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十六日目 薬学と雷学科

 今日はメリシア先生の薬学と、セフィナ先生の薬学だ。ミリアはまたここでメリシア先生の講義も聞いてみるみたい。


「レイ、お待たせ」


 ミリアが来たので術式を渡す。さて、今日のメリシア先生はどんな長文を言うのかな?


「準備は出来てる?」


「うん。ばっちり」


 ミリアも準備万端みたい。さて、ノートに長文を書く準備をしないと。


「今日は何が出るかな?」


 どんな物を開設するんだろ?


「この雷の霊薬って物かな?」


 教科書には雷の霊薬と言う名前が載っていた。結構ページ数は近いし、それかもしれない。


「かな?・・・楽しみだね」


「うん!・・・あ、始まった!」


 そして、僕たちの耳にメリシア先生の講義が聞こえてきた。


「さて、やる気のない人間は今日、出ていってもらいましょう、と言いたいんですが、それは次回に回します。臨時の合同講義ですしね。今日は、薬品の中身が中身ですから、雷学科にも受講してもらっています」


「雷学科の生徒を教えている、ウォルトです。是非、お見知りおきください。光学科の皆さん」


 え?雷学科との合同だったの?・・・まあ、いいか。


「さて、ウォルト先生と私が講義で取り上げる物質は、雷の権威ヴォルテクス・ライヤーが開発したと言われる」


 また長い長いメリシア演説が始まると思っていた。ここまでは。


「メリシア。ここは僕がやるよ」


「は、はあ・・・。では、ウォルト先生、お願いします・・・」


 ・・・あれ?メリシア演説が来ると思ったら・・・。でも、この人もまた別の意味ですごい人だった。


「ヴォルテクスは優れた発掘者だ。彼が掘り出した遺物、魔法機械は15000を優に超える。その上、ヴォルテクスは魔法薬学においても優秀だった。これから君たちに教える「雷の霊薬」を作れるのは、近年までヴォルテクスただ一人だった。レシピは公開されているのにだ。何故だかわかるかい?」


 この人も何かテンションが変だ。機械マニアか遺物マニアか・・・。


「ヴォルテクスは、その霊薬を作れる方法を残したが、それは非常に難易度の高い物だ。例えるなら、砂漠の真ん中で落ちている魔法機械の破片を探すに等しい。これが出来るヴォルテクスはまさに神様だと思わないかい!?」


「……」


 固まっちゃってるね。ミリアも唖然としてるよ・・・。この人、ウォルト先生はメリシア先生その2なのかな?


「ああ、返事が無いね・・・。脱線してしまったかな?雷の霊薬は、魔法機械にとってはまさに最重要なアイテムなんだ。だって、魔法機械は雷魔法で動かすしね。それを、薬1つで実現できるんだ!最高だと思わないかい!?」


「・・・ウォルト先生。生徒が放心状態になっております。私が引き継ぎますね・・・」


 いや、両方駄目だと思う・・・。この二人は両方変な人だね・・・。


「さて、いい加減に本題に入りましょう。ヴォルテクスは、その特殊な技術で雷の霊薬と言う特殊な薬品を作り上げ、誰でも魔法機械を使えるようにしました。ここまでは良いですね?」


「はい」


 メリシア説法が無い。しかも普通だ。そんな馬鹿な。想定外だよ。


「雷の霊薬の素材は、雷の結晶と風の欠片から作ります。ですが、これらは非常に高価なため、我々ではなかなか手に入れることができません」


「この二つの素材があるのは非常に厄介な場所でね。雷の結晶なんか、文字通り落雷の落ちた場所にしかできない。しかも、天然の落雷だけだ」


「風の欠片は文字通り、風を砕かないと作れません。こんなの、普通の魔道士に出来ますか?」


 講義が普通の物になってるのも驚きだけど、素材の方も普通の物じゃないんだね・・・。そんなのどうやって作るのかな?


「これら二つの物質を掛け合わせるのもまた一苦労だ。下手にくっつけると、爆発してしまうからね」


 うわ!・・・怖!そんなの作りそこなったら大惨事じゃん!


