ホラー映画
そらと中島先生は約束していた、日曜の映画に行った。
「そらちゃん、なんの映画見よっか?」
二人は映画館の看板の前に立ってまよっていた。あいにく、
そらの観たがっていた恋愛映画は一本もなかった。
「恋愛映画ひとつもないね。先生、こんなかで観たい映画ある?」
「先生は別に、なんでも良いよ!そらちゃんの好きなもので。」
「っていっても、なんもないんだよね・・。」
中島先生は、残念そうなそらを見て何をしたら良いか、少し焦った。
「たまにはさ、ホラー系でも面白いんじゃない??先生、久々にホラー系観たいかな!」
とっさに、そらに言ってみた。
「先生が観たいなら別に良いよ!あたしが観たいのなかったしね!」
中島先生はそらの言葉に少しだけ、ホッとした。
二人は観る映画が決まると券を買い、あと15分で始まってしまう映画に、
急いで、飲み物とポップコーンを買い劇場に入った。
いつも行く映画館のためか、どこに車椅子専用の席があるか、ふたりは
迷わずそこの席に座わることができた。
「そらちゃん、怖くても泣かないでね!」
小声で、中島先生がそらにささやいた。
「それは、こっちのセリフです。」
映画が始まった。
ホラー映画といっても、日本のホラーではなく外国のホラーで、
話の中身はそんなに怖くなく、ただサウンドとグロテスクな映像で無理やり
怖くしているような映画だった。そんな映画に、そらは30分もしないうちに
飽きてしまった。
「先生、これあんま怖くないね。」
そう言うと、そらは先生の顔を見た。
中島先生は面白くもない映画を真剣に観ていた。
そらは、しょうがなしにまたスクリーンを観た。
もうすぐ、映画も終盤に入るところになった。
そらはうとうとしながら、観ていた。
うしろの席から、なにやら変な音がしてきた。
「なんか、後ろから変な音しない?」
中島先生はそらに恐る恐るにいった。
そらは先生の言ったことに目が覚めた。
先生は後ろを振り返りなんの音か確かめた。
「なんだった?」
そらが聞くと、先生はあきれた顔でまたスクリーンの方を見た。
「発情期の、バカップルよ。あんま見ないほうがいいよ。」
そらは思わず後ろを見たしまった。
後ろににいたのは、映画館にいるというのにまったく映画を観てなく、
Hまでしそうな、バカップルだった。
そらは見たこともない光景に、ただただ見入ってしまった。
映画の一番怖い場面でスクリーンピッかと光り、
静かな、サウンドの中で女性の叫ぶ声がした。
そのとき、そらはバカップルの彼氏とがっちり目があってしまった。
そらが目があった瞬間、脳裏に、バスケゴールがある公園にいる男の人が出てきた。
紛れもなく、そのバカップルの彼氏は、公園にいる彼だった。
そらは焦って前を見て、さっき見たものを消すかのようにおもいっきり目をつぶった。
そらが目をつぶっているうちに映画が終わってしまった。
「そらちゃん、終わったよ。まぁまぁ、怖かったね。」
「うん・・。」
そらは映画より、あの光景だけが目に焼きついている。
後ろの席にはあのバカップルはいなくなっていた。
映画の帰り、そらは全部中島先生に話した。
「そらちゃんから、そんなこと聞いたの初めてだね。ふぅ〜。
先生、なんかびっくりしすぎて、なんともいえないなぁ。」
「そうだよね!ちょっとだけ気になってた人が、あんな非常識なバカップルの彼氏なんだもん
ね!ほんと笑っちゃうよね・・」
そらは無理やり先生に笑顔をつくった。
中島先生はそらのことが心配になった。
それから、そらはそのあとどう帰ったか覚えてなくて、
気がついたら、自分の部屋にいた。
『今日の一日。
中島先生と映画に行った。残念なことに恋愛映画はやってなくて、しょうがなく
ホラー映画を観た。かなりつまんなかった。
それから、それから・・あの人と偶然にあった。
変な出会い方だった。あの人と、女の人がキスしてるとき、
たまたまあの人が目開けてて、あたしと目があった。
べつにあの人に、嫌な事言われたわけじゃないし、あたしが告って、
フラれたわけじゃないのに、なんか少しテンション下がる。
まぁ、明日になれば元気になるだろう・・。』