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俺の愛する幼馴染(負けヒロイン)  作者: 炎右ロイ
第2章
10/17

伝説の先輩

凌雅「・・・・・・。」


大学の入学式を終えた俺は、大学の敷地内の広場の端にあるベンチに座って、ぼーっと桜の花びらが舞っているのをただただ見ていた。

なんて言うか、桜を見るという行為そのものに没頭しているとでも言えば良いのだろうか。そう表現できてしまうくらいに、今の俺は満たされていた。


「あなた、尾崎凌雅君よね?」

凌雅「ふぇ?...あ、はいそうですけど。」


突然声をかけられ、少し心拍数が上がる。手入れの行き届いた綺麗な長髪、モデルのようなしなやかなボディライン、そして整った顔立ち、まさに文句の付け所の無い美女がそこに立っていた。

気がつかなかった。まさか真横に誰かいるだなんて。


園城「あれっ、もしかして分からない?私は園城(そのしろ)さくら。あなたが2年生の時は生徒会長をやっていたんだけど、覚えてないかな?」

凌雅「え...、あっはい、もちろん覚えてますよ、はい。」


そうだ、知っている...。学校内はおろか、この辺りに住んでいる人なら知らない人はいないであろう超有名人、園城(そのしろ)さくらだ。成績優秀、容姿端麗、確か読者モデルもやっているんだっけ。そういえば、優雅や華凛もよくこの人の話をしていたような気がする。こうして間近で見るのは初めてだけど。


園城「ホントかな〜?」

凌雅「ほ、本当ですよ...。」


嘘はついてないぞ、名前だけは覚えていたんだからな。それにしても、そんな超有名人の園城さくらさんが俺に何の用事なのだろうか。


園城「うふふ、優雅君の言ってた通りね。あなたが今言いたいのは「俺に何の用だ。」ってとこかしら?」

凌雅「・・・。」


うう...、セリフを取られてしまった。しかし、それが許せてしまえそうになっている自分がいて、つくづく美人は得なんだなと俺は悔しくなった。


園城「あーゴメンね。君みたいな子を見るとつい

、からかいたくなっちゃって。」

凌雅「あ、いえ、平気です...。」


俺が返事をすると、園城先輩は大きく深呼吸をして、さっきとは打って変わって真剣な表情で話し始めた。


園城「その、この間はごめんなさい。多分、あれも私のせいだから...。」

凌雅「?何のことですか。」

園城「春休み中、女の子に難癖つけられて絡まれたことがあったでしょう。華凛ちゃんから話は聞いているわ。」

凌雅「あ、あの時のことですか。でも、何で先輩が謝るんですか?」


多分、華凛に優雅と別れるように言ってた連中との一件のことだろう。そういえばあの時思いっきりチョップ食らわしちゃった子、大丈夫かな?


園城「多分ああいう人達が出てきてしまったのは、私が優雅君に告白してフラれたのが原因だから...。」

凌雅「・・・。」


そういえば、以前穂奈未が言っていたっけな。


穂奈未『2年生の終わりの頃、ある3年生の先輩が優雅君に告白したの。結果はフラれたってことだったんだけど、その時に優雅君が言ったらしいの。他に好きな人がいるって。その時からなのかな、みんな優雅君の気を引こうと必死になってた。』


多分この「先輩」が園城先輩のことだった、ということなのだろう。


園城「今思えば私って本当にズルかった。フラれても、それでその後卒業して終わりだったから。」

凌雅「・・・。」

俺は先輩の目を見つめて、次の言葉を待った。


園城「私が卒業してから、優雅君を巡って女の子達は事あるごとに争ったらしいの。最初はテストの成績を競うくらいだったらしいけど、段々とエスカレートしていって...。」

凌雅「・・・。」


穂奈未『そしてそれだけじゃ終わらなかったの。優雅君に対するアプローチが通じないと分かると、今度は優雅君が好きな人は誰なのかという話をみんなするようになって。話が進んでいくうちに、行動も段々と過激になっていって...。』


優雅を自分に振り向かせようとする者、優雅の好きな人が誰なのかを探る者、もしかしたら園城先輩をフったことを理由に優雅に危害を加えようとした者もいるかもしれない。


園城「私は自分勝手だった。フラれたことに満足して卒業した。こんなにたくさんの人が傷ついてしまったことにも気づかずに...。本当にごめんなさい...。」


俺は改めて痛感する、この社会の残酷さを。特に日本ではこの傾向がとても強いように思う。この社会はとことん「普通」では無い人に厳しい。

優秀な者は周りから勝手に期待をかけられ、その期待に応え続けなければならない。そして、もしその期待に応えられなければ、まるで罪でも犯したかの如く強い非難を浴びることになる。

今回で言えば、「園城さくらは誰もが憧れる優等生だからフラれるなんて有り得ない」という期待を裏切ってしまったことになるのだろうか。


また、逆に劣っている者は完膚無きまでに虐げられる。いじめの対象になり金銭的にも精神的にも搾取され、助けを求めても助けてもらえない。それどころか、嘘つき呼ばわりされて悪者扱いされる始末だ。何を言っても信じてもらえない。

