~If~バレンタインの幻想郷
バレンタイン企画~(^_^)v
幻想郷にバレンタインが来た。
ん?幻想郷にバレンタインがあるのか?一応あるらしい。文が一週間位新聞で知らせ回っていたからな。
そしてバレンタインの日……。
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朝、麟より早く起きると、机(というよりちゃぶ台)に手紙が何通か。
それらを手にとり、一つ一つ差出人を見た。
「えっと……『親愛なる白夜へ……アリス・マーガトロイド』『白夜……博麗霊夢』『ラノベ友へ……風見幽香』『無題……人間R』…………」
うん。あれだな。
恐らくは、俺に余った義理チョコを渡そうって言うこんたんだな。アリスは別だけど。
「まぁ……行ってやるか」
そうつぶやいて、俺は家を出た。
……そういや、『人間R』って誰だ?
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「それで……にチョコ渡したくて。その……作り方を教えて頂きたくて……」
「はい、良いですよ。チョコ位、メイド長の私からすれば楽チンですので。では早速キッチンに向かいましょう。……さん」
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しばらく飛んで、着いたのはアリス宅だった。
家の周りには、アリスの作った人形がふよふよ浮いている。
そして、その中の一つが近寄って来た。
「シャンハーイ!」
「ひさしぶり。上海」
近寄って来た人形、上海は笑顔で俺の周りをグルグル回っている。そんなに嬉しいのだろうか。
そして、しばらく上海とワイワイやっていると、「上海?」と言う声と共に家の中からアリスが出てきた。
「上海?どこに……あ、白夜(ナイスタイミング!)」
アリスは、俺の姿を見つけると、嬉しそうに顔を緩ませる。
そして、その直後もじもじとし始めた。
「あ……えっと……その……び、白夜こ」
と、『何か』を取りだそうとしたその時。
「シャンハーイ!」
「あ、ちょ、上海!」
上海がアリスからその『何か』を奪う。そして、俺に渡す。
「これ……は?」
その何かは赤い紙で、ラッピングされている。そして、リボンが巻いており、『白夜へ』と書かれた文字がある。
「あ、えっと……あ、開けて……」
言葉を一つ発するたんびに顔が真っ赤になり、俯くアリス。
何かする訳でもなく、俺は素直にアリスに従う。
「……これは」
うすうす勘ずいてはいたが、中には『愛を込めて』とホワイトチョコで書かれたハート型のミルクチョコが。
アリスが口を開く。
「ち、チョコなんて、つ、作った事なかったからあれだけど……ダメ?」
「……」
「び、白夜?」
俺の精神は壊れかけていた。だって……だって……っ!!
「ちくしょう!!カワユすぎるぜ!!」
アリスに顔を真っ赤にしながら上目遣いで言われたらオチないはずがないだろう?
