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五日目 魔法改良と授業の準備

 ‥‥昨日はトルネードに飲み込まれてひどい目に遭ったけど、竜巻の時間を減らして再挑戦することにした。ついでに竜巻が発生するまでの時間も短くし、突然発生するように改良してみた。他にも色々いじってみた結果、コストは2になったけど、これで施した対策のおかげで僕は大丈夫なはず。


「もう失敗しないはず。……トルネード!」


 昨日と同じように場所を指定し、トルネードを発動する。昨日は竜巻の発生までに10秒もかかったけど、今回は1秒で竜巻が形成された。


「……早くなった……それに、いろいろいじったのが効いたかな?僕は吸い寄せられないみたい」


 そう、コストが2になったため、必然的に容量は増えている。本来ならこの術式では魔力は1.3程度しか使わないために残った部分が無駄になるが、その部分を僕自身の安全を守れるように術式を組んで埋めることにした。具体的には、僕は吸い込む対象にはならず、僕が解除の指示を出せばトルネードの時間内でも強制解除でき、そもそも僕には自分のトルネードの影響を受けなくしてみた。


「うわあ……トルネードの中に普通に入っていける……」


 今日は物を置いていないため、周りに吸い上げられるものは無い。だから、中に入って上を見上げても安全なまま。‥‥周りが緑色の竜巻だから凄まじい光景だけど‥‥。


「昨日のような失敗はしない……自分の身を守ることを優先して組んでみても良いかも……」


 あんな恐ろしい目に遭うのは二度とごめんだ。‥‥一度、エアーショットの術式を組みなおした方が良いかな?追尾性や僕を素通りするなどの効果を組んでみて入れても良いかも‥‥。容量は今の技術で組みなおせばかなり余るし‥‥。何かいろいろ組めそうな気がする‥‥。


「うーん……改良が出来る魔法が二つあるね……」


 エアーショットは当然改良できる。エアメイクはその改良で何か変えられるかもしれない。ボイスコレクトは残念ながら無理だ。‥‥エアーショットから改良してみようかな。一度破壊して、再構成しよう。念のために以前の術式はノートにちゃんととってある。それに、これなら失敗するはずがない。あの時は魔力を絞り出して作ったけど、今は魔力をコントロールして作り出せる。それが何よりも大きい違いだ。


 頭の中でエアーショットの改良型の術式を組んでいく。トルネードやボイスコレクトに使っていたため、簡単に組みなおせる。基本構造は前と変わらないが、狙った相手が動いたら追尾して追いかけ、自分に当たりそうになったら魔力に戻って取り込まれる。その機能をつけた。‥‥これで1コスト分全て使ったのか。


「次は、エアメイク。……でもこれ、どこをいじろうにも、不可能だよね」


 そう、エアメイクの術式は容量ギリギリになっていて、その機能はいずれも必須になっている物ばかりだ。物質化や維持などは抜くわけにいかないし、形の変更や再吸収も有用すぎて変えられない。‥‥無理かな。


「……仕方ない。新しい魔法を覚えることと作ることを中心にしよう」


 まずは魔導書を取りに行かないと。そう思って寮に向かった。


ーーーー


「先生?」


 風学科の先生が居た。‥‥何持ってるんだろ?


「あれ、珍しいね。何してるの?」


「それは僕が先生に聞きたいです」


「ああ……これは、上が薬を作れってうるさいから、仕方なく薬学の素材を注文してるの」


「先生が作るんですか?」


「そうだよ。何故かあのおばさんじゃなくて私に回ってきたの」


「……先生、薬学できたんですか?」


 ‥‥信じられないけど。


「そうだよ。一応、風学科の教師だから。担当は風魔法と薬学」


「……じゃあ、何で自発的に教えないんですか?」


 はぐらかされるかもしれないけど、聞いてみたい。何でここまで放任主義なのか。


「……うーん…私が教えたら困る連中がいるんだよね…」


 は?‥‥えっと、どういう意味ですか?


「抽象的過ぎたか……。じゃあ、話を変えようか」


「え?……全然意味が分からないんですが……」


「この学校には、どんな制度があったでしょうか?」


 えっと、確か‥‥。


「確か、最優秀生徒選抜制度ですか?」


「そだよ。じゃあ、その制度で競い合うのは誰でしょうか?」


 ‥‥?生徒じゃないのかな?


