第14話 AIに校正してもらうと?
校正とは?
推敲とは?
皆さん、正しく理解していますか?
以下、編集業務支援サービス「Edit Partners」サイト(https://www.edit-partners.jp/column)からの引用です。
【校正】
「校正」は書き終わった原稿の表記ミスをチェックしたり制作過程で発生した誤りを正すことを指し、誰が確認するかは問いません。
【推敲】
「推敲」は文章を書く中で執筆者自身が何度も読み返し、チェック・修正することを指しています。執筆者以外がチェックする場合には推敲とは言いません。
うん、何となく知ってた。何となく。
今回は、校正についてちょっと気になったことを取り上げたいと思います。
これまでも「漢字をひらく・とじる」や「送り仮名・読み仮名」などをテーマにこのエッセイを書いてきましたが、書いているうちにはっきりと自覚できたことがあります。私の場合は、作品を公開する前に行う推敲や校正が「チェック(見直し)」のレベルなんですよね。
私は編集のプロではありません。もちろんプロの作家でもありません。学生時代に国語が得意だったわけでもなく、本当にド素人なのです。ですから、見直し程度になってしまうのも当然なのです。
さて、私のようなド素人が小説やエッセイを書いて公開できる投稿サイトは大変有難い存在でして、最近は何とAIが校正してくれる機能が登場しました。
アルファポリスの「小説AI校正」です。詳しくはサイト(https://www.alphapolis.co.jp/pages/ai_emend/about)をご覧いただくのが一番なのですが、ちょっと使ってみたのでその内容をお伝えしようと思います。
●一度に校正できる文字数は500文字~5,000文字
私が現在アルファポリスで連載しているのは日記です。毎日ササっと書いてササっと校正してもらえたら便利だなーなんて思ったのですが、日記だけに100文字あればいいほうです。残念ながら文字数が足りないので校正してもらえませんでした。
使ってみたいなーと思いつつ、先日短編が書けたので、その作品で試してみました。
●慣用句か、そうでないか
「あの町の近くまで行く用事があったので足を延ばしてかつて住んでいた地区へ」
この文章に対しての指摘
『「足を延ばして」は修正の余地があるかもしれません。「足を伸ばして」としてはいかがでしょうか?』
この文章の場合は「足を延ばして」で正しいのですが、ものは試しで「足を伸ばして」に修正してみると「足を延ばして」を提案されました。
しかし、さすがAIですよ。学習しています。この原稿を校正させたところ、次のような指摘に変わりました。
『もしかして「予定にはなかった場所へ行く」という意味でしょうか? もしそうなら「足を延ばして」は修正の余地があるかもしれません。「足を伸ばして」としてはいかがでしょうか?』
この説明なら分かりやすいですね。
「予定にはなかった場所へ行く」→「足を伸ばして」
「更に遠くへ行く」→「足を延ばして」
今回の文章は後者の意味で書いていますので、「延ばして」で合っています。しかし、意味によっては漢字が異なることを教えてくれるので再考のきっかけになります。
●送り仮名
「戸締まり」に対しての指摘
『「戸締まり」は「戸締り」が正しい表記かもしれません。』
「戸締り」に修正してみると、逆に「戸締まり」を提案する指摘をされました。
●言葉遣い
「ご飯が食える」に対しての指摘
『「食える」は少し乱暴な表現かもしれません。「食べられる」の方が自然な表現かもしれません。』
自分としては気にならない言葉遣いであっても、作品のカラーによっては修正したほうが良い場合もありますよね。
●漢字をひらくか、とじるか
「染みこんで」に対しての指摘
『「染みこんで」は「染み込んで」と表記するのが一般的かもしれません。』
「染み込んで」に修正すると逆に「染みこんで」を提案する指摘をされました。
●助詞の使い方
「他県に住む娘さんのところに引っ越した」に対しての指摘
『「ところに」より「ところへ」の方が移動を表す場合には自然な助詞の使い方かもしれません。』
これは、修正しても「ところに」を提案されませんでした。そりゃそうですね。
●形容動詞の選択
「あやふやな記憶である」に対しての指摘
『「あやふや」は「あいまい」の誤字の可能性があります。「あやふや」ではなく「あいまい」が正しい表現かもしれません。』
自分の意図とは関係なく不確かであることを表したいので、今回は「あやふや」が適切なのですが、間違っている可能性を教えてもらえるのは助かります。
●固有名詞の選択
「有線電話など見たこともなく、普通の電話(黒電話)が家にはあった」に対しての指摘
『「有線電話」は一般的な表現ではなく、文脈から考えると「有線放送」の誤りである可能性が高いかもしれません。』
これは惜しい!
昔々、「有線放送電話」というものがあったのですよ。市町村や農協・漁協などが設置する公共放送設備兼電話機です。略して「有線電話」と呼んでいました。ダイヤルがないのっぺりとした電話機で、その有線放送電話網内の相手ならば無料で通話ができました。通常の電電公社(現NTT)の電話番号にかけたい場合は、電話交換手にその旨と相手の電話番号を伝えて繋げてもらいます。
単に「有線放送」としてしまうと、お店などで流れるUSENの音楽放送や、夕方になると玄関に設置したスピーカーから流れる夕焼け小焼けなどのメロディを連想しちゃいませんか?
ここまでほんの一例ですが、思った以上に良かったです。
まず、指摘された項目をクリックするだけで本文を直してくれます。これは有難いですね。
次に、最初の例にある「延ばす」「伸ばす」のようにズバリ正解ではない指摘は、調べたり考え直したりと自分の学びに繋がりました。一律に「これが正解!」と押し付けてこないところがいいです。
そして、AIですから学習し続けて精度が上がり、解説文もより的確になってゆくでしょう。最初に利用してからほんの数日後にこの原稿を校正させてみたところ、随分と解説文が詳しく分かりやすく変わっていましたから。
実際にAI校正を実行する際に表示される注意書きに、このような記述がありました。
『AIには得意分野と苦手分野があり、必ずしも正確な校正結果が出るとは限りません。正誤はご自身でご判断をお願いします。』
結果を鵜呑みにせず、しっかりと自分で確認するためのツールとして使えばとても便利で心強い機能だと思いました。