第5話:報酬と、旅立ちの約束
「……本当に助かったよ、旅の若者たち!」
村の長――白髪の温厚そうな老爺が、深々と頭を下げた。
ユウトとレオンは、昨日の魔物討伐の件で村に感謝され、朝から村人たちに囲まれていた。
子どもたちは目を輝かせ、商人たちは果物やパンを手土産に持ってくる。
「本当は報酬を出せればよかったんだが……うちの村は貧しくてな。せめてこれを」
差し出されたのは、一枚の地図と、見慣れない“石”だった。
「これは……?」
「《魔晶石》だ。微量ながら魔力を秘めた鉱石で、魔道具の充電や特殊な武具の材料になる。旅には役立つはずだ」
「ありがとうございます! 大切に使います!」
ユウトは笑顔でそれを受け取り、スマホの【インベントリ】に収納する。
最近気づいたのだが、スマホには“持ち物”を収納できる【倉庫アプリ】のようなものがあり、重たい荷物も簡単に持ち運べた。
「主殿……このように人々と交流し、助け合う姿勢。まさしく真の騎士です」
「いやいや、まだ全然だよ。でも、こうやって旅をしながら……少しずつでも誰かを助けられるなら、悪くないかもって」
レオンの言葉に、ユウトは少し照れくさそうに笑った。
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その日の夕方、村を出ようとするユウトたちの前に、一人の少女が駆け寄ってきた。
「待ってください!」
振り返ると、そこにいたのは村で見かけた薬草採りの少女――エリナだった。
「わたし、あなたに見てほしいものがあるんです!」
エリナは、背負っていた布袋から取り出した。
それは、一冊の古びた“本”。
「うちの家に代々伝わる古文書です。父はこれを“神の遺産”って呼んでて……でも、文字が読めないから、誰にも内容がわからなくて……」
(翻訳……!)
ユウトは、すぐにスマホの【翻訳】機能を起動し、本をスキャンする。
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《神記録・断章》
・世界の中心に“神塔”あり。神々の遺産はそこに集まりしとされる
・いかなる者も、神塔を開くには“鍵”を集めよ
・鍵は世界各地に隠され、試練を越えし者に授けられる
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「……“神塔”……?」
世界のどこかに、神々の遺産が集まる塔がある?
スマホの力が“神明機器”と呼ばれるなら、そこに何か関係しているかもしれない。
「……これって、もっと調べてみる価値がありそうだよね」
「そうだな、主殿。おそらく我々の旅の目的が、一つ、見えてきた」
ユウトとレオンは、顔を見合わせてうなずいた。
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夜、焚き火のそばでユウトはスマホを見つめていた。
《スマホアプリ「クラフト」:ロック中》
《条件:素材を10種類発見することで解除されます》
(これも、少しずつ使える機能が増えていくんだな……)
(スマホの力、使い方次第で本当に世界を変えられるかもしれない……)
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村を出る朝、エリナが小さく手を振った。
「また来てくださいね、旅の人!」
「うん! 絶対また来るよ!」
ユウトの旅は、まだ始まったばかり――
だがその足取りは、確かに“未来”に向かっていた。