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夢ではない

作者: 鏡原レイ

 私は当時の友達のYと家の近くの貯水池でザリガニ釣りをしていた。タコ糸に煮干しを巻いた簡素な仕掛けだが、よく釣れた。

 その日もいつもと同じく大漁だった。バケツ一杯になったマッカチン(当時、住んでいた地域ではアメリカザリガニをこう呼んでいた)は七歳の私達にとってはちょっとした重さだった。私がYの先を行き、よたよたしながら歩いていた。しばらくするとYが叫んだ。Yはあぜ道に倒れ込み、その横には小さな蛇が見えた。マムシだ。私はマッカチンの入ったバケツを放り出し、大人を呼びに行こうと走り出した。懸命に走ったが、息が切れ、立ち止まってしまった。その時だ。右足のふくらはぎに今まで感じたことのない痛みを感じたのは。私は自分の足元を見た。そこにはマムシがいた。何てことだ。       

 毒が回っていく。痺れて動けない。私は自分の中の何かが、自分の体を抜け出し、空に向かっていくのを感じた。そして、私は部屋の天井から眠る私の姿を見た。私は死んだのだろうか?なぜあそこで眠っているのだ。目を開けろ。

 

 私は部屋の天井を見ていた。私の横には弟と母親がいた。私は生きていた。


 私は今、タイとラオスの国境付近の山間にいる。私の右足のふくらはぎに咬みついたコブラを見下ろしながら。


 残念だがこれは夢ではない。



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