俺はアリスに抱きついた。
「アリス……ありがとう」
「白夜……愛してる」
「俺もだ」
何故こうなったかは分からないが、俺とアリスの顔が近づく。
もう少しで触れる……そう思ったその時。
「そこまでね。送符『ゆかりん隙間転送』」
俺は落ちた。
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「あ、……さん。チョコ切らしてました」
「あ、じゃあ買ってきますね」
「お願いします。じゃあ、教えるのはその後で」
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紫の手により、隙間に落ちていく。
その途中、紫が「はぁ~い♪」と言ってきたため、とりあえず凸ピンをしておいた。
「いきなり何よ!」
「いや、あんないい雰囲気をぶち壊されたから」
紫が痛がっている。大妖怪なのに。
「あなた、そんなこと言って良い立場なの?バレンタインを文屋に伝えたのも、手紙を伝えたのも私よ!」
「でも、雰囲気ぶち壊すのはどうかと思うぞ」
「う……」
紫が言い止まる。
「それで?何でも紫は俺を隙間に?」
俺がそう聞くと、紫はまだ痛いのかおでこをさすりながら言った。
「いや。対した理由じゃないのよ?ただ暇だったから手伝おうと思っただけ」
「ふ~ん」
落ちていく隙間の感覚を忘れながら言った。
すると、紫が「そうだ」と言う。
「はい、これ。チョコ」
なんと、紫は小さいがチョコを渡してきた。
落ちていく中、それを上手くキャッチ。
「お、ありがとう。……まさか本命じゃ」
「そんな訳ないでしょう?親友の証よ」
すぐにキッパリと言われたのはあれだったが、貰えるなら嬉しい。
「ありがとn」
それを言い終える前に隙間は切れた。
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「あぅ……また形が変です……しかも表面もなんかザラザラで……」
「しょうがないわよ。もう少し練習しましょう?」
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さて。
落ちた場所は博麗神社だった。
「そういや、霊夢からもきてたよな。手紙」
来た手紙を思い出しながら霊夢を探す。
霊夢は、賽銭箱の前で『何か』を持っていた。
「よ、霊夢」
「!?び、びびびびびびび白夜!?」
「動揺しすぎだろ……」
明らか動揺しすぎの霊夢。それにツッコムと「そ、そうよね」と言って、自分の頬をパンパンと叩いた。
叩いた後、霊夢は「大丈夫。私ならできる私ならできる……」とつぶやいている。
霊夢サーン。聞こえてますよ~。
「び、白夜!」
霊夢が、真剣な眼差しで此方を見てくる。
「こ、こここここれあげるわ!」
またまた動揺しすぎの霊夢。その『何か』を片手で渡してきたのだが、その手が震えている。
その震える手から『何か』……いや、『チョコ』を受け取る。
『チョコ』の袋は、紅白で飾られていた。
「ありがとう」
俺が、霊夢を見てそう言うと、霊夢は顔を真っ赤に染めて、
「ばっ!ばっかじゃないの!?別にそうゆうのじゃなくて、ただ日頃の感謝と気持ちを伝えたかっただけなんだからねっ!!」
と言った。
「それ、結果的にツンデレになってないぞ」
「っ!?」
俺がそう呟く。すると、「やっぱり無理よ……」と言いながら懐から一枚の紙を取り出す。
「あんたなんかあんたなんかあぁぁぁ!!夢符『夢想封印』っ!!」
「なんでさぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
俺は霊夢のその後「またやっちゃった……」と呟いたのを聞いたような気がしながら吹っ飛んだ。
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「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ドシンッ!!
霊夢の夢想封印で、跳ばされた俺。
「いってぇ……」
地面に落ちたから、そこまで大事には至らなかったが、痛いもんは痛い。
俺が当たった背中をさすっていると、声がかかった。
「あらあら、ずいぶん変則的なご登場だこと」
声のかかった方に振り向く。
そこには、日傘をさし俺を見つめている風見幽香の姿が。
何かは分からないが、手には普段持たないはずのバックがあった。
「や、久し振り。こんばっぱー」
「はいはい。こんばっぱー」
何だかよくわからないやり取りをした。
そして二人で笑いあう。
「そうだわ。あなたに渡す物があったのよ」
そう言うと、幽香は持っていたバックの中をゴソゴソ探った。
「えーと……あったわ。はい、これ」
「うお?……うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
渡されたのは、生徒会の○存十代だった。
「これこれ!読みたかったんだよ!いや~!ありがとうありがとう!!」
つい、幽香の手を とりブンブンふる。
「あや?呼びました?」
「呼んでないわよ!」
「あやややややや!?」
何かあったようだが、幽香は何も知らないと言った顔をしていたので気にしない。
「それと、これも」
幽香はカバンから『チョコ』を取り出した。
赤い箱に入ったチョコだが、箱を開けると花のようにかたどられていた。
「幽香の力ってすげー!」
「ふふふ。もっと誉めて良いのよ?」
嬉しそうに笑顔になる幽香。
「それで、この前貸したソードアートオ○ラインはどうだった?」
「ああ、あれねぇ。……うん。面白いわ。ストーリーも良かったけれど、絵も上手よね。……ア○シさんだったかしら?」
「そうだよなそうだよな!しかも横顔が上手という。それに比べて生徒会○一存は面白いんだけど挿し絵とかの横顔が少しなぁ……」
「あとあれよね。個人的に、ブ○キも好きよ」
「はがないのか。あの人の絵はなんか肉質があるというかなんというか。俺もすきだな。あとあれだ……」
チョコなんか放置でラノベのイラストレーターの話になる。
この雑談は夕方の五時半まで続いた。
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「で、出来た!」
「おめでとうございます!やりましたね!」
「はい!これで……さんに渡せます!じゃあ!」
「あら、もういない。そこまで『白夜』さんが好きなのかしらね」
「咲夜!ちょっと来てー!」
「はい。お嬢様」
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気がついたら夕方の五時半だった。
可笑しいな。幽香と話始めたのは午後二時位だと思ったんだが……。今日、時間経つの早くない?
