愛する人の死
何の企画でも無いです。ただ書きたくなったから書いたのです。
あいつらが死んだ。
その知らせが幻想郷中を駆け巡ったのは、30分もいらなかった。
「……遂に死んだか」
出雲白夜は、紅魔館のとある一室。とあるベッドに腰掛けながらそう呟いた。
「いつかは、こうなるって分かってはいたけど、こうも本当に来るとなると……なぁ?」
しばらくの間、顔を隠されたベッドの主を見つめる。
……10分位経っただろうか。白夜は唐突に胸を押さえた。
苦しくてたまらなかったからだ。
初めて親しい人『三人』も死ぬとなると、もう何がなんだかわからない。
「咲夜、魔理沙……霊夢」
俺が特に親しかった人間達。
「人外になんて……生まれて来なければ良かった……」
人外故に、永く生きる事になる。それ故に、親しかった人間達は、先に逝ってしまう。
「…………」
しばらくベッドを見つめていると、部屋のドアが「ガチャ」という音を立てながら開いた。
「白夜……」
入ってきた人物は、レミリア・スカーレット。咲夜にもっともお世話になっただろう人物だ。
白夜は何も言わず隙間を空ける。すると、レミリアは「ありがと……」と一言だけ呟き、そこに座った。
「…………」
会話の無い時間が続く。
何分経っただろうか。レミリアが口を開いた。
「……人間って不便ね」
まるで咲夜の死が悲しく無いかのような言い方だった。
「……人間も私達ぐらいに生きる事ができれば良いのに……」
「レミリア……」
レミリアが口を開くたんびに、だんだんと涙がたまってゆく。
そして、レミリアは吹っ切れたように涙を拭い、言った。
「さ、さて!咲夜も死んじゃった事でメイド長もいなくなっちゃったし!新しい人を探さな「レミリア」う……」
白夜がレミリアの言葉を遮った。
「お前……咲夜が死んで泣いてないだろ」
「な、何でかしら?何で咲夜なんかに泣かなきゃいけないの?変わりならいくらでも「レミリア!」……」
こいつは無理してる。レミリアは、必死に涙を見せまいと。白夜はそう思った。
「もっと、自分の気持ちに素直になれよ」
白夜がそう言うとレミリアは、一瞬だけ、悲しそうな目になるが、すぐに戻り、無理やり笑みを作った。
「び、白夜?私は吸血鬼よ?人間なんて私達の餌だし、そうじゃなくても道具としか「レミリア!!」」
パアンッ!!
部屋に頬を叩いた音が虚しく響く。
「……確かに吸血鬼にとっては、人間はそんななのかもしれない。人間を餌と、道具としか思ってないのかもしれない……。たが!!本当に!!レミリア・スカーレットと十六夜咲夜の関係はそんななのか!!」
白夜の口から出てくる言葉一つ一つが、レミリアの心に響いてく。
途中、レミリアは涙を再び浮かべるも、白夜は止めなかった。
「聞いてみろ!!自分の心に!!ただの服従関係じゃあないだろ!!俺は知ってるぞ!!咲夜がどんなけレミリア・スカーレットのことを想っていたか!!あいつはなぁ!!さっき死ぬ直前までレミリア・スカーレットの事を考え、想っていたんだぞ!!俺にあんたの事を任せたぐらいだからな!!」
もう、既にレミリアの目からは涙が止まらない。「うっぐ……ひっぐ……」と、声をあげている。
「さぁ!!どうなんだ!!お前にとっての十六夜咲夜はどうなんだ!!」
レミリアは迷わなかった。もう、答えはでているのだ。
「うぅ……!咲夜ぁ……!咲夜ぁ!咲夜ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
レミリアはベッドに抱きついた。
そして、白夜は。
「……」
無言で部屋を出た……。
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無言で、歩みを進めていく。
気が付いたら、やけにジメジメした所についた。