「爆発するんですか!?」


 突然横のミリアが叫んだ。びっくりさせないでよ・・・。気持ちはよく分かるけど・・・。


「ミリア、突然大声で叫ばないで・・・」


「あ、ごめんなさい・・・」


 聞くことに集中しないと。


「爆発して、素材が使えなくなったらまた取り寄せにかなりの資金が必要になる。だから、作れないんだよ」


「ですが、知識として知っておくのは悪いことではないでしょう。さあ、今日の知識を覚えて、次の授業に活かしなさい」


「雷学科には必要なんだけど、取り寄せも簡単には出来ないよ。欠片単品でも1つ50000デル以上するんだ。とてもこんな大金は出せないよ」


 ・・・すごい高級素材だね。本当にセフィナ先生調達できるのかな?


ーーーー


「セフィナ先生、今日の内容はすごく希少な素材を使う物でした。出来るんですか?」


「ん?ああ、雷の結晶と風の欠片?」


 知ってるみたい。でも・・・。


「はい。でも、さすがに、そんな大金は」


「ああ。これとこれ?」


 セフィナ先生が出したのは紫色の雷をかたどったような結晶と、緑色の羽のような欠片であった。


「本当に用意してたんだ・・・」


「驚きで言葉が出ないです・・・」


 ミリアも同じみたい。セフィナ先生は本当にすごい。・・・必要ならなんでも取り揃えてきそうだ。


「まあ、素材ならたくさんあるし、実験しよっか」


 この人は本当に凄まじいです。色々と。


「まあ、聞いたと思うけど、雷の霊薬は非常に作るのが難しいし、失敗すると爆発して怪我をすることもあるの。だから、今回は見せてあげることしか出来ない」


「……」


 目が本気だ。セフィナ先生はこの霊薬の事も作り方の危険性も知っているんだ・・・。


「ヴォルテクスのやり方では、本人しか雷の霊薬を作れなかった。その理由は凄く簡単。雷の魔力で力ずくで暴走を抑え込んで調合して作っていたの。今から私がやるのもそれと同じ方法。風の魔力で暴走を抑え込み、無理やり調合して雷の霊薬を作ります」


 言うと同時に、先生の持っている二つの素材に緑色の光が当てられ、包み込まれる。それらを、強引に手の中でくっつけた。そこから、何か紫色の物と緑色の物があふれ出そうとする。それを先生は無理やり抑え込んで呪文を唱える。こんなことをしないと、この霊薬は作れないんだ・・・・・・。


「レイ、ミリア。私の手から溢れ出そうとしてるこの紫と緑の光。見える?これが爆発を引き起こすの。この二つの素材のエネルギーが混ざり合っても中和できない。風と雷は相反していないから、このエネルギーは消えないまま残るの。そして行き場のないエネルギーが中に戻ろうとして、そこに新しく出てきたエネルギーがぶつかると、その刺激で爆発する」


 僕たちに説明している間もセフィナ先生は全く魔力を緩めない。力ずくとは本当にこのことを言うんだ・・・。


「・・・紫や緑の火花が収まってきたら、もう大丈夫。後は、この手の中の物体を砕いて粉末にする。それで、雷の霊薬の完成よ」


 そう言って先生が見せてくれたのは、紫と緑の混じった結晶体だった。それを先生が砕くと、結晶体だった粉末は紫一色に染まり、そのまま小瓶に収められた。・・・あれが、雷の霊薬・・・。


