男と借金取り
俺はとにかく考えた。
どうすればこの状況を抜け出すことができるのかと
「早くでてこいやー、そして2000万払いな~」
………借金取りから
「いつまでトイレに入ってんだー?あきらめろや」
……………トイレの中から
どうしたら脱出できるのかと
俺は、借金を抱え込むような人間ではなかった。
贅沢もせず、平和にのほほんと生きていただけなのに。
この事件のすべての原因は、あの男にあった。
「先輩先輩。ここに名前を書いてもらえやせんか」
「いいぞ……ほいできた。で、これでなにかすんのか?」
「まぁ、一種のサプライズっすよ」
そういってあいつは、自分の持ち場へと戻って行った。
ありがとう……今までで一番のサプライズだよ(怒)
2000万なにに使ったんだよ!
そして何でおれ?
あまり話した記憶ないんだけどな
「そろそろぶち壊すぞ。嫌なら、早くでてこいやー、」
過去を振り返っている場合ではないな。
早くここから脱出しなくては。
ではどうする?
案①【 猫の真似】
「早くでてこいやー」
「にゃー、にゃーお」
「猫?あいつ逃げやがった。ここにはもういない。行くぞ」
なかなかの案だな。では本番スタート
「早くでてこいやー」
「にゃーお、にゃー(低温ボイス)」
「………………お前大丈夫か?」
心配された(泣)
まだ罵倒された方がましだわ。
めげずに案②【無言】
「早くでてこいやー」
「………………………」
「もしかしてもういないのか?まだ近くにいるはずだ。探せ」
大成功
これなら今度こそいけるな。
ではスタート
「早くでてこいやー」
「………………」
「なに黙ってんだ。さっき猫の真似をしたやつが…………あっ、すまん。もう少し休んでてくれ」
さっきの恥ずかしさで黙り込んでると思われた(泣)
何だろう?もう本格的に悲しくなってきた。
まだだ、まだ俺は諦めん
案③【入ってます】
「早くでてこいやー」
「入ってます」
「ん?」
「レディが入っているって言ってるでしょ」
「すみません。違うトイレじゃねぇか。逃げてるかもしれん。早く行くぞ」
案外この案良くね?
最後の賭けじゃ~、はじめ
「そろそろいいか?傷ついているのはわかるが、こっちも仕事でな。返してもらうぜ」
優しくなった(泣)
「入ってます」
「ん?」
「レディが入ってますって言ってんでしょ」
「お、お前(泣)……………分かった。お前については俺がボスから言っておく。だからな………………頑張りな」
「……………」
「行くぞ」
借金取り達が、トイレから離れていく音が聞こえた。
ガチャ
トイレから出て、俺は久しぶりの外に出た。
空を見上げた。
曇りだった空は、夕焼けに変わっていた。
「ハハ…………」
笑い声なはずの声が、悲しく聞こえた。
借金取りから逃げられ、気分爽やかなはずなのに重かった。
「…………帰ろ」