メロンソーダを探しに
凌雅「くっ、ここもダメか...。」
この世の中には、需要は高いのにも関わらず、意外と売っていないものが結構存在する。
今俺が探しているメロンソーダもその一つだ。ファミレスのドリンクバーや映画館の売店ではよく見かけるものの、市販のものを探すとなると全然見つからないのである。
探すことついに5軒目、ようやく見つけた...と思い手に取ると、ラベルには「クリームソーダ」と記載されていた。違う、そっちじゃ無い!
またこの世の中には、類似物と一緒のカテゴリにされてしまったが故に、なかなかお目にかかることがなくなってしまったものが結構存在する。
例えば「オムライス」がそれである。え、ファミレスにはよくあるだろって?違う、違うのだよ!あれは「ふわとろオムライス」だ。もちろんそれはそれでおいしいのだが、そっちじゃ無い!俺が言っている「オムライス」とは、ケチャップライスの上に水気の少ない卵焼きが乗っていて、食べる前に上からケチャップをぶっかけるあの「オムライス」なのだ。
しかし、「オムライス」は「ふわとろオムライス」と一緒のカテゴリ扱いにされあ挙句、見栄えの良い「ふわとろオムライス」の方が普及してしまい、結果として俺の定義する真の「オムライス」の方が見かけなくなってしまったのである。
もしかしたら「オムライス」と同様に、「メロンソーダ」も「クリームソーダ」と一緒のカテゴリ扱いにされつつあるのかもしれない。見栄えの良いのはもちろんアイスクリームの乗っている「クリームソーダ」の方だ。つまり、「オムライス」と同様に真の「メロンソーダ」も絶滅の危機に瀕している可能性が高い。だからこそ、我々は真の「メロンソーダ」と「クリームソーダ」が別の飲み物であることを声高々に訴えなければならない!あの本物の「メロン」とはかけ離れた独自の味、自然界ではまずお目にかかることは無いであろうあの禍々しい緑色、それこそが「メロンソーダ」なのであると!!
そんなことを思いながら歩いていると、俺は道の外れに自動販売機の群れを発見する。もしかしたらメロンソーダがあるかもしれないと思い、俺は少し見ていくことにした。
ガコン、ガコンと音が聞こえる。どうやら先客がいるらしい。ガコン。またすぐにガコン。さらにガコン。ちょっと買い過ぎじゃないだろうか。
「うおぉぉっし!!」
凌雅「!?」
突然の大声に驚いて、俺は尻餅をついてしまった。どうやら若い男性のようだ。
「あ、申し訳ない、驚かせてしまって。どうしてもコレが欲しくってさ。」
そう言って男性が指差したのは自動販売機の缶コーヒーのサンプルだった。そこにはデカデカと「当たる!」と書かれていた。どうやらそのコーヒーを買うと、オリジナルグッズが「当たる!」らしい。どこかで聞いた話によると、確率は結構渋いのだとか。
凌雅「えっと...お、おめでとうございます。」
「ありがとう。そうだ、お詫びに何本か持っていきなよ。」
そう言うと、その男はビニール袋を一つ俺に手渡した。反射的にとりあえず広げて確認してみると、どうやら中には何も入っていないようだった。サイズは、コンビニでポテトチップスを買うともらえるくらいの結構大きめのものだ。
凌雅「いえ、お構いなく...。」
「遠慮しなくていいよ。というか、持っていってくれた方が助かるんだ。お願い!」
ふとその男の足元に目をやると、そこにはパンパンに膨れ上がったバックパックがあった。かなり無理して詰め込んでいるのか、表面に缶の形が浮き出ている。
凌雅「じゃあ、お言葉に甘えて...。」
「助かるよ!いやぁ、君みたいな優しい人に出会えるなんて本当にラッキーだ!」
凌雅「・・・。」
いや、要らないものをこれだけたくさん買う羽目になったのだからむしろアンラッキーじゃないのか?と俺は言いたくなったが、言わない方がよさそうなのでやめることにした。
天能寺「そうだ、良ければ名前教えてよ!僕は天能寺克弘。君は?」
なんか馴れ馴れしいヤツだな...。初対面、しかも自動販売機の前で会った程度の人間に名前とか聞くものなのか?
凌雅「尾崎です...。」
天能寺「そっか尾崎君ね。今日はありがとう。じゃあね!」
ここで、「あそこで少し話そう」とか言ってファミレスや喫茶店に連れて行かれたら大体は宗教勧誘なので、逃げなきゃ!と身構えていたが、どうやら違ったようだ。念のため、あえてフルネームを言わなかったけれど、今思えばしっかり言っても良かったのかもしれないな。
凌雅「お、あった!」
ふともう一度自動販売機の方に目をやると、そこには正真正銘のメロンソーダがあった。決してクリームソーダなどではない、真のメロンソーダである。俺はその自動販売機をパシャリと携帯のカメラで撮影する。自動販売機では、レシートは出ないからな。念の為、マップアプリにも場所を登録しておくか。
さてと、残りのおつかいを済ませに行くとするか。俺はビニールいっぱいに詰め込まれたコーヒーを飲みつつ、大通りの方へと戻っていった。




