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初日後半

 気づいたらベッドに寝かされていた。

 魔力もまた回復しているけど……ここはどこ?


「あら、目が覚めたのね」


 白衣の人が話しかけてきた。……ここ、医務室かな? この人は保険医?


「……はい、僕、どうしてこんなところに居るんですか?」


 確かに魔力は切れたけど、でも、あんなところに誰か来るなんて思えないし……。


「その水晶玉に探知と投影の魔法がかかっているのよ。だから、貴方が倒れたらすぐにわかるわ」


「……だから、持って行けと言ってたのかな……」


 確かにこれがあれば、仮に僕が倒れてもすぐに見つけられるだろう。

 持っておくように言われたら離せないし。


「そうよ。……まあ、こういう失敗をする子はいっぱいいるけどね」


「そうなんですか?」


 こんなことになるのは僕だけじゃないんだ。


「ええ。魔力の塊を操作していることになれたら、本来はその魔力を細かくちぎらないとだめなの。そうしないと、体の魔力をすべて使ってしまうから」


 うっ……だから倒れてしまったんだ。


「いい? 魔力の塊を動かして放出できるようになるのは良いけど、その前にちゃんと外に出す魔力の量を調節しないとだめよ」


「……すみません」


 言われたとおりだ。

 体の魔力を全部外に出してしまったら倒れてしまう。それに、危なすぎる。


「あの破壊痕を見たときに理解したわ。この子も体の全ての魔力を出して、オリジナルの魔法を作って撃ったって。その才能は立派だけど、危険なことはしちゃ駄目」


 ……自習しかできないんじゃ、どうしようも無いです。


「まさか風学科だったとはね。皆驚いてたわ。風学科がそんなことは出来ないって思ってるからかしら」


 風学科、そんなに駄目なのかな?


「……他の授業に入るわけには、いかないですよね?」


「そうね~。闇はまだ先生が好意的だし、炎はその場の勢いで入れてくれるかもしれないけど、土と光は駄目ね。雷は……雷魔法が無いと無理だし、氷はそもそも氷の彫刻を作る感じだし。水は……。これも水の魔力が無いと無理だわ」


 闇と炎だけか……。せめて盗聴でもできれば……。

 ん? 盗聴? できないかな?


「何を考えてるのか知らないけど、その前に、魔力を分割したり、きちんと動かさないとだめよ。他のクラスはオリエンテーションでどこかに行ってるから、授業が本格的に始まるのは1週間後。それまで、無茶は駄目」


 う。やっぱり釘を刺されたか。

 まあ、仕方ないけど。

 実際に倒れたし。


「分かりました。魔力を自在に動かせるようになったら、授業を聞く方法を考えます」


「それが一番だわ。約束して、無理はしないって」


「確実には守れませんけど、なるべく守るようにはします」


「……それが妥協点ね……」


「すみません。でも、風学科に入った以上、必ずやらないといけないことなんです」


 なんとか授業を聞くために、考えないと。

 必ず術式を組まないと。でもできれば使わずに済ませたい。


「先生が先生だもんね……。仕方ないか……」


 はい。仕方ないんです。

 じゃあ、僕は部屋に戻ります。ありがとうございました。


ーーーー


「ここが風学科の寮兼図書館か。やっぱり中は広いな……」


 風学科の寮に帰ってきた。いや、初めて来たんだっけ。

 とりあえず、探検を続けるかな。

 道や構造を覚えておかないと。学校だけあって、とにかく広いし。


「これが案内板? 寮に住むのは……やっぱり僕だけ? 生徒は一応僕入れて12人いるんだ……」


 そう。自習生活故、何をしててもいいので大多数の人とは異なり、自主退学も辞退もせず、他のクラスがここに落ちてくるのを待ってる人もいる。

 そういう人たちは、自宅で過ごして他の人が脱落した椅子に座ろうとするらしい。

 そう上手くいくのかは別の話だけど。


 そんなことよりもまずはこの寮の構造を把握しないと。

 一階と二階と三階は寮。四階は倉庫、五階は図書館らしい。

 とりあえずまずは図書館に行こう。

 必要な物が無くても、魔法の使い方が書いてあるものは全部確保しよう。

 ……覚えておいて損は無いだろうし。


「……広いけど、埃が……ケホッ」


 掃除されてもいないのだろう。埃っぽい部屋だった。

 風魔法を使えるようになったら、ここを一度掃除しよう。

 正直、埃まみれなのは酷い。

 でも、ここから本を探さないと。


 えっと、風魔法の本は……。

 入口から見て東の棚。あそこか!

 ……本を借りるために埃の山の中に踏み込むことになった。

 ローブが緑だからまだいいけど、黒だったら最悪だろうな。

 白っぽい埃、かなり目立つもん‥‥。


「ふう……。この辺が全部風魔法の本か、とりあえず、借りていくだけ借りていこう。役に立つかも……」


 風の魔導書を全て借りていくことにした。

 図書館で見るのは埃が凄くて無理だ。外に出よう。

 ……自分の寮ならゆっくり見られるかも。


ーーーー


「ふう。ここが与えられた部屋かな?」


 僕は本を抱えて一階まで降りて、自分の名前が書かれた札のついた部屋に入った。

 どうやら個人寮みたい。……ベッドしかない部屋だけど。


「……これはひどい。机すらないの?」


 そう、机も椅子も無いのだ。あるのはベッドだけ。

 そんな馬鹿な……。結構広い部屋に、置いてあるのはベッド1つだけって……。


「トイレは外にあるし、お風呂も別の場所にあるけど、机も椅子も無いのにどうやって勉強しろというの……」


 まさか、ベッドに寝そべって勉強するのかな?