「ふう。さすがにヴォルテクス公式で作るのは大変ね。これだと薬学と言うより合成だもん。さあ、今日の薬学はこれでおしまい。また3日後ね」


「「はい、ありがとうございました」」


 ・・・先生は本当に疲れたみたい。座り込んでだるそうにしてる。それだけ大変だったんだな・・・。


ーーーー


「・・・凄かったね」


 あんなものを見ることになるなんて。すごくて言葉が出ない。


「うん。あれが本当の薬学・・・」


 ミリアも同じ気持ち見たい。


「いつか、ああいう素材を使った物も作りたいね」


「うん!そのためにも、頑張ろう!」


 ミリアと別れて、僕はのんびり散歩することにした。


ーーーー


 第三者side


「なあ、セフィナ。頼むよ。雷の霊薬を作らせてくれ・・・」


 セフィナに泣きついたのは先ほどヴォルテクスの事を熱く語ったウォルト先生である。どうやら、雷の霊薬を作りたいようである。


「駄目よ。あなたの魔力じゃ、抑え込むことができないもの」


 セフィナにはきっぱりと拒絶される。


「うう・・・。外で素材を買おうにも高すぎるんだ。買えないんだよ、頼むよ・・・」


「・・・だから、無理だって。ウォルトの魔力で、どうやって作る気?」


 今度も拒否される。セフィナは、ウォルトには出来ない上に失敗して危険なことになると分かっているため最初から霊薬作成をさせないのだった。


「・・・うう・・・。分かってはいるんだ。でも、ヴォルテクスのように雷の霊薬を作れれば・・・!」


「雷学科以外にも魔法機械を触らせてあげたいって考えは素晴らしいよ。でもね、出来ないことを無理にやったら痛い目に遭う。ヴォルテクスだって、一度失敗して右目をやられた。推定魔力1200の雷神ヴォルテクスが失敗する可能性のあるものを、魔力700のあなたでどうやって作るのよ?」


 ちなみに、ヴォルテクスが失敗したのは体調が悪い時に無理して作ろうとしたためであるが、その事実はセフィナも知らない。なお、雷の霊薬作成に必要な最低魔力は850であった。


「・・・分かってる。けど、諦められないんだ・・・」


「話は終わり。私は疲れてるの。もう休むから」


「ああ、すまなかったね。でも、また頼みに来るから!何度でもやらせてと頼むよ!」


 そういうと飛び出して行ったウォルト。彼のヴォルテクスへのあこがれは本物であった。ただ、少々行き過ぎているが・・・。


「はあ~、だから駄目だってば。全く・・・」


 疲れた様子のセフィナは、ウォルトが去るとすぐに寝てしまった。


ーーーー


 レイside


「うわっ!?」


「おっと!?」


 寮の方に戻ってきたら突然飛び出してきた人と正面からぶつかった。咄嗟にエアメイクでクッションを作ったから痛みは無いけど・・・。


「な、なんですか?一体・・・」


「ああ!すまない!ヴォルテクスの秘薬を作りたいとセフィナに言ったのだが、断られ続けているんだ・・・」


「はあ・・・。なぜヴォルテクスの秘薬・・・雷の霊薬を?」


 この言葉を、即座に後悔した。目の前の人が突然目の色を輝かせ、話しかけてきたからだ。


「偉大なる雷神ヴォルテクス!その偉大さは伝説としても語り継がれている・・・!」


「は、はあ・・・」


 この時に声に聞き覚えがあることに気づいた。まさか、この人は雷学科のウォルト先生?


「雷神ヴォルテクスは、新暦224年2月18日5時28分12秒にこの世に誕生した。ヴォルテクスは幼少期をここデルテミア大陸の北端のヴォルテクス遺跡、過去のパニーリアと呼ばれていた町で過ごした。その際に生涯の友であるハルキリアと出会い、そのまま二人は意気投合。その生涯を風と雷の力を活かした様々な分野に捧げたんだ!」


 まさか、この人はヴォルテクスマニア?・・・最悪だ。話をぶった切らないと終わらないんじゃ・・・。


「ヴォルテクスとハルキリアの最期には諸説あるが、私はトールの病死説を信じている。あのヴォルテクスが死亡するなど、病以外には考えられない。暗殺しようにも、ヴォルテクスとハルキリアは凄まじい力を持った魔法使いだ。そんなことをする前に殺されているだろう。また、処刑説もあり得ない。あの二人は最後まで英雄として、科学者として慕われていた。まさかその二人を処刑するなどと…。そんなことは無いだろう。それに、老衰説もあり得ない。彼らはまだ40代だった。そんな彼らが、老衰で死ぬなど考えられない。ありえないんだ。それに」


「・・・ウォルト先生。授業に行かなくても良いんですか?」


「ん?・・・あああ!しまったあ!急がねば!今日は魔法機械の実習をするのに!なんという事だ!私が遅れてしまったら、生徒の楽しみが無くなってしまう!」


 そのままウォルト先生は走り去っていった。何か、これも癖のある人だなあ・・・。

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