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73 瘴気龍

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

「どうしたのだ?アルティス」

「あっ、陛下。何でも、西の魔物の森の洞窟から、ものすごい瘴気が出ているらしいです。

 逃げ惑う魔物達が、今にも障壁を破り、西の街に出没するのではないかと報告が。

 我が領地も近いので、見て参ります。午後の会議は欠席させて頂いて宜しいでしょうか?」

「うむ、あい分かった。ところでアルティスは、何でそんなに話し方が硬い?」

「公式の場ですから」

「そこまででなくて良いじゃろ?お前の事は皆んなよく理解しているのだから。

 そういうのは、外交の時とかだけで良いよ」

「そ?」

「してその後ろの者は?」

「フィオナが同行するって聞かないんだよ?リヴァルド父さんからも一言言ってやってよ」

「は〜〜 又か?エーテルを宿してから、直ぐ最前線に行きたがる。

 力を得たからと言っても、限度があるだろうに?」

「私は夫の力になりたいだけよ?お父様?」

「ぅそつけ……」

「小声で何か言いました?貴方?」

「言ってない……ストレス発散したいからとか……言ってない」

「今夜はお預けね?」

「え?マジ?」

「お前達毎晩か?」

「さっ、行くわよ……アルッ」

「え?マジ?」



「濃過ぎね?ここの瘴気。フィオナに、瘴気を防ぐバリア貼るよ?」

「大丈夫よ私は。エーテルが守ってくれるもの」

「そう?大丈夫なら良いんだけど?苦しくなったら直ぐ言うんだぞ?

 それと洞窟の中では大きな攻撃魔法は禁止な」

「え〜 貴方に教わってから、ずっと練習して、凄く上達したのに……

 エーテルのおかげで、魔力も底なし……ってほどでも無いけど爆上がりよ?」

「洞窟で大きなのやったら、壁、天井が崩れて危ないだろ?」

「あ〜 了解しましたご主人様」

「よし!行くぞ!ポチッ」

「う〜〜ワンッ!」

「この洞窟の中に瘴気を放つ魔物が?」

「それと逃げ遅れて、瘴気にやられて正気を失った小物がうじゃうじゃ。

 小物とは言え油断すると、我らに勝機は無いぞ?」

「瘴気に、正気に、勝機?何か余裕ね?貴方こそ油断しないでよね?」

 〝シャンシャンシュシュ……シャキンシャキン、シャンシャン〝

「ちょっと〜アルティス〜!貴方ばっかり攻撃しないでよ〜私にもやらせてってば〜」

 〝シャンシャンシュシュ……シャキンシャキン、シャンシャン〝

「あ〜も〜 目で追えないじゃ無い。音しか聞こえないし」

 無言で魔物を倒しながらどんどん進むアルティス。魔物の落とす魔石だけが残る。

「ア〜ル〜ッ!攻撃魔法、ド〜ンするわよ〜」

「お預け!この先に、広い場所あるから、そこまで待て!はい、お手っ!」

「も〜〜」

「犬じゃなくて、牛かフィオナは?ほらここ。魔物うじゃうじゃ居るじゃん。お好きにどうぞ〜。俺は一休みしてるよ?」

「よっしゃ〜 指にマナを集めて〜〜 えい、えい、えい〜 そらそらそら!」

「あいつメチャストレス溜まってない?何で? っと、あっぶね〜 めちゃくちゃするな〜?バリア貼っとこ」

 ところ構わず、攻撃を放つフィオナ。アルティスにも、魔法が飛んできていた。


「ふ〜〜スキリした」

「何がお前をそうさせる?何でそんなにストレス溜まってんの?」

「王妃教育!私、女王の教育しか受けてこなかったから、急に王妃教育とか詰め込まれて、

 もう大変なんだからね?」

「何で今更王妃教育を?」

「貴方が王になって、私が王妃になるからじゃない!」

「おお〜〜 そんなら、フィオナが女王で良くない?何で俺が、王?」

「私を始め、貴方が王になる事で、皆んな納得してるからでしょ?それより今はこっちに集中でしょ?」

「それなんだけど、フィオナはここで待っててくれ」

「嫌よ。こんな所で1人待つなんて」

「だから、付いてくるなって言ってるのに……

 見ろよこの大きなドア。隙間から尋常じゃない量の濃い瘴気が漏れ出してる。

 そして中にいる奴。普通じゃないぞ?」

「そんなに?」

「そ。だからここで待ってること」

「ここにいたら、どんな奴が来るか分かんないじゃない?私を1人残すの?」

「しょうがない一度フィオナを王城に戻すよ」

「い・や・で・す〜」

「我がまま〜 今夜はお預けだからな」

「良いですよ?」

「いやですよ?ってなんでよ?」

「怖いのよ……」

「怖いんだろ?だから王城に……」

「違う、怖いのは貴方に、万が一、何かあったらって……我がままなのは分かってる。

 でも、結婚してから益々、貴方が大切な存在になって……」

 アルティスに向かい、上目遣いで涙を溜めるフィオナ。後ろを向いてテヘペロしている。

「ごめん。扉の向こうの奴、そこまでじゃない。

 フィオナ危ない目に合わせたくなくて嘘ついた。一緒に行くか?……」

 フィオナの涙にめっぽう弱いアルティス。

「うん……私こそごめんね?」


 〝ギギギギギ〜〜〝少し錆びついているドアをこじ開ける。

「うわ!霞むほどの瘴気。目が痛い。でかいのがいるな?」

「あれ、龍かしら?」

「紫色に染まった瘴気龍って奴だな?最大魔力で浄化してみるか?

 フィオナも一緒にピリフィケーションな?せ〜の!」

「「ピリフィケーション!」」

 瘴気が浄化されている気配は全くなかった。


「うわ〜全然ダメ?」

「汝らは何者ぞ?」

「「しゃべった!」」

「汝らは何者ぞ?」

「お前の瘴気で、魔物が混乱していて、街が危険に(さら)されている。

 浄化出来ないのであれば、悪いが消滅させてもらうしかない」

「そうか。色々な所に迷惑をかけておるのだな?構わん。消滅出来るのであればやってくれ」

「……良いのか?」

「よい。我はここからは出られん。ただ瘴気を吐くだけ。生に何の意味があろうか?」

「出られんとは?」

「この瘴気の沼から、どうやっても出られんのだよ?いっそ消えてしまった方が、どれほど楽か」

「何か気の毒だな?聞いた事があるよ。大人の龍は瘴気をものともしないが、

 子供は瘴気に囚われると、瘴気龍になってしまうと。子供の頃ここに?」

「いや分からん。我は何処で生まれ、何故ここにおるのか。何一つ記憶がない。

 ずっとここに1人で居た……」

「それは……やりきれないだろうに……お前の記憶、探ってみても?」

「我の生い立ちを探れるのか?」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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