「……ここは」
目の前には、一件の建物。そして、看板には『霧雨魔法店』と言う文字が。
「……魔理沙……」
そう呟き、白夜はその店に入っていった。
部屋の中は、相変わらずグチャグチャだった。思わず、魔理沙がいる光景を思いだし、笑ってしまう程に。
そして、白夜は、本やビンなどでグチャグチャになっている部屋の先にある、もう一つの部屋に向かった。
すると。
「あ」
「アリス……」
部屋の片隅にある人が一人いるぐらいの膨らみのあるベッドのそばに椅子を立て、アリス・マーガトロイドが座っていた。
「白夜……魔理沙は……」
「知ってる」
白夜も、椅子を何処からかだし、座った。
すると、アリスが口を開いた。
「……人間って儚すぎるわ」
アリスがベッドにいる『人』を見つめる。
「大した力も無い。寿命も短い。そんな貧弱な生き物」
アリスの目から涙が溢れる。
「なんで……なんで逝っちゃうんだろうね……。ちょっと前までは、あんなに元気だったのになぁ……」
アリスは笑っている。分かっているからだからだろうか。
「ふふっ」と笑うアリス。しかし、目には涙を浮かべている。
そんなアリスに、白夜は声をかける事が出来なかった。
「……アリス。あの三人は同じ墓に入れる事になった。だから……」
そこまで言って、白夜は霧雨魔法店を出た。
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咲夜、魔理沙ときてしまったら次はあいつの所に行くしかないだろう。
「……霊夢」
白夜は博麗神社に向かった。
博麗神社には、すでに人がたくさんいた。
知ってる人もいれば、知らない人もいた。
アリス、輝夜、衣玖、永琳、パチュリー、フラン、レミリア、美鈴、天子、聖、四季映姫、小町、文、椛、紫、藍、チルノ、幽ヶ子、妖夢……他にも沢山。
「……白夜がきたからはじめましょう」
紫がそう言うと、人里の人達がいつの間にか運ばれていた魔理沙、咲夜を運んできた。
「……みんなの意見を聞いて、墓はここにする事にしたの。白夜には聞いてなかったけど……いいかしら?」
「……おう」
白夜がそう言うと、博麗神社の中から霊夢も運ばれてきた。
そして、桶の中にいれ、掘ってあった穴の中に埋める。
その時。一瞬。ほんの一瞬だが、咲夜、魔理沙、霊夢が笑ったような気がする……と白夜は感じた。
そして、桶の蓋がな閉められる。
「……なんかさっきまで近くに居たのに、こうなると遠くに行っちゃうような気がしますね……」
文が呟く。
それに同意するかのように、皆が一斉に泣き出す。
……そして、気のせいか。空も悲しいのか、雨が振ってきた。
「……」
皆、無言になり、ただ、桶を埋めるためのザックザックという土を駆ける音が虚しく響く。
そして、そんな時間がしばらく続き、土をかけ終わった後、紫が墓石を立てた。
「……さぁ、みんな。魔理沙も咲夜も、霊夢も。こんな雰囲気は嫌と言って居るわ。追悼の宴をはじめましょう」
紫のその一言で、皆各々の方向に去っていった。
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雨の中、テントを張っての宴も終わった。
ただ、雨の音がする中。紫が立てた墓石にゴリゴリと何かを掘る音が。
誰かが、墓石に何かを掘っているのだ。
そして、しばらくして「ありがとう」と呟く声がした後、その人は去っていった。
墓石には、こう書かれていた。
『長い時間を生きる妖怪から見ると、人間の人生は一瞬で儚く過ぎる。
しかし、その一瞬に放った光は目に焼き付いて離れない。
その光が消えてから、光の眩しさに気づくのだ……。
完璧で瀟洒なメイド 十六夜咲夜
普通の魔法使い 霧雨魔理沙
楽園の素敵な巫女 博麗霊夢
ここに眠る。』