悪夢の始まり(1)
ムーンライトノベルズで「奇跡の刻」を連載しております水梨なみ(みなしなみ)です。
あちらもまだ完結しておりませんが、軽めの話を書き始めましたので、こちらにも投稿を開始することにしました。
学園ものは久しぶりですので、楽しんでいただけるかドキドキしておりますが、ぜひお付き合いください。
なお、この小説はBLです。
かなり軽めですが、同性愛苦手な方はご遠慮ください。
プロローグ
人は人生でやたらともてる時機が一度あると何かで読んだことがある。それは、いつだろうとか、どんなものだろうとか僕は楽しみにしていた。
それがこんな形で訪れるなんて、いったい誰が想像しただろう。
僕にとっての人生でただ一度だけは、唐突で、そして普通ではなかった。
悪夢の始まり(1)
「今日からこの学校の一員となった花山恭介君だ。
花山君、挨拶して」
教壇に立った教師の隣に立った僕こと花山恭介は、途中転入すると必ずやらされる自己紹介をまさに体験していた。
「花山です。両親の転勤の都合で、本日、転入してきました。2学期からという中途半端な時期ですが、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。教室では興味津々の男子生徒たちが、こちらを見ている。
敵か味方か、上か下か、男の間の関係はこれだけで決まるといってもいいくらいだ。
背丈も普通、痩せても太ってもいないし、顔はどちらかというと女顔だが、いたって普通だと恭介は自分で思っている。少し長めの黒髪はさらさらで、すっと通った鼻筋、大きな瞳の恭介はどちらかというと綺麗で可愛い部類に属すとは周りの見解だが、本人はあまり認識していない。
しかし、さすがに男子校。男ばっかりだ。恭介は、当たり前のことを再認識する。
「花山君の席は、窓際の後ろから2番目だ」
一つだけ空いている席に、恭介は向かった。
父親の海外赴任が決まって、恭介はせっかく入った高校を替わる羽目になった。
姉さんはもともと東京の大学に通うため一人暮らしだし、恭介も一人で暮らしてもよかったのだが、これには母親が猛反対した。それなら一緒に海外についていくかという話になると今度は父親が反対した。海外赴任先がアルゼンチンの地方都市で、そこに行って帰国子女になってもこの先、日本で働いていくのにメリットなしと考えてのことだという。メリットがないとは思わないが、日本の大学受験の実情を考えれば不利なのは間違いない。
アメリカとかだったら、一緒にって話になったんだろうけど。
ところが、日本に残るとなると、どこで暮らすかが問題になった。
親戚は側にいないし、一人暮らしは絶対にだめと母は主張するしで、父が下した決断は全寮制の高校への編入だった。地方の田舎にある男子校だが、伝統もあるし、学業、スポーツともに名高い高校で、この学校出身の著名人も多いという。
再度の受験はかなりきつかったが、結局、それが実現して恭介はここにいる。