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1話「出会い」 その1「リア・ストアとの出会い」

1話 出会い

1 リア・ストアとの出会い


「大丈夫?」


 誰かの声が聞こえた。俺は何をしていたのだっけ?

 思い出したのは育ての親の突然の裏切り。後ろから斬りつけられてそのまま滝に落ちたこと。勿論、驚いた。表情には出さなかったが……

 まあ今となってはどうでもいいことだ。斬りつけられてすぐに、反射的にやり返した。首を切り落とした。あいつはもう死んでいる。それよりも……


「君は誰?ここはどこだ?」


 気になるのはそっちだ。声の主に俺は尋ねた。


「私はリア。リア・ストアよ」


 目を開いてリアと名乗る少女の姿を見た。不思議な感覚だった。たぶん彼女に見惚れてしまっていたのだと思う。


「あなたは川を流れていたの。背中から血を流しながら……」


 そんな俺のことをよそに彼女は続けた。どうやらずっと川を流れていたらしい。失血死しないとは本当に俺の肉体はしぶといな。そう思い背中を触ると、血が止まっていた。


「でも良かったわ。治療が間に合ったみたいね。それじゃあ気を付けて」


 背中の傷も治療してくれたらしい。傷跡すら残っていない。この手際、彼女は医科技師ドクターか。それも相当優秀な部類だろう。


「おいリア、だったか……待ってくれ」


 自分でも分からなかった。しかし、気づけば彼女を呼び止めていた。


「な、何でしょう?」


 彼女も困惑気味だ。どうやら先を急いでいるらしい。


「君には恩がある。この恩を返したい」


 身体を起こして急ぐ彼女に俺はそう言っていた。


「……あなたに何ができるの?」


 先ほどまでの彼女は一言でいえば他人行儀な印象だった。感情を表に出さず、悪印象を与えない喋りや表情をしていた。だが今は違う。彼女の眼はどこか冷たく、光を感じさせなかった。人を信じていない、期待していない目だ。言葉にさえそれが表に出ている。

 しかし、不思議なことに俺はそんな彼女に惹かれている。傍にいたいとますます思ったのだ……


「君の手足となろう。君の武器になろう。君の盾になろう」


 俺は彼女の問いにそう答えを返していた。できることがそれくらいしかなかったのだ。


「……あなたの名前は?」


 彼女は拒否することなく今度は名前を尋ねた。どうやら同行すること自体はOKらしい。


「名前はない。知らないんだ。好きに呼んでくれ」


 嘘ではなかった。育ての親も名前を付けてはくれなかった。俺に名前は存在しない。何者なのかもわからない。空っぽの存在だ。


「……そういうことか。私があなたを助けたのは……」


 彼女は一瞬驚き、その後一人で何かぶつぶつと言った。どうやら俺を助けたことと関係があるみたいだが、彼女の心の中はうかがい知れない。


「じゃあ、さっきから一度も表情や声色が変わらないから『フリーズ』と呼ぶわ。よろしくね、フリーズ」


 さっきまでとは打って変わって今度は満面の笑みで俺をそう呼んだ。目にも冷たさはなく、温かさが感じられる。とても可愛らしい笑顔だと思った。

 そんな彼女は俺に名を与えてくれた。フリーズ……それが初めての名前。嬉しかった。しかし、名前の通り表情には出ない。彼女の言うように表情が凍っているのかもしれない。


「こちらこそよろしく、リア」


 こうして俺はリアに名前を与えられ、共に行動するようになった。


 ……俺の名前はフリーズ。自分が何者なのかはまだ知らない。


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