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79 ちょ〜かっけ〜!

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

 アルティス達の住まうこの星が、創造神により創造されるよりも、遥か昔の事だ。

 ここから遥か遠い所で、その星を創造した創造神は、そこに原始的な生命を誕生させる。

 長い年月をかけ、進化により哺乳類が誕生し、動物が繁栄するまでになったその星に、異変が起きる。


 深海に眠っていた、初期の生命細胞が海上に浮かび上がり、水辺まで辿り着くと、

 短い時間での環境の激変からか、突然変異を起こし、周りの生命体を捕食していった。

 虫の幼虫の様な姿をしたその生命体が、捕食し続け、山より大きくなる迄に、そう時間を要さなかった。

 やがてそれは冬眠したかの様に動きを止める。

 それから100年。土色に変色し、上からは風で土が積もり、唯の山の様に見えていた。


 〝ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ〜〜〝

 その山が割れ、中から、地響きと共に100mも有ろうかという怪物が這い出て来た。

 元の大きさに比べて、小さくなった様にも思えるが、

 全てが凝縮された様に、その体には力が(みなぎ)っていた。

 全体的には四つ足のドラゴンの様なシルエットではあるが、長い首とその先の頭は9頭になっている。

 それが又、捕食を始める。いつしか、その星から小動物以上の生命体が、いなくなってしまった。


 〝グギャァァァァァ〜〜〝

 怪物が雄叫びを上げると、背中が盛り上がってくる。

 〝ズズズズ……〝

 その盛り上がりはやがて、翼に変わる。


「不味く無いですか?創造神様」

「ちとまずいの」

「あれに、罪は無いのかもしれませんが、このままでは……」

「他の星にも、影響を与えそうじゃな?」

 この怪物に罪はない。食欲は本能であるからだ。

 そう思い、これ迄は、どうしたものかと思案はするものの見守ってきた。


「仕方ないのう。このまま放っておくわけにはいくまい。お前達、頼めるか?」

「お任せ下さい。戦かえる我ら4神で討伐して参ります」

 そう言って、魔法神、大地神、武神、剣神の4神は怪物の元に向かうのだが、

 少し判断が遅かった。ここまでの怪物になる前に、対処するべきだったのだ。

 大地神が、大地を動かし怪物の足の動きを止める。

 剣神が首を落としに切り掛かるが、その(うろこ)は、傷一つ付かない。

 武神が渾身の力で打つも、びくともしない。

 魔法神が極大魔法を撃っても、全て弾き返される。

 成すすべがなかった。


「仕方ない、12神とわしとで、全ての神聖力をもって、封印するしかあるまい」

 魔法陣の刻まれた球型の障壁が12()に怪物を取り囲む。

 最後に創造神の障壁を被せ、全員で縮小させていく。

 形がわからなくなるまで縮め、10m程の球にまで凝縮させる。

 それまで抵抗していた怪物が、やっと動きを止めた。それを確認すると、

 何者も触れる事が出来ない様に、地中深く、埋めて封印するのだった。



 〝それがこれ? あ、確かに黒い雲の中に18個の目が光ってるね〝

「カイン、ロト、この雲の中にはドラゴンに似た、9(かしら)の怪物が居るらしい。

 そして獣人族の生命力を吸っている様だ」

「本当でございますか?何故それを?」

「今、創造神のじいちゃんから聞いた。タマ達が危ない」

「生命力が消え入りそうな者もいる様です。急ぎましょう。ですがそんな名前でございました?」

「雲の下に結界を張るから、カイン達は中で救護してくれる?」


 アルティスは、両手を広げ目を(つぶ)り、静かに息を吹いた。

 すると足元に、次々と青白く光る魔法陣が数え切れない程、浮かび上がる。

 小さな島国の隅々にまで、何十万という魔方陣が広がり、

 そこから空に向かって、青白く光る結界が浮かび上がる。

 その様は美しく、幻想的だった。


「先ずは姿を現してもらおうか?」

 先ほどの広げた腕の拳を握り、目を見開くと、今度は風がわき起こる。

 やがてそれは大きな渦となり、更に広がり巨大な竜巻が数多く出来、

 黒い雲を勢いよく吹き飛ばした。

 雲がはれると中から黄金に光り輝く、ドラゴンに似た、9(かしら)の怪物が顕現する。

「ちょ……」

「ちょ?」

「ちょ〜かっけ〜!それに綺麗!」

「あの……アルティス様?」

「ねえねえ?こいつキメラに似てない? あ、ごめん。2人はもう中に入ってくれる?」


 アルティスはかっこいいと言うが、100mの巨体に、うねうねと蛇の様に動く9つの首と頭は、

息を呑む程の迫力が有り、不気味な怪物だった。

 その一番上の一回り大きな頭の目が、アルティスに照準を合わせた。

 アルティスを敵認定した様だ。


 その口が光ったかと思うと、アルティスに向けて放射熱線をはいた。

 〝ズッギャ〜〜〜〜ン!〝

 〝バシッ!〝

 片手で楽々とそれを弾き飛ばすアルティス。

「アッチチッ!」

 手が熱い。弾き飛ばされた熱線が、月を掠めると端が欠けている。

 軽くあしらったアルティスだが、その放射熱線の威力は、

 月の形を変えてしまう程のとてつもない物だった。


「やばっ!あんなのが地上に堕ちたら大被害を負うぞ」

 だが、怪物は容赦なく次から次へと9つの頭から放射熱線をはきだす。

 〝バシッ!バシッ!バシッ!!〝

 一方アルティスは、地上を守りながらで防戦一方となってしまう。

 放射熱線を空へ空へと弾き飛ばす。


「不味く無いですか?アルティス様。押されてますよ?」

「問題ありません。上空をご覧なさい」

 怪物の上空にはブラックホールの様な穴が出来つつあった。

「あれはアルティス様が?」

「異空間への入り口でしょうね。戦いながらあれを作る……余裕なのでは?

 あの異空間で、戦うおつもりなのでしょう」


「よっしゃ〜行け〜!」

 アルティスはキメラ(もど)きの胸元に滑り込み、大きな魔法陣を(えが)きぶつけた。

 キメラ(もど)きは、穴に向かって弾き飛ばされる。

 追従する様に穴に飛び込むアルティス。穴はす〜っと消えた。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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