 それとも、何かの理由があるのかな……?

 とにかく、まずは魔力のコントロールだ!

 早く完成させないと!


 本棚や机は一切無いので、全ての荷物を床に置く。

 ちょっと気が引けるけど、仕方ないか。

 急いで魔力を使えるようにしないと!

 このままじゃ学校生活自体に影響が出てくる!


「絶対に使いこなす……そして、授業も受けないと……」


 たとえそれが少しずるい方法でも、他に手が無いなら仕方ないよね。

 一応、事前に頼みに行くことはするけど。

 そう思っていたら、食事の時間を知らせる鐘がなった。

 ……そういえば昼ごはん食べてなかったな。倒れてしまって食べ損なった。


ーーーー


「さすがに、料理はちゃんとしたものが出るんだね。少しほっとしたよ……」


 食堂で出された今日の夕飯は野菜と肉のスープと大きめのおにぎり3個、そしてコップに入った水。

 そういえば、普段飲める水はどこにあったっけ?

 そう思いながら食堂の片隅でひっそりと食べていたら扉が開いて誰かが入ってきた。

 他のクラスの先生かな? 静かだからここにも話が聞こえてくる。


「……それで、お前の所はどうなのだ?」


「ふん、わしの授業に異を唱えるものなど、生徒とは認めんわ」


「……いい加減、その癖を直したらどうだ?自分の授業に対する誇りを持つのは良いが、それを生徒に押し付けても反発されるだろう」


「……お前こそ、勝手に盗み聞きするものに授業参加の権利を与えるのをどうにかしたらどうだ? あれは明らかな違法行為だぞ?」


「何を言うかと思えば……。別に私が、誰を授業に参加させようと、あいつらには関係ありません。私は、私の授業を受けたいと思うものすべてに授業を受ける権利を与えます」


「ちっ……。やはり平行線か……」


「あなたこそ、いい加減風学科に対する敵対意識を植え付けるのを辞めたらどうですか? そのことによって土学科の団結が強まるのかは定かではありませんが、それは明らかに授業とは関係ないでしょう?」


「ふん……。あやつらなぞ認めん。授業の盗み聞きも許さん。落ちこぼれめが……」


「話をするだけ無駄でしたか……」


 ……うん。土学科は確実に無理だね。

 何をやっても入れてくれそうにない。

 盗み聞きすらさせないって……。

 もし風の精霊でも作って放ってたらどうなるんだろ?


「おいおい、何めんどくさい話してるんだよ! 良いじゃねえか、どっちでも! 飛び入りくらい認めてやろうぜ!」


 また違う先生かな?

 良い人っぽいけど、なんか、暑苦しい雰囲気が……。


「ふん。お前は何も考えてないのだろう……。ならわしに意見するな……」


「私も、彼らを生徒として見るのは反対です。生徒同士の付き合いまで咎めたりはしませんが、大抵ろくなことになりません」


 白いローブ……。光の?

 ……何か見下してるような口調だね。少し嫌な感じ。


「しかし、あなたの所では毎年脱落者が出ます。その際の穴埋めが、風学科でしょう?」


 あれって本当に穴埋めで移動できたんだ。


「あんな落ちこぼれでは授業についてくることなどできませんがね! 仕方ないから、退学勧告として拾ってあげるのです!」


 まあ、そりゃあついていけないだろうけど、随分酷い言い方だね。


「……食事の席なのか、会議の席なのか分からなくなってきたな……。わしは失礼する」


「おいおい、俺まだ食ってねえぞ!」


「お前が食うのが遅いだけだ」


「失礼します」


「おい! 置いていくなー!」


 なんだかよく分からなかったけど、あれがこの学校の先生の何人かだったみたい。

 ……覚えておこう。特に、光や土の先生は厄介そうだから。さて、続きを食べよう。


ーーーー


 今日の生活の中で問題になったのはまず、魔力の分割やコントロールか。

 そして、次に盗み聞きすらできない授業はどうするか。

 最悪、受けなくてもいいかもしれないけど、油断はできない。

 そして、家具をどうするのか。風学科での生活、さっそく問題点がたくさん出てきたな……。

 でも、一つ一つ解決していこう!


「さてと、もう今日は寝よう……」


 あの後部屋に帰ってきてから魔力コントロールの練習を行ってみた。

 ……身体の魔力を二つに分けようとしても、磁石みたいに引き合ってなかなかうまくいかない。

 少しでも油断したら、水が混ざり合うようにくっついて戻ってしまう。

 明日も頑張ってこれを続けよう。必ず成功させ、授業を受ける権利も得る!

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