第8話 読者に会ったことある?
小説やエッセイに限らずブログなども含めて、読者に会ったことはありますか?
リアルでの知り合いや友人ではなく、インターネット上で作品を読んでくれているだけの『知らない人』という意味ですよ。
読者に会う機会と言ったら、オフ会やコミケといったイベントであったり、SNSで連絡を取り合って直接面会する……でしょうか。その他にはどんなケースがあるか、とても興味があるので是非教えて欲しいです。
いえ、私が実際にそれを試すわけではなく、本当に単なる興味です。悪用したりはしません。誓って(笑)
さて、実は私、読者に会ってしまった事があります。それも二度、それぞれ別の人と。
どちらも十年ちょっと前のことです。当時はモバイル・スペース(モバスペ)という無料ホームページサービスを利用していました。モバスペは2020年にサービスを終了してしまい、現在はモバスペブックというケータイ小説サイトのみが稼働しています。
私にとってはモバスペブックの使い勝手が悪かったので、モバスペのほうで十八禁・パスワード制の小説を公開していました。その読者に会ってしまったわけです。
二度のうちどちらが先だったかは昔のことなので忘れてしまいましたが、ひとつは電車の中でした。
当時の私はパソコンとガラケーを使っていました。小説の執筆だけでなく掲載するホームページ自体を手作りしていたので、作業のほとんどはパソコンです。公開後にアクセス解析サービスを見たり、コメント返しなどはガラケーからもやっていました。
ある日の仕事帰り、電車の中でせっせとコメント返しをしていたときのことです。あまり混んでいない車両でした。一人分くらい離れた隣に座っている乗客が、やたらとこちらを見るんです。
な・ん・と!
その人が手に持っているスマホの画面は!
予想がつきましたよね!
そうです。私が公開している小説のページでした。
パスワード制の二次小説で、オリジナルの壁紙に登場人物ごとにセリフの文字色を変えている独特な画面です。間違いありません。
当時利用していたアクセス解析ではガラケーやスマホの機種と識別番号が表示されていて、まさに『現在訪問中』の欄に表示されている機種をその人は持っていました。まだ自分はガラケーだったため、スマホの大きな画面が羨ましく思えたのを覚えています。
私は思わずガラケーを畳んでしまいました。リアルタイムでコメントを返している現場に遭遇されてしまったわけですよ。それも、当時の推しのコラ画像を添付した決定的瞬間だったのです。
きっとこちらのガラケー画面が丸見えだったに違いありません。とにかく恥ずかしかったですね。「こんな人がこれを書いているのか」と思われたでしょうから。
お互いに声を掛け合うこともなく、特にリアクションもないまま、その人は私より先に電車を降りていきました。その後遭遇することはありませんでした。
もうひとつは、都内のとあるネットカフェでした。たまたま所用で訪れていた施設にそのネットカフェも入っており、長い待ち時間に利用したわけです。
私はパソコン持参だったため、オープンエリアのカウンター席で自分のパソコン利用でした。そこからドリンクバーに行く際に見かけた、同じくオープンエリアのソファ席のパソコン画面が、私の小説の画面だったのです。
忘れもしません。十八禁のページに入るためのパスワードをこっそり書いた隠しページの画面でした。ビジネスマン風で、私より年上のような印象でした。
このときは私が作者とバレなかったので恥ずかしさはなく、嬉しさのほうが大きかったです。
知る人ぞ知る・読みたい人だけが来る。決してアクセス数の多くないホームページだったのに、二度も読者に遭遇するなんて凄い確率ですよね。今でも電車でのことを思い出すと恥ずかしいです。
あれ以降、身バレしても恥ずかしくないものを書こうと決意しました。……したかもしれない。いや、とっくにその決意は忘れて、相変わらず恥ずかしいものを書いています。
身バレ、怖いです。