まあ、そんな事は置いておいて。
……早く帰らないと不味いな。
いつも、麟と夕食を食べるのは午後六時。しかも、料理はいつも交代で作っていて、今日は俺の番だ。
早く帰らないとな。
……よし。あれを使おう。
俺は懐からとある笛を取り出した。
それを思い切り吹く。
すると、辺りに澄んだような音色が広がった。
「あややや!呼びました?」
風をまといながら現れた射命丸文。
「俺を家まで全速力でお願いします」
「タクシーに乗るみたいに簡単に言わないで下さいよ。いやです。私もネタ探しで暇じゃないんで」
む、断ったな。文に家まで飛んで貰おうかと思ったんだがな。
……よし。
「あー!言っちゃうんだ言っちゃうんだ!」
「何ですか、その言い方」
「しょうがない。歩いて帰ろう。いくらすごいスクープ持っていても歩いて帰「分かりました。飛びましょう」……よし」
上手くいったな。
「じゃあお願い」
「分かり……いや。その前にスクープ下さいスクープ!」
む、このまま流そうと思ったのに。
スクープ……スクープねぇ……。
あ、あれにしよう。
「えっとな。確かお燐が経営する焼肉店が営業停止処分を食らったらしい」
「え?この前霊夢さん達と行ったばっかですよ?」
「その後に映姫達がきて停止処分になったとか」
「ふむふむ……理由とか分かります?」
「確か……商品偽造、異物混入、ゾンビフェアリーが避けれない、六面ボス前で結構厄介、服の模様が面倒……かな?」
「後半はよくわかりませんがよくわかりました」
今までメモを取っていた手を止め、「さて」という。
「じゃあ、行きますか。ネタも手に入ったんで……とその前に白夜さん。これどうぞ」
なんとなんと。文からチョコを貰った。
チョコ……というよりチョコクッキーだった。クッキーとクッキーの間にチョコが入った。
まさか文から貰えるとは思っていなかったな。
「ありがとうな」
「いやいや、どうってことないですよ。日頃のネタ提供のお礼です」
文は笑って答えた。
そして。
「じゃあ逝きますよ!」
文に持ち上げられ、ふわりと宙に浮かぶ。
「ちょっとまった!字が違う字がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
俺は星になった。
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「嫌な感じ~!?」と飛ばされた(正確には飛んだだが)俺。
とりあえず、どこも傷付かず家についた。
「じゃあ白夜さん。私はこれで」
「おう。ありがとな!」
文は妖怪の山に向け飛んでいった。
「さて……」
夕食作んないとなぁと思いつつ、家のドアを開ける。
「麟、ただいま!」
「あ、お帰りなさいです」
ふぅと溜め息をつく。そして、台所に行きコップに水を入れ一口。
「お風呂にしますか?ご飯にしますか?それとも……私?」
俺の口から出た水で虹ができる。
「な、ななな何言ってんの!?」
いきなり爆弾発言だな。
……あ、そうか。これ、いつものボケか。なに本気にしてんだ。俺。
「麟。そうゆう事は俺の前で言っちゃいけないよ。物事には順序ってものがあるからね」
「……」
ん?黙っちゃったな。ツッコミが微妙だったか?
