二十五日目 加速魔法作成
大半のセリフがものすごく読みにくいかもしれませんが、ご了承ください。
昨日リオと授業を受けたときに作ろうと決めた加速魔法。何よりも素早く動けるようになることを目標に作ろうとしたが、それでは飛行魔法の時と同じ結果になるかもしれない。だから、普段の二倍の速さになるように設定して作り上げてみようと思った。
「……よし、コストは6使ったけど術式は完成した。これで、後は使うだけだ……」
昨日作りかけた骨組みをいじって完成した加速魔法「クイック」をさっそく使ってみる。これでうまくいけば僕は早く動けるはず‥‥!
「更なる速さを!クイック!」
‥‥何も起きない。変だな?失敗したのかな?
「……そう上手くは行かないか……はあ、ちょっと散歩でもしよう」
それが妙な時間の始まりだった‥‥。
ーーーー
「さて、食事にしよう……」
食堂に来た。今日の昼食はラーメンだ。‥‥あれ、何でか湯気が上るスピードが遅いような‥‥。それに‥‥。
「皆……何でそんなにのろのろ歩いてるの?」
そう。見ていると、昼食を取りに来た学生は多いが、何故か皆すごくゆっくり歩いている。‥‥今日はスローウォーキングでも流行ってるのかな?
「……まあ、気にしても仕方ないか。食べよう」
ラーメンを食べることにする。しかし、普段なら汁が飛ぶのに今日は全く飛ばないよね。どうしてだろう?普通に食べているつもりなのに。
「……周りが食べる速度、遅!そんなにゆっくり食べてたら冷めるよね……」
周りの学生もラーメンを食べているが、その速度は凄くゆっくりだ。かなり遅い。そんなスピードだと麺が伸びてしまうだろうけどな‥‥。
「ふう。ごちそうさま。……さて、行くか」
とりあえず普通に食べたのでさっさと出て行く。何故かすごく驚いた表情を皆が浮かべていた。‥‥何か変なのかな?僕は普通に食べたのに。その時、他の生徒の声が聞こえた。
「お~い~。見~ろ~よ、あ~い~つ~も~の~す~ご~く~食~べ~る~の~は~や~く~な~い~?」
言うの遅!何!?まさか今日はゆっくり話したりゆっくり動いたりする日なの!?
「は~や~い~よ~ね。あ~ん~な~に~は~や~く~た~べ~た~ら~か~ら~だ~に~よ~く~な~い~よ~ね~」
こっちも!?何これ、何かすごく気持ち悪いよ!さっさと出て行こう!
「は~や~!い~っ~し~ゅ~ん~で~い~っ~て~し~ま~っ~た~!」
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僕は廊下を歩いている。んだけど、皆のろのろ歩いてるな‥‥。通行の邪魔だよ!
「あ~い~つ~な~ん~で~あ~ん~な~に~は~や~く~あ~る~い~て~る~の~?」
まただ。もう、そっちが遅いんだよ。のろのろ歩いて!邪魔だよ!
「はあ、そっちが遅いんでしょ……のろのろ歩いて……」
その呟きが聞かれたらしく、反応が返って来た。
「あ~い~つ~い~う~の~も~は~や~い~な~!」
「ゆ~っ~く~り~い~っ~て~く~れ~な~い~と~き~き~と~り~に~く~い~よ~」
はあ?何言ってるの?むしろ君たちが早く言うべきでしょ?
「そっちは遅すぎて聞き取りにくいよ……もっと速く話してよ……」
ホントにもう。なんの大会をやってるんだよ!のろのろのろのろと!
