出会い
今日は、お忍びで屋敷の外に出る日。
うちの公爵家は、富、名誉、名声全ての権力がそろっているから、オナメル公爵領は王都と同じぐらい栄えているわ。特に今の時期は、建国祭と年始祭を控えている上、休養の為、噂の第1皇子がオナメル領にきているらしく、形だけの賑わいをみせている。
今日、私が町に来ているのは、新しい魔石を、買うため、錬金術に使うの。ちなみに、魔石とは、微量の魔力を流す事で通常貴族、皇族しか使うことしかできない魔法を誰にでも使うことができるようになる魔道具の材料よ。
いつも使っている魔道具店の前に、ローブを深く被り顔を隠している。体格的に同い年くらいの男の子かしら。貴族の令息かしら?
なんて事を考えていると、目の前の少年が、石につまづいて勢いよく転んだ。驚いて少年に手を差し伸べ、『大丈夫!?』いきなりのことに取り乱してしまった。恥ずかしい。そんな事を考えていたら。「だいじょうぶだから、、、離して」
ハッとして『ごめんなさい』と、手を離す。叫んでしまったせいで、周りの目は、私たちに集中している。とりあえず、『手当してあげるからおいで』そう言って、少年の手を引いた。
噴水広場に着くと
『さっきよりは、人がいなくなったわね。よかった。』そういって少年をベンチに座らせる。
『ヒール』そう唱えながら少年の脚に治癒魔法をかけながら
目を輝かせながらこちらを見ている。
『貴方、どこに住んでいるの?』
少年は、俯きながら黙っている。
『ごめんなさい。送って帰ろうと思っただけよ』
そう言い終わる頃には治療も終わっていて、
「治してくれてありがとう。僕のことは、気にしないで。今日は、用事があるんだ。
お礼はいつか必ずする。またね。」
そう言って走っていってしまった。
その時だった風にローブが揺れ、少しずれたローブの中から見えた、黄金の髪に、碧眼、、、
美しさに目を奪われた。ハッと自分にも用事があったことを思い出す。6時から家族と夕食。
懐中時計を見れば、5時。屋敷から町まで走れば10分程度、しかしそこからお湯浴みし、ドレスに着替え、髪を編む。そうこうしていれば間に合わなくなる。そこから走って帰り、支度をした。
結果からいうと間に合った。
帰って準備が終わり部屋を出ると、そこには、レイド・リヴ・オナメル、兄がいた。
『お兄様?』そう言うと、
「バカバカ、間に合わなかったら俺も怒られるだろ。ほら、いくぞ!」
そう言い私を抱き抱えて、走り出した。周りの使用人達がみんなギョッとした目でこちらを見ている。失礼だと思わないのかしら、綺麗に掃除されている廊下を全力で走っている五つ上とは思えない兄、こんなのでも一応次期当主様なのに。
扉の前に着くと、勢いよくおろされた。
息を切らしている兄の代わりに、
『お父様、レイニアです。』
「入れ」ハイド・リヴ・オナメル、お父様の低い声が響く。
『失礼いたします。』
食事を始めるが誰も話さない。いつものことながら胃がもたれてしまいそうだ。
「レイニア、町に行ったそうだな」私とおなじ冷たい藍色の瞳で見つめられ、ビクッと体が震える。いつもは私の話なんてしないのになんで今日に限って、、、
「何故そんな事を、危ないでしょ」母、レイシア・リヴ・オナメルが心配そうに言う。
だが言い訳は、充分考えた。
『はい、貴族たる者、家門の統治している領地をみておきたくて。』どうだ、乗り心地の悪い兄の腕の中で考えていた、言い訳だ。
「そうか、、、なら良い」この威圧感が帝国にただ一つの公爵家当主様の風格なのかしら。
この地獄を乗り越え、部屋で昼あったことを日記に書きながら考える。黄金の髪に、碧眼間違いなく皇族の特徴。あの天使のような少年が皇子、、、?第一皇子のトイナウト殿下なら年始祭の為オナメル領に来ているはずだ。ならば、あの天使はトイナウト殿下なのかしら。
時計をチラリと見るともう11時結論を急ぐ必要はない。次に皇子に会えるのは、1ヶ月後の年始祭。面会の機会を得ることができるかしら。
年始祭は、暖かい気候の土地の為オナメル領で行われる。
建国祭は、その1ヶ月後に、王宮で行われる。
天使が皇子かどうかなんてその日にわかること今日はいつもより疲れたもう寝よう。