三十三日目 ミチビ霊薬
今日はミリアと薬学の授業を受ける。そう言えば光学科の生徒はまた何人か入れ替わったのかな?
「レイ。今日の薬は何だと思う?」
「そうだね……この「未来を知ることが出来る秘薬」じゃないかな?」
僕が見たのは「未来視の秘薬」もとい、ミチビ霊薬だ。
「これを飲んだら未来が見える?まさか、そんなはずはないよね」
ミリアも言ってるけど、そんなものはありえない。未来を見る霊薬なんてありえない。
「ねえ。そろそろ授業が始まるよ」
「ああ。そうだった。見ないとね」
さて、授業を聞かないと。
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「それでは、落ちこぼれ学科から引き上げた生徒の紹介ですね……テラ、ドール、デリス、ディールの四名は、各自席に座りなさい」
また引き上げたみたい。それにしても、落ちこぼれ学科って普段一体どこに居るんだろ?
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「レイ?どうしたの?」
「うん。落ちこぼれ学科って一体どこで過ごしてるのかなって」
気になる。この間落としてからまだ数日しか経っていないはずだし。
「ああ……確かに謎だよね。普段どこに居るのか、一回セフィナ先生に聞いてみようか」
「そうだね。そうしてみようか」
本当に、どこで過ごしているんだろう。寮の部屋は全て空室だったし、僕が過ごしていた時も、そういう人は誰も来ていないんだけどな。そう思ってたら授業が進み始めた。
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「さて、それでは今日の内容を始めます。ミチビ霊薬です。これは新暦230年10月14日15時33分33秒33にミチビ教授が世に発表しました。これは、ミチビ教授の作りだした不可思議な物質の成果か、それとも魔力の薬の奇跡か、飲んだ人間に少し先の未来を見せることができるようです。さて、この薬の詳細ですが、これは3つの素材から成り立っております。その三つとは、闇の結晶と光の結晶、幻視の水です。いずれもレアな素材ですが、これらは近年人工的な作成が出来るようになったので値段は高いですが作れるようになりました」
なるほど。さっそく纏めるか。
「闇の結晶は新暦129年2月12日17時21分29にその存在がビスター博士によって発見され、その根源物質を闇の魔力と突き止めるまでに数年の歳月を費やした物です。これを発見した当時は闇の結晶はただの石ころと同じ扱いをされていましたが、ビスター博士の研究によってその価値が認められました。それ以後、闇の結晶は貴重品として狙われ、人々の間で奪い合いになってしまったと言われています。誰でも、貴重な物を独り占めしたくなるので当然ですね」
へえ‥‥。凄く貴重品なんだね。作れるようになったことで価値は下がったみたいだけど。
「光の結晶はおおよそ闇の結晶と同じ状態になっていましたが、こちらは教会が確保しようとしていました。神様は光そのものだと言われていたので、その神様に捧げようとしていたようですね。一般庶民と教会の間で起きた光の結晶の激しい奪い合いは近年までずっと続いたそうです」
神様への捧げものか‥‥。凄いね。そんな物も作れるようになったんだ。
「幻視の水は新暦111年11月11日11時11分11秒11にジュウイチという冒険者が発見したと言われています。ここまで11が続くのは明らかに異常ですが、これは発見した人の名前がジュウイチ。つまり数字の11であることとかけた遊びのようなものと言われています。まあ、これは明らかに嘘だとも言われていますが、ジュウイチと言う冒険者は本当にこれを見つけました。それだけは確かです」
‥‥そんな事をまかり通らせるって‥‥。
「まあ、ここまでの内容をテストします。とりあえず、暗記して書きなさい。後2回言ってあげます」
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「ミリア、纏めは出来たけど見る?」
「うん。見せて」
「はい」
纏め
闇の結晶+光の結晶+幻視の水=ミチビ霊薬
「相変わらず中身は凄く短いね。でも、今回は全て詳細を説明したよね」
ミリアの言うとおり、メリシア先生は詳細を説明した。けど、余計に長くてやりにくいと思う。
「中身は薄いけど、相変わらず長いよ……」
「あはは……これはさすがに長いよね……」
長すぎる。本当に覚えられるのか不思議だよ。
「ねえ、レイ」
「ん?何?」
「明日の事なんだけど、術式の授業、私と組んでくれない?」
「へ?何で?……まさかまた教えさせるの?」
あれはあんまり好きじゃないから嫌なんだけど‥‥。
「ううん。違うよ。今度は、レイが教えられる側だよ」
「は?」
‥‥ありえないでしょ。普通に考えて。大体、ミリアから学べることなんてあるかな?