「え~え~、こ~れ~で~も~ふ~つ~う~の~は~ず~な~の~に~」
はあ、放っておこう。自分がのろのろ言ってるくせに何言ってるんだか。
「訓練でもしようか……」
こんなに皆のろのろしてたら、進むの遅くてイライラしてくるよ‥‥。訓練室で訓練しよう。
ーーーー
「あれ、まだ13時?さっき出て行ったのが12時半だよね?」
おかしいなあ。一体どうなってるんだか。
「よし!訓練だ!昨日貰った的人形に魔法を当ててみよう!」
ここでもまた、妙なことがおきる。
「サンダーボルト!」
サンダーボルトを手から放った。が、明らかに様子が変だ。サンダーボルトは何故か普段よりも遅い。普通なら僕と人形の間に何もないんだから1秒で電撃は届くのに、2秒かかった。‥‥変だな。
「サイクロン!」
サイクロンを発動させた、が、やはり遅い。それでも避けられはしないが、僕の目ではっきりと竜巻のうねりが見える。これも何故か遅くなってしまった。
「うーん……エアメイク!」
エアメイクでボールを作る。が、ボールを蹴飛ばしてみたら明らかに違和感があった。蹴ったのにボールが飛ぶのがゆっくりなのだ。そして、ゆっくり飛んで行った。結局追いつけはしないけど、それでも、普段よりもはるかに遅い。‥‥どうなってしまったんだろ?
「おかしいな……」
周りは皆のろのろしてるし、魔法もなんだか遅い。ボールも何故かゆっくりだ。クイックの効果だとしたら、この魔法は自分以外の速度を下げるのだろうか?それだと、僕の術式の効果を反対にしないと駄目だよね‥‥。そう思ってたら、リオが来た。
「レ~イ~、ま~た~と~り~ひ~き~し~ま~せ~ん~か~?」
って、君も随分ゆっくり喋るねえ‥‥。
「取引?どんなのか気になるけど、リオも随分ゆっくり喋るよね……」
その直後、リオの顔がは?というものになった。
「お~か~し~い~で~す~ね~。わ~た~し~は~い~つ~も~ど~お~り~に~し~ゃ~べ~っ~て~い~ま~す~が~……」
いや、ほんとに遅いよ‥‥。
「な~ら~、これは速いですか?」
あっ、普通の速度だ。
「……まさか、レイの時間だけ早まっていたりするのでは……」
え?だって、皆遅いけど、僕は普通の速さだよ?
「だって、レイの身体が凄い速さで動いているのを見ました。……一度、ここからあそこまで走ってください」
「え?……分かった」
いつも通りに走ってみる。‥‥別にいつもと変わらないじゃん‥‥。リオ、こんなのに意味があるの?
「じゃあ、私が今からそちらに行きますね」
リオが走って‥‥るよね?走ってるのに、随分遅い‥‥。
「ねえ。本当に走ってるように見えたけど、随分遅いよ?」
「でしょうね。あなたの時間が二倍になったせいでしょう。もしもっと強力な物になっていたら、恐ろしいことになりますよ」
‥‥今の100分の1や10000分の1の速さで周りが動く‥‥。想像もしたくないよ、そんな光景‥‥。周りが遅いと避けるの面倒なんだよ‥‥。
「レイの魔法は非常に強力ですね……。いったいどんな方法を使ったんですか?」
うーん、ただで教えるわけには‥‥。だって正真正銘の秘匿技術だし‥‥。
「……ですよね。ところでそれ、解除できますか?」
え?解除?えーっと‥‥。って、あ!解除設定忘れてた!‥‥でも大丈夫!僕にはディスペルがある!
「ディスペル!」
「レ~イ~、解~け~ま~し~た~か~?」
‥‥あれ!?解けない!?‥‥どうして!?
