75 龍王の勾玉
神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。
「暴れているだと? な、何と!瘴気龍になってしまったのか?」
「はい、その様で……」
「しかし、その様な兆候は無かった筈。この辺りに、その様な濃い瘴気も無かったのでは?」
「裏の森に、我々成龍でもきつい程の瘴気が、湧き出ておりました」
「いつの間にそんなものが……皆を集めよ!今いる全員で浄化するのだ!」
〝グギャア〜〜〜〜〜 〝
青龍の子の周りには、雷の様な電気が飛び交っている。近づく事もままならない。
「良いか?くれぐれも子供を傷つけない様にな……」
〝ドッス〜ン!〝
そう言っている間に、青龍の子は、自分の瘴気に耐えられず力尽きたてしまった。
「何と……間に合わなかったか……可哀想に……」
「龍王様!大変です!龍王様の洞窟が崩れてしまっております!直ぐお戻りを」
「む……あの雷にでもやられたか?我が子は……卵は無事か?」
「分かりません。入り口が塞がっております」
「急ぎ戻って、掘り起こさねば、手の空いている者は、手伝ってくれ」
「龍王様、あそこです!あ、卵は無事な様です」
「お〜確かに!ヒビも入っておらんな?この子に何かあったら、我が妻に何と言って良いか……」
その夜。
「龍王様……如何されました?」
「おお、青龍。子供の事、残念で有ったな……何も出来ず申し訳なかった」
「とんでもありません……お手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした。
我が子の為に、そんな辛そうな、お顔を?」
「もちろんそれもある……それもあるのだが……」
「あ、あの?」
「動かんのだよ」
「動かない?ん? ま、まさか?」
「間も無く孵化……元気に卵の中で動いておったのだが……耳を近づけても音もせん……」
「も、申し訳ありません!我が子が……」
「いや、誰にも責任はない……」
3日経ち、孵化の予定日になっても、生まれて来るどころか音すらしない。
「この子を妻の墓に埋葬して来る……」
「龍王様、お戻りでしたか?」
〝グゥオオオオオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〝
「り、龍王様……」
「すまん。取り乱した」
「龍王様それは……」
手に半円球の石が、21個握られていた。
「穴を掘っていて、見つけたのだよ。手にした瞬間、何をしたら良いか分かった。
今からこれに、我が生命と魔力を込める。それを今から生まれてくる子供達に、守りとして付けるのだ。
瘴気から守ってくれるに違いない」
「お待ち下さい!今、生命と?」
「うむ、我ももう思い残す事は何も無い。未来の子供達のために……」
「そうやって出来たのがこの勾玉だと言い伝えられておる。ん?どうしたアルティス?お前涙が……そうか、優しい子じゃな?」
「そんな凄い物なら、浄化出来るかも?だね。でもそんな大事な物……」
「構わんぞアルティス。我が種族の為に言ってくれてる事。協力は惜しまない。我も行ってみよう」
「瘴気龍?これが……昔は、ときより出てしまったと聞くが、我は初めて見る。凄まじい瘴気よ」
「じゃあ、じいちゃん。借りるよ」
「眉間の所に当ててみるが良い」
〝ゴオオオオォ〜〜〝
地響きの様な音があたりに響く。
〝ビキビキッビキビキ!〝
稲妻が駆け巡る。瘴気龍の表面に透明で薄紫の膜が浮き出てヒビが入っていく。
「今じやアルティス!ピリフィケーションじゃ!」
「ピリフィケ〜〜ション!」
バキバキと音を立てて膜が割れ吹き飛ぶ。そして眩い光に包まれる瘴気龍。
輝きが薄れると、そこには金属の様に七色に光を反射する龍が現れた」
「お、お主その姿……一万年前と言ったかアルティス?これは伝説の龍王の子では無いか?」
「き、綺麗な龍!」
フィオナが目をバチクリさせている。
沼も透明で澄んだ水になっていた。龍と一緒に浄化されたのだ。
「何と!瘴気が消えたのか?体が軽い、気持ちが良い。ありがとうありがとう」
「お前、もうここから出れるだろう?外の世界を見てみろよ?」
「ん?外に出て良いのか?しかしそこの扉、大きいとは言えこの身体……どうする?」
「人化しろよ?出来るだろ?」
「いや、そんな事やった事ないぞ?」
「わしが教えてやろう」
「ま、眩しいな!これが日の光か?外はこんなにも色が沢山で、綺麗だったのだな?」
「お前、裸で、何喋ってんの?フィオナが目のやり場に困ってるだろ?」
「おお、何か着なければならないのか?面倒な物だな?」
「取り敢えず、これやるから着なよ」
異空間から服を出す。
「で、お前これからどうすんの?良かったら俺んとこ来る?部屋まだ余ってるし。
この後大きな戦いが待ってるんだ。手伝ってくれよ?」
「ああ、勿論何でもするぞ! でもお前の所に?良いのか?」
「アルティス。待つのじゃ。こやつは龍王の子だと思うんじゃ?」
「あの昔の物語の?あっ!一万年前!こいつの元の化石も一万年前……」
「この様な色の龍は、後にも前にも龍王様だけじゃ」
「龍王って何だ?」
「うん、後で話して聞かせよう。それとな?おぬし我らの子にならんか?我らには子が恵まれんでな?
どうせなら、少しこの世界の事を覚えてから、アルティスの下に行っても良いのではないか?」
「貴方の子に?勿論。この世界の事を何も知らず、天涯孤独。願ってもない事ですが……」
「アルティスもそれで良いじゃろ?婆さんも喜ぶに決まっておる」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




