83 それ、じいちゃんの遺伝でしょ?
神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。
「でね。農民だったけど、その周りに、志の高い優秀な魔族が集まり出して、
1000人程の規模になって、暴虐の限りを尽くしていた、
アルティネの魔王軍との激しい戦いの末、
たった1000人で、魔王軍に勝利したんだって。
最後には、当時12国有った魔族領全てを手中に収め、君臨していた王なんだって。
じいちゃん知ってる?」
「ああ、アシュリー・ランドルフの事じゃな。
とてつもない武力と魔力を兼ね備えた奴じゃった」
「で、じいちゃん達は、そいつをどうしたの?」
「何もせんかった。
世界に悪い影響を与えるのではと、気にはかけておったのじゃが。
悪い奴らどころか、なかなかの人物じゃった。英雄と呼ばれておったぞ。
それに、我らにしても、封印すら難しかったかもしれん。それ程の奴じゃった」
「それ程? で、そいつはどうなったの」
「どうもならん。人族より長生きだとはいえ、魔族とて精々120歳が良いところ。
寿命で死んだよ。
だが、転生は出来ないはずじゃがの?
どこで、どう人が変わるやもしれん。それ程の武力と魔力を兼ね備えた者……少々危険な気がしてな。
アルの様に、邪心のかけらも無い者は、そうはおらんのだ。
まあ、スケベ心はある様じゃがな?ふふふ……」
「それ、じいちゃんの遺伝でしょ?」
「アホ……
奴は、転生できん様にして、魂を隔離しておったはずじゃが?
自らそばにいたいと願うもの1000人程と、魂の里で暮らしておるはずじゃが」
「そんな事出来るの?」
「何せこの世界を作ったのはわしじゃからの。
死後のシステムを作ったのもわし」
「でも、生まれ変わって、街を作って暮らしてるって噂だよ?」
「次元の壁も脆くなっておる様じゃし、何か綻びがあったやもしれんの?」
「俺、会ってみたいな。行ってみようかな〜」
「悪い奴ではないと思うが、くれぐれも気を付けるんじゃぞ。生半可な奴じゃ無いぞ?」
「平気でしょ?変な野心を持っていたら、とっくに行動を起こしてるはずでしょ?
皆んなの話聞いてると、結構良い奴な気がする」
「アルティス。何ニヤニヤ嬉しそうなのだ?」
「え?そう?どんな顔?」
「そんな顔」
(そんなにすごいやつなのか〜 オラ、ワクワクすっぞ)
戦闘民族かよアルティス。
大体の場所を聞いたアルティスは、小さな気配を辿って、
深い深い森の中に大きな街並みを見つけた。
(お〜有った〜ここか〜 深い谷、切り立った山々……
これは、そうそう人が入り込む様な場所じゃないよな?
こんな場所に、こんなに大きな街?
1000人どころじゃないな?ま、行ってみるか)
「おい人間。お前そこで何……って……お前この前の?」
「あ〜教会に居た、おじさん!」
「ひで〜な!俺はまだ20歳だぞ?おじさんはね〜だろ」
「うそ、30歳ぐらいかと……俺と、1歳しか違わないの?」
「ちぇっ、ま〜良く言われるけどよ?それにしてもこの前は……」
「「ありがとな(ね)」」
「ハハハハ、被ったな。あの物資、皆んな大喜びだったぞ!
生活が苦しい奴らばかりだからな。本当に助かったよ。ところで?お前、何でこんな所に居るんだ?」
「うん。ここに伝説の魔王の、生まれ変わりが居るって聞いてさ。
会ってみたくて来たんだ」
「そ〜か……じゃ、もう帰んな」
「え〜〜?何で〜〜?」
「何でって、もう目的は果たしただろ」
「どゆ事…………あ〜〜もしや?あんたがその生まれ変わり〜〜?」
「察しが良くて助かるぜ」
「そっか〜そっか〜分かった!じゃ、またいつか」
「おいおい、冗談だよ。ちょっと寄ってけよ?飯でもどうだ?アルティス」
「え?何で俺の名を?」
「調べたさ。言ったろ?孤児院に厄介事持ち込めねえって。
ベルゼ……いや、今はカインだっけ?奴にも聞いたぜ?
あいつ、お前の眷属になったんだって?
あの野郎、とんでもなく強くなってやがった。
5000年前にも手こずったってのに、とんでもねえぜ」
「カインの事、知ってるの?」
「我が君を呼び捨てとは、お仕置きが必要な様ですね?」
「あっ、カイン、ロト、来たの?良いんだよ?呼び捨てで。
そうじゃないと、何か話しづらいんだよ」
「アルティスって呼んで良いのか?」
「勿論!カインにもそう呼んでって言ってるんだけど……
まあ、カインの場合、キャラに合ってるから、今のままでも良いかなって……
カインには、いつもめちゃくちゃ助けて貰ってるんだよ?俺の両腕なんだ」
「両腕?……右腕じゃないのか?」
「両腕!そのぐらい助けて貰ってるの。こんな風に話されてるからあれだけど、
カインは俺の兄貴みたいって思っちゃって、つい、色々頼っちゃうんだ」
「我が君……」
「アルティス様、私は?……」
「あっ、ごめん。じゃ、カインが右腕、ロトが左手の人差し指!」
「ゆ……指でございますか……」
「うそうそ、左腕!」
「……アルティス様……」
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