年始祭(3)
トイナウト殿下たくさん話せた。友達になれるかも、、、
「君のお兄様は優しいんだね。」
『父が厳しいので、最低限の礼儀作法は、覚えています。』少し驚いた顔で、天使は話す。
「僕なんかに、あんなに深くお辞儀する人初めて見たから。」あと敬語やめて。と続けるトイナウト殿下は、先程とは打って変わって、年相応というよりもっと幼く見えた。
『トイナウト殿下、僕なんかにって自分を卑下するのは、帝国への侮辱にもなるの。皇族は、国の象徴だから。あと、少しはこっちを見てくれてもいいんじゃなくて?』言い終わる前にグッと顔を掴み、こちらを向かせる。
『こんなに綺麗な顔なのに、もったいないわよ。皇族の象徴の、碧眼が見えないのは、惜しいわ。少なくとも私といるときぐらい、目を見て話しなさい。』照れたような、驚いた顔で私を見上げる。こんなに近いと本当に帝国神話の天使みたい。思わず見惚れてしまう。
「わかった!、わかったから、離して。」パッと手を離す。
『ごめんなさい。あなたって、本当に天使みたいね』
なんて呼んだらいいんだろう。トイナウト様は、他人行儀な気もするし、トイナウト殿下も、敬語と同じで好かれないかも。なんてグルグル考えているとトイナウト殿下が話し出す。
「トイでいいよ。母様がそう呼ぶの。君は、家族になんて呼ばれてる?、、、ごめん嘘はよくないよね。君の名前わからなくて、教えてくれない?」申し訳なさそうに言うなあ。と思う。
『そりゃそうでしょうね、挨拶のときあんなに下を向いてたんだから。今日でよくわかったわね。下を向いていいことなんてない。』兄様との会話のノリでキツく喋ってしまった。兄様なら、レニーは手厳しいなあ、大人になったら父上みたいになるって考えると、ゾッとするぜ。って笑い飛ばしてくれるのに。
「わかってる。だから次に会うときは絶対に下向かない。笑われても、馬鹿にされても、絶対。」
強い言葉、、、でもやっぱりちょっとキツかったみたい。
「そしたら君みたいに話してくれる人いるかなあ」後半になるほど小さくなる声は、本当に純粋で愛らしい。そう思っているとトイが話し出す。
「話が逸れたね。君の名前、教えてくれる?」
『私の名前は、レイニア。レイニア・リヴ・オナメル。オナメル公爵の長女よ。お父様からは、レイニア、お母様からは、レニちゃん、お兄様様からは、レニーと呼ばれているわ。』
「じゃあ、レニちゃ『いやよ』トイがいい終わる前に切る。
「なんで」『聞かないとわからない?私、公爵令嬢よ!』「僕だって皇子だよ!」対抗してきた。言わなくてもわかるでしょう。『こんな赤子に使うような、愛称、、、恥ずかしいでしょ!』「そ、そっかあ。」恥ずかしいことを言ってしまった。もう帰りたい。
「あ、ニアはどう?女の子らしいけど、子どもっぽくないでしょ?」たしかに。それに響きが可愛い。
『じゃあそれで』嬉しそうに笑っているトイをよそに懐中時計を確認する。『子どもは、お開きの時間になってきたわよ』帰りましょう。
そう続けるとトイは、「先に帰ってて。僕といると嫌なこと言われるよ。ニアは友達だから、巻き込みたくない」
『トイは優しいね。だから、、、一緒に行こう!!』戸惑っているトイの手を握って走り出す。「なんで!!」『友達なら嫌なことは、二人で楽しまないと。でしょ?』無邪気に、貴族らしく、淑やかに、トイにエスコートさせる。周りの好奇の目が刺さる。でも関係ない。そう言い切れるほどに楽しい。トイもそうであって欲しいと思った。
こうして、私の人生で1番に楽しかった年始祭の幕は閉じた。