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90 開戦の準備

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

「う〜ん……大丈夫そうだね?これで完成かな?カイン」

「ええ、やっと完成した様ですね?」

「マイル、この剣、ちょっと振ってみてくんない?」

「あ……ああ……」

「どうした?」

「こ、この人、悪魔って言った?……」

「人の話はよく聞こうな?カーマイルクン。元悪魔、今はただの超イケメン!」

「イケメンは分かるんだけど……」

「俺の眷属にして、右腕のカインさんだ」

「あ……ああ、分かった。……うん……じゃ、振ってみる」


 〝ビュンビュン、ザシュ!〝

「うん、問題ない。とても振りやすい、良い剣だ。

 しかし〝やっと完成した〝って言ってたけど、他の剣と、どこが違うんだ」

「ほらこうやると……」

 アルティスが剣に手をかざすと、精密でなんとも美しい紋様(もんよう)、光の付与魔法が浮かび上がる。

「この前、上級魔族と対峙したんだけどさ〜」

「え?今さら魔族と対峙?魔族はもう、同じ地上の仲間なんじゃないのか?」

「違う違う、過去に行った時の話。5年程前の過去……そこでだよ」

「ああ、過去に行くって言ってたな……本当に行けたんだ?」

「そこに、ユッフィーを襲った上級魔族がいたんだけどさ……

 何者かの命を受けてやってるんだろう……そう思っていたんだ。

 でも、実際は悪魔に取り憑かれた魔族だったんだ。悪魔がユッフィーを襲ってたってわけ。

 対峙したら直ぐ、悪魔が取り憑いているって分かったんだけどさ。

 それでそいつの負のエネルギーを、俺の正のエネルギーで相殺したんだよ。

 その時の爆発で奴も、取り憑いていた悪魔も吹き飛んだ……

 そう思っていたんだけどさ……カインが言うには……」

「はい、悪魔は物理攻撃……つまりその爆発で死ぬ事はございません。

 剣で切れたとしても、直ぐ再生しますでしょ?」

「て、事は、あの時、俺の放った正のエネルギーに、

 何か悪魔を倒す効果が有ったんじゃないかと、

 カインの協力で、正と負のエネルギーを研究してたって訳」

「それがこの剣の付与?じゃあこれは正のエネルギー、光魔法の付与って事か?」

「正解。これならば、悪魔でも切ることが出来るし、再生も防げる」

「正のエネルギーってのが、光魔法みたいなものってのは分かるけど、

 その負のエネルギーってのは何んなんだ?」

「人間、魔族、その他色々なものから漏れ出た負の感情。

 怒り、悲しみ、恨み、妬み…………

 人が内に秘める、良くないものの総称でございます」

「人が内に秘める、その良くないものが、集まって力を持ち、悪魔が誕生したんだと」

「これが有れば、今迄、祈る事位しか出来なかった悪魔退治が、剣で戦う事が出来る様になると?」

「未だ、試みてるってところだけどな。他の武器でも試さなくてはならないし、

 魔法騎士達も戦える様な、術式も作らないと……奴らと戦えないだろ?」




「貴方のフェイト商会、更に大きくなってるみたいだけど、

 その利益を全部、対悪魔の軍隊に使ってるんだって?

 物凄くお金が掛かってるんじゃない?大丈夫なの?フェイト商会は?

 貴方の軍隊って、今どれ位の数になってるの?」

「十万を超えたところ。やっと数だけは悪魔に追いついたかな?」

「え?悪魔ってそんなに居るんだっけ?」

「最下位の悪魔、ガーゴイルってのが滅茶苦茶たくさん居るらしいんだ。

 その最下位の悪魔、ガーゴイルですら、超強くって、

 魔剣でなんとか切ることが出来たとしても直ぐ再生するわで、

 今迄のやり方だと、俺たち軍隊では太刀打ち出来ないらしい」

「え?ちょっと待って?それじゃあどうやって戦うつもりなの?」

「対策は考えてるよ?悪魔にも有効な新しい武器の研究や、魔法式の研究。それは、ほぼ完成。

 ただ、十万の軍隊を維持するには、凄くお金が掛かるんだ。

 うちの商会でもいっぱいいっぱだね」

「各国はお金を出さないの?アル任せって、ちょっと無責任よね?」

「ああ、各国共、その辺は分かっては居るみたいだよ?でも今は迅速に事を進めなきゃじゃない。

 だからうちの商会が、お金出してるんだよ」

「なあアルティス……それなんだけどよ。色んな国からこの際、お前の元に一つの国にしてはと、

 そんな話が出てきてるみたいだぞ?俺の所にも話が来てるぞ?」

「俺は聞いた事ないけど?俺の元って俺が王になって、この世界を一つにまとめるってことか?

 そんな面倒な事やだぞ」

「アルティスよ、実を言うと、わしの所にもその話は来ておるぞ?連合国だの、共和国だのと、言っておるよ」

「へ〜そうなんですか?リヴァルド陛下、ハルステイン帝国で良いじゃないですか。

 アルティス・フェイト・ハルステインそれが今のアルティスの正式な名前でしょ?

 アルティス帝王、カッコいいじゃないか」

「辞めてくれ。バート!やめて?お願いだから、ね?俺から家族団欒の時間を奪わないで?バートランドさん?」

「アルティス、お前、顔が怖い…… 権力には興味ないってか?世界中の人々の願いでもか?」

「アルティスよ、前にも言ったが、こう言う流れになるのは必然じゃよ。

 この世界を1つに纏める……戦いで得るのではなく、人々を助ける事でこれを成す。

 誰も考えすらせんかったろう。

 一つになって悪魔と戦うにはそれが必要かもしれんぞ?

 皆がそれを望んでおる事を忘れるでないぞ」

「リヴァルド父さん。今迄ちゃんと言ってなかったけど、

 奴らは来るのは、もう間もなくだよ?後1年無い。

 国を作ることに費やす時間は無いんだ。

 大丈夫、それをしなくても、今皆んなは一つに纏まりつつあるから」

「1年無い……それは誠か?」

「魔神……奴がそう言ってた訳じゃ無いけど……多分ね?」

「どうしてそう思うのだ?それだと〝1200年厄災〝と被る……まさかそれが目的か?」

「〝1200年厄災〝……言い伝えでは無く、やはり来るんですかね?リヴァルド陛下」

「バートランド殿。我にも分からんよ?アルティスは何か聞いておらんか?」

 〝1200年厄災〝それは1200年毎にやって来ると言い伝えられている厄災。

 1200年に一度、一ヶ月にも渡って天変地異が続くと言われている。

「人族にも魔族にも言い伝えられているんだから、今迄は間違いなく有ったんじゃない?

 そして、次も又来る……そう考えるのが、自然じゃないかな?」

「確かに、天変地異が続けば地上は混乱するだろうが、

 悪魔にとって、そこを狙う意味が、それほど有るのか?」

「天変地異とは直接関係は無いかな。その原因がね……今言えるのはこれだけ、

 まあどうなるか見てみようよ?準備だけは万全にしてだけどね」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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