、えっと、とりあえず落ち着こうか。そ、そうだ、そこの椅子に座ろうか?」

「ひゃい!?」


まあ、人に話しかけるのに緊張して、つい言い方が変になってしまうのは俺もよく分かる。というか俺、今ベンチを椅子って言ったよな?いや、間違いではないけど、なんか変な言い方だったような気がする。


凌雅「ふーっ...。」

「すーっ、はぁーっ。すーっ、はぁーっ...。」


とりあえずベンチに座って息を整える。心臓がバクバク言っているのが分かる。いきなり話しかけられたというのもあるが、やはり俺もこの子と同じく、内心緊張していたらしい。


凌雅「・・・。」

「・・・。」


よし、息も整ったな。もし、この子も俺と同じく、人に話しかけるのが苦手な人間であるならば、よし、今度は俺から勇気を出すとしよう。


凌雅「とりあえず、名前を教えてもらえるかな?」

水希「本長水希(もとながみずき)です...。気軽に水希と呼んで下さい...。」


えっ、下の名前で呼ぶの?ハードル高っ。でもまあ、勇気を出して言ってくれたんだ。俺もそれに答えなければ。


凌雅「俺は尾崎凌雅。って、もう知ってるか...。凌雅って呼んでくれ。...気軽に。」

水希「・・・!」


しまった、もしかして下の名前で呼ばせるのはハードル高かったか?ついさっき自分で思ったことなのに...。で、でも、優雅と区別するなら、「尾崎君」じゃダメだし...。


凌雅「あっ、えっと、その...。」

水希「ふふふっ。気軽に...、話しましょうか。」

凌雅「あっ、そ、そうだね...。気軽に。」

水希「ぷくくくくくっ...。」


あれっ、これで良かったのか?パーフェクトコミュニケーション?あっ、そうだ確かこの子は...中学校の時に図書室にいた子...だったはず。


凌雅「もしかして水希さん、図書委員してなかった?」

水希「はい、中学生の時ですけど。凌雅さんとも何度か会ったことあります!」

凌雅「あれっ、あの時はメガネしてなかったっけ?」

水希「はい、メガネでした!でも、大学デビューしようと思って、思い切ってコンタクトに変えたんです!髪も思い切って、バッサリ切っちゃいました!」

凌雅「あ、ゴメン。そこまでは分かんないです。」


なんだァ?この子は。さっきとは打って変わってめちゃくちゃ喋ってる。でも分かる、分かるぜ。俺達って話しかけるのは苦手だけど、話したいことはめちゃくちゃたくさんあるんだもんな。



水希「すごくないですか?ワタクシ感動しちゃって...。」

凌雅「すごいな。」


水希さんが話し始めてから、約2時間が経過した。しかし、水希さんの話はどうやらまだまだ続くようだ。最初の内はしっかりと聞いていたものの、正直何だか飽きてしまったので、試しに「なるほど・すごいな・悪いのは君じゃない」だけで返事をしてみたところ、今のところ会話は成立しているようだ。なるほど、すごいな。


天能寺「あ、尾崎君じゃないか。」

凌雅「あ、天能寺さんでしたっけ。」

天能寺「そうそう、覚えていてくれて嬉しいよ。」

水希「・・・!」


思わぬゲストの登場に、さっきまで壊れたラジオの如く喋りまくっていた水希さんが、まるで石像のように固まってしまった。まあ、それも無理もない反応なのだろう。天能寺さんは、今回も缶がびっしり詰まったビニール袋を両手に持っており、その姿はまるで夕焼けをバックにそびえ立つトーテムポールのようで、それこそ神々しさすら感じられるほどであった。


天能寺「今回は、僕の好きなアニメとコラボしたデザインのジュースを買ったんだ。なかなかレア缶が当たらなくてね、ついつい8000円ほど使ってしまったよ。」

凌雅「8000円もですか!?やばいですね!」


また使ったのかよ!そして前回の流れから察すると、この後どうなるのか、俺には大体予測できてしまった。


天能寺「でも、ほら見てよ。全種類揃っちゃった。特にこの子がなかなか出てくれなくてねぇ...。でも、この子だけはどうしても欲しくてさ。」

凌雅「あっ、俺それ知ってますよ。特にあの回は涙無しには見られないですよね!」

天能寺「そうなんだよ!僕、涙が止まらなくてさ。見終わる頃には目の周りが真っ赤になっちゃって。何だ、尾崎君もこういうの話せるんだね。」

凌雅「ええ、こういうの大好きですから。実はこのアニメ、全話円盤に焼いてとってあるんですよ。」

天能寺「そっか、じゃあ今度一緒に1話から見ようよ!あ、この袋全部ダブりだからあげるね。」

凌雅「あっ、毎度毎度どうもありがとうございます。」

天能寺「ハッハッハ、毎度毎度ってまだ2回目じゃないか!」


予想以上だった。まさか天能寺さんとアニメの話で盛り上がることができるとは。あ、でも水希さんかなりびびってたけど、大丈夫かな?


水希「ワタクシも知ってます。特にこの子が好きで!」

天能寺「あっ、その子もいいよねぇ。第3話だっけ、あの強烈な登場シーンは忘れられないよね!」

水希「あっ、分かりますか!ワタクシこういうツンデレな感じのキャラ大好きなんですよ!」


どうやら水希さんも、「こういうの話せる」人だったらしい。


凌雅「俺はやっぱりこの子ですよ。健気なところが可愛くって可愛くって。」

天能寺「分かりまくるよー。まさに王道幼馴染って感じがたまらないよね!」

水希「ですねー!」



話が盛り上がることさらに2時間。日が長くなったとはいえ、もう午後7時。流石に暗くなってしまったようだ。


天能寺「今日は本当に楽しかったよ。そうだ、良ければ連絡先交換しようよ。」

凌雅「良いですね。水希さんはどうかな?嫌なら嫌って言っていいからね。」

水希「まさか!ワタクシもぜひぜひ混ぜて下さいな。」


こうして、俺は思わぬ形から友達が2人も増えてしまった。ふははははっ、まさかこんなに早く人と仲良くなることができるなんて、まさに奇跡だミラクルだ!

ん、奇跡だって?そうだ、よく考えたらこんなの絶対おかしいよな。もしかして俺、騙されてたりする?変な壺とか買わされたりしないよな?だだだ大丈夫さ、天能寺さんも水希さんもそんなことする人じゃないさ、俺は信じている信じる者は救われる!


凌雅「あれっ、何か忘れているような...。」


多分だけど水希さん、何か優雅絡みのことで俺に話があったんじゃないのか?じゃなきゃ、わざわざ優雅の友達だなんて言わないはずだ。

うーむ、まあ重要なことなら改めて水希さんの方から連絡があるだろうし、その件はまた次の機会でいいのだろう。

俺は天能寺さんにもらったジュースをがぶ飲みしながら、今日の出来事の余韻に浸りつつ、帰路に着くのであった。




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