実際、俺も成績が落ちてからは先生がまともに話を聞いてくれなくなったという実感がある。あの時は、はっきり言って穂奈未以外の味方は誰もいなかったと言っても良いだろうな。


凌雅「・・・。」

園城「ごめんなさい...。本当にっ、ごめんなさい...。」


しまった。また、自分の世界に入り込んでしまっていた。とりあえず、まあ、つまり今俺が先輩に言いたいことは...、


凌雅「先輩は、何も悪くありませんよ。」

園城「でも、私は...。」


凌雅「悪くないったら悪くないんです。たとえ神様が先輩を悪いと言ったとしても、俺はそれに反論して言い続けてやりますよ。先輩は何も悪くないって。」


これが俺の答えだ。誰が何と言おうとね!それに、わざわざ俺のところにまで来て、謝るような人なんだ。きっとこの人は良い人なんだと素直に思う。


園城「・・・。」


俺が一通り言い終えると、先輩は黙り込んでしまった。あ、俺また何かやっちゃいましたか?なんて...。


凌雅「えと、何か気に障るようなこと言っちゃいましたか?」

園城「ううん、違うの。何か、やっぱり優雅君のお兄ちゃんなんだなぁってね。」


華凛「さくらせんぱ〜い!」

園城「あっ、華凛ちゃ〜ん!」


華凛がこちらに駆け寄ってくる。そしてその後ろには優雅と穂奈未の姿もあった。


華凛「あら、アンタもいたのね。」

凌雅「いやいや先に気づけよ!俺の方が手前側にいただろうが。」

華凛「いやぁ、背景と同化してて気づかなかったわ。」

凌雅「そりゃ、黒いスーツじゃ夜は...。って今昼!しかも晴れ!13時!チョー目立つから!」

穂奈未「ぷっ、ふひひっ!」


穂奈未よ、笑うの我慢しなくていいからな。っていうか、もっとその可愛い笑顔をよく見せてくれー!


優雅「実はこの辺りで花見をしながら昼飯にしようと思っていたんですよ。良ければさくら先輩もご一緒しませんか?」

園城「それじゃ、お言葉に甘えて。」

華凛「あっ、それ4人分しかないから凌雅はお昼抜きね!」

凌雅「ちょっ、俺朝も抜いててお腹ぺこぺこなんだけどぉ!」


こうして、今日は5人で花見をしながら昼食をとることになったのだが。


優雅「なぁ、凌雅。」


凌雅「な、なんだよ。」


穂奈未「お昼ご飯なんだけどね...。」


凌雅「うん...。」


優雅「4人分しかないのは...。」


凌雅「あ、ああ。」


何故そこで止める。まぁ言わなくても分かるが。


穂奈未「本当なんだよ...。ごめんね。」


凌雅「そ、そうか。」


穂奈未、悪いのは君じゃないぞ。


華凛「ということでぇ〜!出さなきゃ負けよ、最初はグー...。」

凌雅・穂奈未・優雅・園城「!?」


突然の不意打ちジャンケンに驚く俺達。しかし、実はジャンケンには勝率を高める方法がある。それはパーを出すことである。実はグー、チョキ、パーの内、最も出る確率が高いのはグーなのだ。なぜなら「最初はグー」の時に全員が手をグーの形にするからだ。あとはチョキを出すかパーを出すかということをあえて考えない限り必然的にグーが出てしまうという訳だ。だからここはパーで行くしかない...。


華凛「ジャンケン、ポン!」


華凛:チョキ

優雅:チョキ

穂奈未:チョキ

園城:チョキ

俺:パー


な、なにィ!?そ、そうか、こいつらは俺より頭が良いからここまで俺が考えるのはきっと想定済み...。


穂奈未「・・・。」


穂奈未が申し訳なさそうな顔をしている。おそらく、穂奈未は俺と同じくグーが最も出やすいと読んでわざと負けるようにチョキを選んだんだろうな。そう考えるとなんかちょっと嬉しいかも...。


華凛「決まりね。アタシはピザまんとメロンパン、あとメロンソーダね。」

多いな、オイ。あとメロンソーダ地味に嫌だなぁ、意外と売ってないんだよねぇ。


優雅「僕はツナマヨのおにぎりと骨無しチキンで。」

なるほど、シーチキンとチキンの夢のコラボレーションか、ってどうでもいいわ!


園城「私はコーヒーゼリーで。」

ここでコーヒーゼリーを選ぶとは流石です先輩。中華まんやおにぎりと比べて、コーヒーゼリーはそれぞれのコンビニ独自の特色が出やすい商品...。この尾崎凌雅、必ずや先輩のお目にかなうコーヒーゼリーをお持ちしてご覧に入れましょう!


穂奈未「あ、あの凌雅君。良ければ私も一緒に」

華凛「ダメよ。」

穂奈未「・・・。それじゃお茶で。」

穂奈未...、お前の気持ちはバッチリ俺に伝わっているからな!どこでも大抵売っているお茶を選択してくれたこの恩は必ず返すからな...。


こうして俺はただ一人、コンビニへ買い出しに向かうことになったのであった。


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