「レイ。いくらレイでも、知らないことはあると思う。だから、私が教えてあげる」
「は、はあ……」
と言っても、何も学ぶことは無いと思うけどな‥‥。
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リオside
「さあ、今日の試験を開始します。ただちに始めなさい」
さて、面倒な暗記の代わりに正解を出して帰りましょう。さてと‥‥。
リオの書いた答え↓
ミチビ霊薬…ミチビ教授が作った霊薬。飲むと未来の事を少しだけ知ることができる。一種の未来予知を可能にする薬。
闇の結晶…闇の魔力で構成された結晶体。価値が分かってからは非常に希少な素材だが、量産できるようになったため、高価だが入手は出来る。
光の結晶…光の魔力で構成された結晶体。教会が神様への捧げものにするために一般庶民から奪ったため、近年まで凄まじい争奪戦が繰り広げられていた。
幻視の水…ジュウイチなる人物が見つけた特殊な液体。これを入れた入れ物を上から覗き込むと、自身の未来が見えるとも言われている。
「出来ました」
さあ、メリシア先生、どうですか?
「(くっ、どうして完璧なの……!)……合格です」
当然です。こんな物暗記する必要ありません。さて、レイの所に行きましょうか。これから実際に薬を作って飲みましょう。
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レイside
後はセフィナ先生の実験でミチビ霊薬を作るだけだ。さて、頑張ろう。
「じゃあ、今日はミチビ霊薬……未来予知の霊薬を作ってもらいます」
「失礼します。私も参加していいですか?」
リオ、やっぱり早いね。本当にすごく速く試験を終わらせてるんだろうな。
「ええ。じゃあ、改めて説明するね。ミチビ霊薬は飲むとしばらくの間、自分の未来を見せてくれるという効果があります。その中には何が映るのか分からない。でも未来を知ることができればそれだけで凄い効果がある。そう言われて、この素材も一気に取り尽くされたの」
セフィナ先生が秘薬の説明をしている。‥‥これってすごく便利‥‥なのかな?
「ちなみに、今回の実験はもう単純そのものです。闇の結晶と光の結晶を幻視の水の中に入れる。これだけです」
‥‥それだけか。すぐに終わるよね。
「じゃあ、この二つを入れ物の中に入れてください」
渡されたのは二つの石。片方は紫、もう片方は黄色っぽい光を放っている。
「これが闇と光の結晶ですか?」
リオが質問する。初めて見たのかな?
「そうだよ。人工的に作ったものだけど、それでもすごく高級品。40000デル以上の値段だよ」
それが6つに水まで‥‥。一体どれだけかかるのかな?
「先生、一体いくら素材にお金を出しているんですか?」
つい聞いてみたくなるから聞いた。
「えっとね‥‥全部で1000万デル以上かな。もしメリシアのクラスが本当に薬学をやりだしたら、きっと20億以上かかるよ」
「……メリシア先生の授業で薬学をしないのは出来ないのもあるんですか?」
リオの疑問ももっともだ。
「まず、危ないから。そして、金がかかるから。魔力回復薬や回復の霊薬くらいならなんとかなるけど、雷の霊薬やミチビ霊薬はそれだけの人数分揃えられないし、雷の霊薬とかはそもそも危険すぎるから作らせられないの」
「そうだったんですか」
まあ、リオがそんな複雑な表情になるのも無理はないよね。周りの生徒のせいで自分が薬学を出来ないなんて考えてたりしないよね?
「まあ、この話よりもまずは実験だよ。ほら、この二つを水に入れて」
セフィナ先生が強引に話を進めた。とりあえず、この二つの結晶を水に入れてみよう。
「……あ、二つの石がみるみる溶けだして……」
水に入れた光と闇の結晶はみるみる小さくなり、水の中に溶けて行った。
「レイ。それを一度飲んでみたら?」
「分かりました」
‥‥こんなの飲んでも何も見えないと思うけどな‥‥。そう思いながら、出来た薬を飲んだ。
「頭に何か浮かんで……!」
これって‥‥。何‥‥?
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「さあ!いよいよ各学科の対抗試合が始まります!今年最後の大会です!」
これは‥‥どこ?まさか、一年生最後の‥‥?
「レイ。ずっと負けたけど、最後こそ私が勝つわ。あなたに教えてもらった技術、すべて用いて私があんたを下す!」
僕の目の前に現れた女の子は、多分ジェシーだ。成長したのか、昨日見たジェシーよりも背が高い。
「のぞむところだよ、ジェシー。こっちも沢山機械を作った。技術も磨いた。そう簡単に倒せると思わないでね?」
‥‥え?なにこれ?本当に僕、ものすごく墓穴を掘ってしまったの‥‥?あ、場面が‥‥。
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「レイ……君とこうして戦うなんて思わなかったよ」
水学科?‥‥誰かな?
「本当にね。……が……に勝つとは思わなかったよ」
え?何で名前が読み取れないの?知らないから?というか、誰?
「ねえ、レイ。ありがとう」
「どうしたの?」
「レイが僕にあの時教えてくれなかったら、僕は未だに弱いままだったから。だから、ね」
「ああ、その事か。本当にただの気まぐれだよ。君に教えたのは」
‥‥わけがわからない。なにこれ。
「それでも、ね。ありがとう。それじゃ、始めよう」
「君がどれだけ変わったのか、見せてみなよ!……!」
まさか‥‥これって僕の自滅する未来‥‥?また場面が変わる‥‥。
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「ふふ。闇学科は手ごわかったですが、やっぱりあなたには及ばないですね」
この銀髪の女の子は‥‥絶対リオだね。まさか、闇学科、最終的にリオに負けたの?