「ディスペル!ディスペル!」
「まさか、解けないんですか……?」
‥‥不味い。ディスペルで解除できないなんて‥‥。
「ち、違うよ!まさか、そんなはずはないって……!」
「やっぱり、解けていないんですね?レイの話し方が非常に速いままです」
「……!」
「セフィナ先生の所に連れて行きます」
そう言うなり、腕を引っ張ってのろのろと移動するリオ。でも、離そうにも力が足りないから掴んだ手が離れてくれない。‥‥僕、身体鍛えないと不味いよね‥‥。
ーーーー
「ん~?ど~う~し~た~の~?」
セフィナ先生の話もゆっくり聞こえる。‥‥治っていないんだ。
「じ~つ~は~、レ~イ~が~な~に~か~の~か~そ~く~ま~ほ~う~を~つ~か~っ~た~ら~し~い~ん~で~す~が~、と~け~な~く~な~っ~て~し~ま~っ~て~……」
「レイ。一体どんな魔法を使ったの?」
早口になってるのか、普通に聞こえる話し方をするセフィナ先生。
「……加速魔法です。自分の速度を2倍にするように設定して、かけました」
「ああ、なるほど。クイックか。じゃあ、レイのディスペルじゃ解けないね」
「どういう事ですか?」
僕のディスペルじゃ解けないって‥‥。
「一応、有利な変化だしね。まってて、今解除してあげる」
そう言うなり、詠唱を始めるセフィナ先生。
「その身に宿りし異常な力、有利不利問わず全て打ち払え。ディスペル」
セフィナ先生の魔法が当たった瞬間、僕の周りの時間が急速に進むように感じられた。
「ふう。どう、これくらいの速度で話しても大丈夫?」
あ、普通の速度に戻ったんだ‥‥。
「はい……戻りました……」
ああ、よかった。戻らなかったらどうしようかと‥‥。
「セフィナ先生、レイがかけた魔法は何だったんですか?」
「ん~……レイ本人が話すのが一番なんだけどね……」
‥‥秘匿技術が‥‥。まあ、術式は絶対に言わないし、多分大丈夫‥‥。
「クイック。自分か、任意の対象の時間を速くするの。正確には、周囲の人の一秒を対象の人だけ任意の何秒かに変える魔法ね。レイは加速魔法も作りたがっていたし、これも外から見れば凄い速さで動いているように見えるわ。つまり、実感こそないけど、加速魔法よ」
「レイ。そんな魔法を作ったんですか?」
そうだよ。でも、だから秘匿にしたかったのに。こんなの周りが作ったら不味いから。
「……実際には、自分は速くなりませんでした。周りが非常に遅くなっていたのはどうしてですか?」
「それは、クイックの効果でレイの2秒を他の人の1秒にしてしまったためね。レイが10秒考えたつもりでも実際には5秒しか経ってない。レイが30秒動いても実際には15秒しか経っていないのよ」
ああ、だから妙に遅いなって思ったんだ。僕は一時間使っていたつもりでも周りには三十分の時間しか流れていないんだ。だから、僕が速いって皆言ってきたんだ。
「まあ、いずれにしろ、クイックは作り直しね。解除できない魔法は駄目。最悪、永遠に解除されないままとかあるから」
「そ、そんなに深刻なんですか!?」
‥‥怖い。クイックが解けないなんて恐ろしすぎる‥‥。
「……レイが作った魔法、ぜひ欲しいですが……」
僕もリオの気持ちは分かる。僕がリオならこれは欲しい。でも、無理。
「……絶対無理。これは秘匿技術にするし、君もそういう物を明け渡したくはないでしょ?」
だって、こんなの周りに使われたら危険だし‥‥。
「……はいはい、そこまで。私は職員会議があるから行かないといけないの。それじゃ、薬学の時にね」
セフィナ先生は行ってしまった。‥‥でも、クイック解除用の魔法も作らないと‥‥。
「それでもクイックの術式を欲しいって言ったらどうします?」
「……あげないよ。これだけは駄目。何を対価に出されても、これだけは駄目だからね」
これを自分だけが持っていることの優位性は、使ってみたらすぐに分かるもん。一方的に相手を叩ければ、絶対に勝てるし、そもそも自分だけ数倍の速さで動ければ大体の攻撃は避けられる。渡すのは絶対に無理だ。
「……はあ。諦めます。クイックは私も喉から手が出るほど欲しいですが、これから先の全ての取引を台無しにしたくないので……」
「取引?何?」
「術式の授業の時にまた組んでください」
「ああ、それならいいよ。というか、下手な人よりよほどいいし」
「ありがとうございます」