「うーん。そこまでか。生徒の上には誰がついているでしょうか?」


「それは先生……!」


 え、ちょっと待って。まさか、どこかの先生がここに圧力をかけてるの…?もしそうなら、思い当たるのは土か光の‥‥!


「その先は言っちゃ駄目。教師の仕事を奪わないようにって暗黙のルールのもとでここは成り立ってるの」


 ‥‥言葉が出ない。自分の生徒を勝たせるためにここまでするのその教師は?


「そうだ。私は今度から実技として薬学を教えようか!名付けて薬調合!さっそく時間割を変えよう!」


「え!?どうしたんですかいきなり!それに時間割を変えるって……!」


 もしクライズ先生の時間割と被ったら‥‥!


「えっと、これね」


 結構強引に渡された。‥‥あれ、この手前の時間にあるのって‥‥


「全て光学科の薬学の後?」


「そだよ?不満?」


「いえ、そんなことは……」


 何で急にやる気になったんだろ?‥‥大丈夫か不安だけど。


「まあまあ、薬学はさっぱり分かんないだろうから」


 何で決めつけるのかな‥‥。そんなに難しいの?


「そんなに薬学が難しいんですか?」


「じゃあ、この本の中身全て暗記できる?」


 そう言って先生が手渡してきたのは、辞書並みに分厚い教科書。そのページ数、約600ページ。重い‥‥。


「……これを全て暗記?」


 600ページ全てに何かの公式や論文が入っている。‥‥さっぱり意味が分からない。


「そうだよ。光学科の薬学は、その本の中身をとにかく暗記しないと駄目。レイには出来る?」


 うっ‥‥。これを全て暗記なんて、そんな無茶な‥‥。どのページもとにかく文字が多い。見たことも聞いたことも無い公式や名前がびっしりと書いてある。‥‥お手上げかも。


「……だよね。さすがのレイも、こんな分厚い教科書を丸暗記は出来ないか……」


 で、でも何とか‥‥!


「もうぶっちゃけて言おっか。その薬学の中身を追うように、実際に実験させてあげる。その本の中の公式や文章は覚えなくていい。とにかく、聞いた話をまとめなさい」


「はい……でも、薬学の教室がどこか……」


「光学科の近くの大教室。確か、253だったね。そこの3列目までにつけたなら、ここでもそれで先生の話の盗み聞きができるよ。一応」


「え!?それって……!?」


「作ったんでしょ?盗聴術式。あの本が無かったからまさかと思ったら、ね」


 いつの間に露見したんだろ‥‥。この人と話したの二回だけなのに‥‥。


「ああ、取り上げないから心配しなくていいよ」


「え、はい……。あの、いつ知ったんですか……?」


 確かに話はしてなかったけど‥‥。


「そりゃあ、この塔の広間と訓練室ならいつでも移動できるし…見ようと思えばすぐに見られるから」


 ‥‥実は、凄かったりするの?この先生‥‥。


「その本はあげる。ノートはあるみたいだし、ここで盗聴できるように仕掛けて、こっちでこっそり受講してみなさい。……君にもあの説法みたいな授業は理解できないと思うけど……」


「そんなに変なんですか?……とにかく、今から仕掛けてきます」


「それじゃ、頑張ってね~」


 なんか気の抜けるような話し方だけど、盗聴術式の事も見抜かれてたし‥‥。まさかトルネードの時も見ていたのかな…?


ーーーー


「ここか……253教室……」


 光学科の教室に来た。幸い今の時間あの教師は居ない。さっさと仕掛けて帰ろう。確か、3列目までなら大丈夫だったっけ‥‥?よし、仕掛けよう。


 覚悟を決めて、前から3列目の真ん中の席に仕込んだ。そうとう見つかりにくくしたし、大丈夫だろう…もう後戻りはできない。必ず、理解する!例え無理難題でも、努力すればきっと‥‥!