「最後は君か。アルが来ると思ってたけど、意外だったね」
「私は、あなたに勝つことを諦めたわけではないですよ。必ず、私が決勝戦であなたに勝ちます。そのために、他の学科は皆倒しましたから」
「アルも、……も、……も、倒しちゃったんだ。やっぱり君は強いね」
やっぱり他の二人は分からない。誰?
「レイを超えるためにずっと頑張ってましたからね。今度は、勝ちますよ?」
「どうだろうね?また勝つかもしれないよ?というか、勝つよ」
「ふふ。あなたも次から次へと技術を私に出しました。負ける気はしませんよ?」
やっぱり、リオに頼ることって多いのかな?まあ、取引だからその分見返りもあるだろうけど。
「君に協力した物の割合が明らかに多いね。けど、君から勝手に吸い上げた物も相当多いよ?」
リオとの取引だしね。対価も相当あるだろう。
「……それにしても、あなたは私と同じ道を歩むと思いましたが、変わりましたね。仲間のせいでしょうか?」
あれ?この僕はリオと同じ考えをやめたのかな?
「……かもね。面と向かって言うのは恥ずかしいけど、でも、確かに仲間だと思ってるよ。一年前の僕が聞いたら全否定するね」
‥‥ねえ。僕は一体最終的にどうなったの?まさか、そんな未来ないよね?これって妄想だよね?
「そう言えば、この日を見たんでしたっけ?決勝まで残ることも知っていたんでしょう?」
「そんな事、とっくに忘れたよ。でも、そういう事もあったね。それでは決勝に行っていたけど、そんな未来は信じなかったよ。だって、こんな事になるなんて、全否定したしね」
「この後の未来は見えなかったんでしたっけ?」
「見えなかったね。でも関係ない。僕は必ず勝つから」
「ふふ。今度こそ勝ちます。レイ、覚悟してくださいね!」
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「レイ。大丈夫ですか?」
‥‥リオの声?
「え?……あ、薬が切れたんだね」
ああもう、ありえない未来だよ。そんな事あるわけないじゃない。どうして僕がそんな事‥‥。
「どうでした?」
「余りにありえない未来だった。僕は墓穴を掘りまくるみたい……」
まさか、そんなに沢山の人に教えたの?僕が?リオとアルは違うだろうけど、そんなに沢山の人に技術を教えてしまったの?ありえない。
「それはまた悲惨ですね……気をつけてください」
「……そう言えば、リオは?」
「私も、ありえない未来を見ましたね。恋なんて無駄な事、私がするはずないじゃないですか。全く……そんな馬鹿な未来のために貴重な薬を……」
確かに、リオが恋なんてちょっと想像できない。
「ふーん、二人ともなかなか面白い物を見たんだね」
「先生はこれで何か見えたんですか?」
セフィナ先生が飲んでるのを一瞬だけ見たし。
「ああ、自分の結婚式」
へ?
「……相手、居るんですか?」
「……意外ですね。こんなだらけた先生でも貰いたがる男性ですか……誰なんでしょう」
リオも言うけど、この人をもらう男性か。居るの?
「酷!それが先生に言うセリフ!?」
「……先生をもらってくれる人ですか……想像できません」
ミリアも飲んで効果は出たのかな?
「ミリアはどんなものを見たの?」
「うん。……自分が誰かと一緒に居る光景」
え?
「誰か?」
「うん。誰か。……先生、授業はこれで終わりですよね?」
ミリアの顔が若干赤いのは何でだろ?まあ、関係ないか。
「うん。それじゃ、次の薬学でね」
「はい」
うーん‥‥なんか釈然としない未来視の秘薬だったなあ‥‥。まあ、未来なんていくらでも努力次第で変えられるよね。
ーーーー
「セフィナ先生、少し質問があるんですが」
どうしても気になることがあって、あの後もう一度セフィナ先生を訪ねた。
「ん?何?」
「落ちこぼれ学科の人って、この学校に居るんですか?」
「一応ね。だって、風学科に名簿を置いてあるし、メリシアはすぐに下の方の生徒を捨てるから補充できるようにしてあげないといけないの」
「……どこに居るんですか?」
「ものすごく変な場所だよ。だって、ほとんど物置と一緒だもん。どうして聞いたの?」
「はい……少し気になってました」
「まあ、絶対に会わないよ。大丈夫。建物が違うから」
「分かりました」
建物自体が違うんだ。そりゃあ会わないよね。
ちゃんと中身も作者の頭にあったりするリオとミリアの見た物。
リオの物は続編が出るか無事に一年進んで話が完結すると出るかも?
ミリアの物は書くと確実にノクターン直行なので書けません。
レイは見た未来を避けようとして、逆にこの未来の方に進んでしまいます。