「……何時も何時も!!何時もそうです!!」
小柄な麟からは想像できないほどの大声が家に響く。
「……り、麟?」
「いっつもそうです!!」
麟が俺を見てくる。
その顔は涙で濡れていた。
「何時も何時も何時も何時も!!私が『好きだ』と伝えても!!」
「い、いや、俺だって麟のこと」
「それは『家族』としての好きじゃないんですかっ!!」
麟の言った事に俺は言葉が出なくなる。
「だから私は!!一人の『男性』として白夜さんを好きになったんですよ!!」
「!!」
…………。
なんも言葉が出ない。
すると、麟の懐から何かが落ちる。
落ちたのは、赤い箱に包まれたチョコだった。
俺は、それを拾い上げ、震える手で中を見た。
中には『白夜さんへ。大好きです』と ホワイトチョコでかかれたハートのミルクチョコだった。
しかも、今までに貰った中で一番きれいだ。まるで職人が作ったみたいな。
……そうとう頑張ったんだな。
「ごめん、麟……俺、気づいてやれなくて……」
「それはそうですよね!!白夜さんには文さんや紫さんや霊夢さん!!そして、恋人のアリスさんが居ますもんね!!」
「り、麟!俺はお前も好きだ!」
「嘘ばっかり!!そうやって流すんですか!!」
麟は涙を流しながら言う。そして、「もういいです!!」と言って家を出ようとした。
「ま、まった!」
麟の腕をつかむ。
「五月蝿いッ!!」
俺は後ろに吹き飛ばされた。
何故……?という疑問は直ぐに晴れた。
麟がやったのだ。
俯きながら、麟は言う。
「……そうですよね……あなたが来たから……白夜さんが居るからこうなったんですよね……!!」
突如、麟の背後に無数の弾幕が。
その弾幕は、弾幕ごっこの威力とは比にならない程の霊力がある。
「白夜さんが居るからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
麟の弾幕が飛んでくる……俺を殺しに。
「……ははは。そりゃあ、そうだよな……」
………………。
俺は……こうなる 運命だったのかな。
だって……一番身近にいる奴の気持ちを分からずに、他の事にうつつを抜かして居たんだから……。
そんなことを思いながら……。
俺は消えた。
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「ハアハア……」
目の前には、一つの人の亡骸がある。
……あれ?なんでこの人死んでんの?
そういえば……この人は誰?
「それに何……この気持ち……」
なんだか……とても悲しい……涙が出るほどに。
「うぅっ……ひっぐ……なんなの?ごのぎもぢは……」
出て来る涙が止まらない。
なんで?
なんでなんで?
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで?
胸にぽっかり穴が開いたみたい……。
「私……この気持ち一生背負っていくのかな……」
……そんなのは嫌だ。
と、その時。とある名前が頭に浮かび上がる。
「白……夜?白夜さん?……白夜さん!!」
全て……思い出した……!!
「何で!!何で!!白夜さん!!血出してるの!!白夜さん!!誰にやられ……あ……」
その時、白夜さんを殺す私の姿を思い出す。
「あ……ああ……ああああああああああああああああああああぁぁぁッ!!」
私がッ!!私がやったんだッ!!一番大切な人をッ!!
私……何やってんだろ……。
「……」
そのまま、ふらふらと家を出る。
気が付いたら、どこかの崖の前にいた。
「白夜さん……」
私は……何故殺してしまったんだろう。
白夜さん……もう会えないの?
「……そんなのッ!!嫌だッ!!」
……もう一度……会いに行くからね……白夜さん。
そう決意し、私は……。
崖から身を乗り出した……。
その後、白夜と麟の死体は消え、人々の記憶から消え去った……。