2話
白が体育館へ到着すると同時にチャイムが鳴り、一人の男が壇上に上がった。
彼はマイクの前に立つと、ガヤガヤと落ち着かない生徒たちに声が届くよう、
大きな声で叫んだ。
「君たちには、これからペアを決めてもらいます!
決闘であれば条件付きで許可するので、絶対に争いごとは起こさないように!
決闘はとなりの闘技場内のみで行ってください!それでは始め!」
話が終わると多くの生徒が
自分の知り合いや友達のところへと向かい、ペアを組み始めた。
何人か決闘を始めたものもいるようで、
様々な魔法の詠唱や剣のぶつかり合う音が聞こえてくる。
その騒ぎを聞きながら、白は体育館の隅へ移動した。
―40番の自分とペアを組みたい人がいるわけはないし、
どうせ最後に余った奴と組むことになるだろう、もしも一人だけ余れば儲けもんだな―
そう思ってこの騒ぎが一段落つくまで寝ていようと思ったのだ。
しかし、そんな思惑は淡くも崩れ去る。
髪が黒くて少し身長が小さい少女―和都が目の前に現れ、
「私と決闘して」
そう、話しかけてきたからだ。
そんなことを言ってくる奴がいるとは、と白は少し驚いたが、
わざわざ40番の自分に絡んでくるあたり、面倒な予感がするので、
この話に興味がないように見せる為、あくまでだるそうに返答した。
「何で学年一位のお前と学年最下位の俺が決闘しなきゃいけないんだ?」
そして、白のそんな態度にはまったくかまわず、
むしろ返答してくれたことを喜んでいるかのように、和都は続けた。
「あなた入学試験の時寝てたでしょう?それなのに入学できてるから…不思議で。
それに…個人的にあなたに興味があるの」
その返答を聞いて白は確信した。
こいつは面倒くさいタイプだ、と。
―生来の面倒くさがりである白としては、
和都を適当にあしらって決闘を避け、今すぐ寝てしまいたかった。
しかし、ここで下手に関わるのを認めてしまえば、
後の学校生活で目立ってしまうことは避けられない。
両極端な人間は一緒にいると何をしなくとも目立ってしまうものだからだ。
目立つ人間には何かと厄介ごとが降りかかってくる。
それを処理することは今こうやって和都の申し出を断ることよりも面倒くさいだろう―
そう考えた白は、誘いを断ることに全力を注ごうと決めた。
上記の判断をほぼ一瞬で下した白は、すぐさま和都に返答した。
「嫌だ、決闘なんてしたくない」
「なん――」
「実力差を考えろ、1番と40番だぞ?俺を殺す気か」
「違――」
「お前と戦ったって、俺には何の利益もないんだよ!」
これだけ言えば、流石に和都も諦めるだろう、反論しようもないだろうし。
白はそう踏んでいたのだが、その考えはまたもや和都によって跡形もなく崩された。
「だったらあなたが勝ったら私……結婚してあげる」
照れたようにほほを染めながら、和都がそうのたまったからだ。
2015/11/23
改変いたしました。