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82 伝説の魔王

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

 アルティスは、フェイトの執務の館前の広場に、

 満足に食事が出来ない貧困の人達の為に、

 誰がいつ来ても自由に食べられるフードヤードを作っていた。

 今日はそこで、バートランドと昼食を共にしている。

 バートランドは、しょっちゅう、ここに入り浸っている。

 この2人、姿形は違えども、本当の兄弟の様に仲が良い。

 テーブルの上にはバートランドが持ってきた、カスタマイン魔国特産のフルーツで溢れている。


「魔王って言ったって、いわば俺たちは、魔国の王ってだけだろ?

 まあ、皆んなそれぞれ、魔王と呼ばれるのに相応しい力は、

 継承して、持ってはいるんだが。

 5000年前に実在した、その伝説の魔王ってのは違うんだよ。

 農民だったにも(かか)わらず、魔国全てを手中に収め、君臨していた王なんだ」

「へ〜そんな奴が転生して、街を作って、今世(こんせい)は静かに暮らしているって言うのか?」

「ああ、伝説の魔王の生まれ故郷、魔国の一つ、アルティネの深い森。

 魔族ですら、普段は足を踏み入れる事の無いその最深に、

 その街が有るって、もっぱらの噂だよ。

 未だに、人族を敵対視している連中が、伝説の魔王と手を組めないかと、

 その街を懸命に探しているらしい」

「アルティネって一度行ったことあるな……」

「初耳だぞ?何でアルティネに行ったんだ?」

「あそこの魔王から、ど〜しても渡したいものが有るっ言われてさ」

「渡したいものが?それって何だったんだ?」

「ただの、貴金属とか食料品とか」

「それ、ただの貢物(みつぎもの)じゃねえか?どうしたんだそれ?」

「もちろん断ったよ。俺全部分かっちゃうだろ?下心も、分かっちゃうし……

 満面の笑みなんだけどさ〜張り付いた様な笑顔が気持ち悪くて……」

「ああ、あの魔王だからな。世あたりだけは上手くてな……まあ、そんなの、良かったんじゃねえ?

 そんなの貰ったら後から、何すり言ってくるか分かんね〜からな」

「あ〜……それがさ、結局貰ったんだよ。ど〜してもって、しつこくて、めんどくさくなってさ」

「あらら……その後何か言ってきたりしてないか?」

「うん、平気。だってそれアルティネで、困ってる人に全部配っちゃったもん。

 気配を消して俺を見張ってた奴らが居たから、全部見てたはず……

 だから、その後、色々言いにくくなっちゃったんじゃない?

 貢ぎ物?それ大量だったから、もう大変でさ〜」



「なあ、お兄ちゃん。何ここで、ウロウロしてるんだ?ここは孤児院なんだけど何か用か?

 お兄ちゃん人族だろ?ここで、人を見るのも珍しいからな」


 2m近く有りそうな長身で、均整のとれた体。

 顔も男らしくしまった美形の30歳ぐらいの男が、

 アルティスに声をかけてきた。

「うん、食べ物とか沢山貰ったから、良かったら貰ってもらおうかと思って」

「ほ〜気前が良いんだな?ここは俺の知り合いがやってる院なんだ、俺が渡しとくぜ」

「あのさ?あんたの後ろの木陰に20人位、人が居るけど、仲間?」

「ほ〜驚いたな〜?察知出来るのか?確かにあいつらは俺の仲間だ。

 でも心配いらねえぞ。あいつら皆んな悪い奴じゃねえよ?俺は嘘はつかねえぜ?」

「うん、分かるよ?あんたは悪い奴じゃないよ?

 そうじゃなくてさ、これ見てよ」

 異空間から大量の物資を出して見せるアルティス。

「何だこの量?ここのガキどもじゃ食いけれねえぞ?」

「でしょ?他にも必要な人がいたら、あげたいんだけど、

 この量だし、どこに持ってったら良いのかも……

 何か貴金属とかも有るんだよね。後ろの人達にも手伝ってもらえないかな?」

「お前、これ、盗んだとかじゃないだろな?」

「ハハハ。俺、泥棒さんに見える?」

「見えねえけど……ほら、義賊(ぎぞく)気取って……とか、考えられなくもねえだろ?

 ここの奴らに、厄介事降りかかったら不味いからな?」

「大丈夫だよ?さっき城に招待されて、これ全部そん時貰った物。

 何か後が怖いから、この国に全部置いて帰ろうと思ってさ」

「城で?いやいや、詳しい事は聞かない事にしとくわ。

 あんまり関わらない方が良さそうだからな。

 これを、困ってる奴らに配る手伝い……ってのは構わねえけど、

 お前、初対面の俺の事、そんなに信用して良いのか?」

「さっきも言ったでしょ?あんたが悪い奴じゃないって事は分かるよ?

 その人の本性とか肌で感じて分かっちゃうんだよ?俺。

 便利でしょ?だからお願いできるかな?この貴金属も一緒に」

 更に高価そうな物を大量に出すアルティス。

「おいおい……何だこりゃ?いったい幾らになるだこれ?凄えな?

 分かったよ。信用してくれるっていうなら、

 困ってる奴らに、最適な配り方を考えるよ。俺達に任せな」

「うん。任せた。配るのに掛かる費用は、これを使って構わないからね」

「いや、要らねえ。縁もゆかりも無い、人族のお前がそこまでやってくれるっていうなら、

 俺もそれに応えなきゃな」



「そんな感じて、全部配ってきちゃった。でも……あそこで、伝説の魔王?

 そんな大物の気配は感じなかったけどな〜」

「お前の気配感知は、超高性能だからな?

 それに引っ掛からないって事は、ただの噂なのかもな?」

「そうとも限らない……それ程の奴だったら、

 気配を消すのも、低く見せるのも出来るかもしれない。

 まあ何か分かったら教えてよ。興味あるからさ」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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