「……もう、戻ろう……」


 ここにはもう来ない。後は、自分の部屋の中で受けるだけだ。‥‥上手くいけば。戻って、クライズ先生の授業のための仕掛けを作らないと‥‥‥‥。


ーーーー


「さすがに、ばれる事前提だからってすぐに見つかりたくはないし……」


 前みたいに一瞬でばれたらちょっと嫌だし‥‥。光学科と同じところに仕込んでおこう。こっちは前の方に仕込むけど。なので仕掛けたのは机の中。最前列の真ん中の机の中の左上端だ。すぐに見つかるとは思わないけど、どうだろう?


「……後三日か。どうなるのかな、これからの生活は……」


 うーん‥‥。不安も結構大きいかも‥‥。大丈夫だとは思うけど‥‥。


「……まあ、なるようになるだろうね、きっと」


 ‥‥気楽に考えていいか。風学科の塔に戻ろう。そうだ、先生にあれのことについて聞こう。質問には答えるって言ってたし。


ーーーー


「先生、エアメイクのこれ以上の改良は出来ないですか?」


「ん?急にどうしたの?」


「実は、これだけ改良しようにもどうしようもなくて……」


「ん~……。やっぱり術式自体が魔導書そのままだね~……」


「はい……。改良しようにも、容量一杯に詰め込まれていますし、どうしようも……」


「そりゃあ、私がやった限界だもん。これ以上はコストを上げないとどうしようもないよ」


「え?この本って先生が作ってたんですか?」


「そうだよ?私が魔法の術式を組み立てて、すぐに使えるようにしてあったの。エアメイクが使えないと、いろいろ大変でしょ?」


「……家具がベッド以外ない理由って……」


「コストがかかるって反発されたのと、魔法で作れるってことの証明。調べる行動って大事でしょ?」


「……だから何一つ無かったんですね……」


「うん、ベッド以外は自分で作らないと」


「そういう事は最初に言ってほしかったです……」


 だって、あんなのを見たらどうすればいいのか分からなくなるよ‥‥。


「やっぱり、書いておいたほうがよかった?最初の生徒もそれでクレームを出してきて……」


「そういうことはちゃんと書いておいてください」


「了解。次の生徒にはちゃんと説明するし、張り紙も作る」


 これで次以降は‥‥次があるのか知らないけど、安心かな?


「ああ、そうだ。1つ言わないといけないことがあった」


「へ?」


「トルネード。さすがにあれは危険すぎるよ。いくらなんでも、一分も発動するなんて」


 うっ‥‥。やっぱり気づかれてた‥‥‥‥。


「向上心があるのは素晴らしいこと。でも、無謀なことは駄目」


「……はい。でも、あれから改良したので、もう大丈夫だと思います」


「うん。確かに、唱えたレイは安全だよね。この術式なら、自分にはマーキング効果で当たらないもん」


「はい。だから、もう魔法で自滅することは無いと思います」


「そうだね……自分は攻撃対象から外れてるし、現状ならこれで良いか」


「……?」


 どういうことだろ?別に困らないよね?


「ん~……まだ説明は早いかな。それよりも、そろそろ食事の時間だから、食べに行かない?」


「あ、はい。そういえばもうそんな時間ですね」


 そういえば食事の時間だ。全然気づかなかった。


「……ちゃんと食事の時間には気づかないと駄目だよ?」


「……気をつけます」


ーーーー


「まあ、一人で食べるのもあれだから、ね」


「は、はあ……」


 ‥‥でも、先生と食べるのもどうかと思います。


「何か、気になることとかあったら、答えるよ?」


「そうですね……じゃあ」


 そういえばずっと聞きたいことがあった。魔法の水晶玉の事だ。


「あの水晶玉は、いったいなんなんですか?」


「レイが今も持ってる、それの事だね。でも、少し長くなるよ?魔法やここのシステムを少し説明しないといけないから」


「じゃあ、明日聞いても良いですか?」


「いいよ、明日の朝ご飯を食べた後にでも、説明してあげる」


「ありがとうございます」


「じゃあ、また明日」


「あ、待ってください」


「ん?どうかしたの?」


「初日に酷いこと言いました。ごめんなさい」


「ああ……。まあ、あの時は本気で学びに来るとは思わなかったしね……。気にしてないよ」

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