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97 ボクはアルティス、人間ニャン♡

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

「なんか変だぞ?地上にも魔神の気配がない……どうなってんだ?」

「私も、全く気配を感じませんね」

「アルっ!!良かった無事だったのね?」

 フィオナのこの言葉は、消えたアルティスへの言葉。

 アルティスは、この言葉を悪魔との戦いの事だと思った。

「あっ、フィオナただいま。無事だよ。とりあえず俺たちの完勝。犠牲者ゼロ。

 思ってた以上の結果だよ」

「さっき貴方から聞いたじゃない……その〝とりあえず〝ってどう言う事?」

「さっき俺から聞いた?何それ?変な事言うな?俺は今戻ったばかりだぞ?

 とりあえずってのは、魔神が、魔界にも、この地上にも、どこにも見当たらないんだよ?

 もう、悪魔の軍隊は、やつしか残っていないから、何も出来ないとは思うけど……

 じいちゃんとの約束もあって、どうしても見つけなきゃならない」

「そうなんだ?肝心の魔神が、どうしているのか分からないのは、少し不安よね。

 だから貴方は、消えた後、魔神を探しに行ってたの?」

「消えた後?誰が消えたって言うんだ?なんかさっきから、話が噛み合わないな?」

「貴方、薄くなって消えたじゃない?あ、あれ?ほんとだ……この会話、なんか変よね?」



 〝アルティスよ。話の最中にすまんが……少し話したい事が有る。

 お前達の今の会話にも関係がある。じゃからフィオナと一緒に神界(こっち)に来てくれんか?〝

 〝あれ?じいちゃん?俺も報告に行かなきゃって思ってたところだから……

 フィオナも一緒?〝

 〝うむ、直ぐ来てくれ〝


 神界では、創造神が出迎えてくれていた。後ろに隠れる様に、バツの悪そうな顔をしてシャルがいた。

「どわ〜シャルおじさん?何でここに?あれれ?邪気が……どうなってる?」

「ごめんよアル……随分迷惑かけた様だね……」

「じいちゃんが、シャルおじさんを?」

「いや、そうではない。これから話す事をよく聞くのじゃ………………」



「………………そんな事になってたのか……」

「私達地上のほぼ全員……ほんとだったら死んでたって事ですか?

 それをアルが?……あの時消えたのが、そのアルティス?だからあんな寂しげな顔を?……」

「うむ……そう言う事じゃな……あの時のアルは、

 2度とフィオナに会えない様な……死んでいく様な感覚になったんじゃろう……」

「確かに、自分が消えるって事は、死んでいくのと変わらない気持ちになるかもな……」

「で、じゃ。このままだと、心がモヤモヤしてスッキリせんじゃろ?

 だから消えたアルティスの記憶を、お前に同期させ様と思うんじゃが?」

「そんな事出来るの?」

「うむ。こうなるじゃろうと思ってな、記憶を抜き出して保管しておいたのじゃ」

「あ、そうすれば、消えた俺も、俺と一つになって生き返る……てのも変だけど……

 モヤモヤ感は、消えるよね?出来るならやって」

 かくしてアルティスに、もうひとつの記憶が蘇り、

 魔神が消えた事や、フィオナとの記憶の食い違い等の疑問が解消された。


「じいちゃん。俺、間違った歴史を元に戻しただけだよ?」

「はいはい。それはもう良いと言っておるじゃろ?

 わしとて、あのままじゃったら、こうはしては、おれんかったじゃろうからな……」

「だよね?人生やり直しが出来たとしても、

 100回やり直しても、100回同じ事をしたと思うよ。誰にダメだと言われてもね」

「ねえ、アル?1つ聞きたいんだけど?」

「何?」

「貴方何で、そんな事したの?」

「……そんな事って……こうしなかったらフィオナや皆んな死んでたんだよ?」

「ううん。私の聞きたい事は、時間を戻したって事じゃなくて……」

「ん?何?」

「貴方、自由に時間を移動出来るのだから……ちょちょいと戻って、簡単に阻止出来たんじゃない?」

「「……あ……………………」」

「創造神様も、気付かなかったのですか?」

「フィオナ、それだけ貴方がアルティスから愛されてるって事よ?」

「ミリア姉様、それは?……」

「我を忘れる程、気が動転してた……それ程、愛されてるって事。

 あの時のアルティスは、感情を何処かに置き忘れた様に無表情で、

 私でさえ、背筋が凍りつく程、怖かったわよ?アルのあんな顔初めて見たわ」

「…………アル…………」

 アルティスの胸に顔を埋めて、涙を隠したフィオナだった。


「アルよ、それでなんじゃが……此度の戦いは、異次元の神々にも、ある程度伝わっておる様じゃ。

 時間を操作したお前を、危険視する神もおる様じゃから……

 面倒な事にならんと良いのじゃがな……何が起きるやもしれん。念の為、用心しておくのじゃぞ」

「うん、そうなの?分かった」



 戦いが終わり、落ち着きを取り戻した1ヶ月後……

「なにか用?こんな所に呼び出して……異次元の神々ってこんなにいたんだね?

 多勢で……、そんな怖い顔して、

 威圧しているつもり?凄く感じ悪いよ?」

 100神以上の神々に囲まれ、凄まれるアルティス。やれやれという感じで、口元は笑っている。

 時間を操作して1つの星を蘇らせる。そんな事を許すと、秩序が保たれない……

 異次元の神々の中には、そう考える神が半数近くもいた。

 どこにでもいる様な若者に見えるアルティスに、凄みながら1歩1歩、ゆっくりと詰め寄る神々。


 ズーン ズーン ズウォーン ズウォーン……

 地響きの様な、低く威圧感のある音が響き渡る。

「な、何だこの音は…… それに、この圧倒される神聖力……

 我らの力を遥かに超越しておるとでも言うのか?……これ以上は近寄る事も出来ん……」

 次第に指1本動かす事も出来なくなる異次元の神々。

「?何狼狽(うろた)えてるの?これは俺の心の臓の鼓動だよ……

 あんた達?こんなのに怯えるの?……それでも神?

 それとも俺の力がそこまで強大になってしまったのかな?……」

「何なのだ、その呆れるまでに強大なこの力は?いったいお前は何者なのだ?」

「ん?俺? あんた達が誕生する遥か昔……原初の創造神……

 その神聖力……エーテルを受け継ぐ者……この俺のことを知らないの?…」

「………」「………」「………」「………」「………」「………」


「ボクはアルティス、人間ニャン♡」

 〜end〜

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

これにて、この物語は終了となります。最後までお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました。

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