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黒い戦士  作者: 飛桜京
第二章
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第五話

 ヤマトがあと少しで本陣にたどり着く頃、急に本陣が崩れ始めた。


「―――? クロ、少し止まってくれ。何かあったらしい」

『どうやらそのようであるな』


 なぜか本陣が崩れてきている。今までに前衛、中衛は突破してきたが、まだ本陣には到達していない。かといって本陣まで誰かが到着したわけでもなく、アイクの第四部隊が魔法を放ったわけでもなさそうだ。 そこまできて考えられることは、味方の裏切りもしくは、姫君の脱出。そのどちらかだろう。


「……まあ、行けば分かる話しだ。クロ、進もう」

『承知した』


 ヤマトが疾風のようにその場から消え、しばらくすると、また血飛沫などが舞うスプラッタな戦争という名の虐殺が始まる。


 ■ ■ ■


 ヤマトが再び動き出したとき、セイレン王国の囚われの姫君、イーシャも、本陣で暴れまくっていた。


「えい、ヤアッッ!!」


 一人、また一人と、バルザート兵が斃れていく。イーシャの斬撃は相手の急所を的確に切り裂き、相手を確実に一撃で潰していく。


「人質が逃げたぞ! 追える者は追え!」


「十人以上倒れた! まだ息のある奴もいるかもしれない! 救護班急げ!」


 そんな叫びが本陣に響く。


 救護班については、労力の無駄になるのだが、まあ、仕方がないだろう。


「皆さん、早く来てくださるとうれしいのでけど、―――ねッ!!」


 また一人、斃れた。



 ヤマトの耳に、『人質が逃げたぞ! 追える者は追え!』や、『十人以上倒れた! まだ息のある奴もいるかもしれない! 救護班急げ!』という叫びが微かに聞こえた。


「すごいな人質!! そんなにできるならなんでつかまったんだよ! 狐狩りでもしてるのか?」


 などとツッコミを入れるほどの余裕ができた(もともとあった)。今回はただ単に自分の周囲の敵兵を殲滅したからだったが。


 しかしそのとき、さらに離れたところにいる敵兵達まで逃げ出した。


 ヤマトの近くに人の姿はなくなった。


「何だ? 何か仕掛けてくるつもりか?」

『その通り。前方をよく見てみるがいい』


 クロにいわれて前方を見ると、十門ほどの大砲がこちらに照準を向けて構えていた。


「おいおい、マジかよ……。これはさすがにまずい気がするんだが気のせいか?」


『確かにな。だが、何とかならないというわけでもあるまい?』


「まあ、確かに。だが、これはめんどくさいな」


 そんなうちにも味方の軍がこちらに向かってきている。かといってそちらに注意をそらせばすでに装填を終えた大砲がヤマトに向かって火を噴くだろう。


 それでも、ヤマトは味方に向かって注意を放った。


「こっちに大砲が向いている! 全軍迂回しろ!!」


 そしてその時、大砲が一斉に火を噴いた。


 ヤマト達に向けて、十個の砲弾が炸裂した。



 戦場に煙が立ち込める。


「どうなった?」

「わかりません。しかし、普通の人間が食らってたら即死は間違いなかったでしょう。ですが、あの男は、化け物ですからね。生きていたとしてもおかしくはないでしょう」


 しかし、ヴェナスたちに見えるのはもうもうと立ち込める白煙のみ。さらに、その前方には何も音が聞こえず、とても静かだ。


「……大丈夫だろうか?」

「……さ、さあ? 大丈夫じゃ、ないでしょうか。きっとあの男なら、砲弾を叩っ斬るなり、地面の中に潜るなりなんなりすると思いますけどね」

「しかし、ここまで静かだと不安になるな。取り敢えず最悪の事態であっても、臨機応変に対応できるように構えを解かないように回しておいてくれ」

「はっ」


 ここでいう『最悪の事態』とは、ヤマトが死んでいたり、敵が煙に乗じて攻めてきたり、という最悪の場合に考えられることである。


「何もないといいの―――」


 ヴェナスの言葉が途切れたのは、背後から何かが近づいてきたからだ。



「ふー。危なかった。大丈夫でしたか、陛下?」


「むおっっ!?」

「ははは、驚いてる驚いてる」


 驚いて振り返ったヴェナスの後ろにいたのは、前線にいるはずのヤマト。


 自分のあまりの驚き様に、ヤマトは子供のように笑っている。


「ど、どうやってここまで?」

「簡単なことですよ。クロに頼んでここら辺に回避させただけです」

「結構な距離があると思うのだが?」

「それをやってのけるのが俺たちです」


 さらりととんでもないことを言っているヤマトは、どこまでも楽しそうだ。


 そして、

「さて、もう本陣は目の前ですよ? 号令、掛けなくていいんですか?俺もあとはついていく程度にしますから」

「そうだな。では……、全軍、突撃ィ!!」


『おおーーっっ!!』


 セイレン軍は、全軍(魔法部隊除く)駆け出した。

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