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70 娯楽の神、シャルおじさん

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

「あれ?シャルおじさん?こないだぶり〜」

「こないだと言うのはフィオナちゃんを見せに来てくれた時かい?もう1年経つよ?」

「そんなに? で、今日はどうしたの?地上まで降りて」

 シャルとは娯楽の神。アルティスが1番懐いていた神だ。

「もう直ぐ結婚式でしょ?何か必要な物、手伝う事とか無いかい?式には娯楽が必要じゃ無いの?

 そう思ってね、様子を見に来たんだよ?」

「有難うシャルおじさん。でも特には……かな?他の神は殆ど地上に降りないけど、

 シャルおじさんはよく来てる様だね?」

「そうかな?他の皆んなは、地上にあまり降りない?」

「そうでしょ?創造神のじいちゃんが降りたのは、数千年前、人族と魔族の争いが多くなった時、

 大賢者として結界を張ったり、魔道具を提供したり。その後は俺を助けに降りた時で、数千年ぶり。

 ミリア姉さんも、俺が地上に帰った時で、数百年ぶりだったって言ってた。他の皆んなもそんなもんでしょ?」

「僕は娯楽の神だからね。地上の皆んなの、楽しそうな笑顔を見るのが嬉しいんだよ」

「で、様子を見に来たのは俺の事だけ?王都とかは?」

「ん?アルだけだよ?何故?」

「あ〜その〜 まあ娯楽の神としては、地上の中心、王都が気にかかるかなってね?」

「いや?アルのお陰か、皆んな楽しそうで、娯楽の神としては言う事ないよ?

 気にかかる事があるとすれば、あの悪魔の事だけだね。

 アルの結婚式を台無しにして欲しくないからね」

「そこは大丈夫なんじゃないかな?魔神って戦いに矜持を持ってる気がするよ?戦いを楽しんでるみたいな?

 だから結婚式には、事を起こさない気がするな?あの神は」

「あれを、神って認めるのかい?」

「一応ね。あれだけの力を持ってるしね」

「そうかい?」

「それに、その時とは、結婚式の事じゃないでしょ?たぶん、まだ少し後じゃないかな?」

「アルには、その時が分かっているのかい?」

「いや、正直言って分からないけど……何となく、こうかな?っていうのはあるよ?」

「何故かアルには余裕を感じるね。何故だい?」

「別に余裕なんて無いよ?でも負ける気もしないけどね」

「フフフ良いねそれ。じゃあ結婚式を楽しみにしているよ」

「あのねあのね、皆んな地上に来て結婚式の料理食べれないでしょ?

 だから〝直前に料理を神界に運んで、一緒に食べて頂きましょ〝ってフィオナが。

 もう、注文してあるから、持ってくよ。そっちも楽しみにしていてね?

 俺が駆けずり回って作った特産、それをふんだんに使った料理だよ」

「それは良いね。アルのところの果物とか美味しいものね。またひとつ楽しみが増えたね」

 娯楽の神シャルが帰っていった。大好きな叔父さんが帰ったからか?

 アルティスは寂しそうな、それとも悲しそうな顔をしている。



「アル!雨、雨、雨、雨が降ったらどうしよう?何か楽しみ過ぎて頭からすっぽり抜けてたわ……

 今からテントとか用意出来るかな?」

「雨は心配しなくて良いよ? 自然には、あんまり手出ししない様にって、じいちゃんから、言われてるけど、

 結婚式ぐらいはね?良いんじゃない?」

「良い天気に出来るの?雨降らない?」

「勿論!でもきっと神々が、最高の天気にしてくれるんじゃない?」

「あ、私もそんな気がしてきた。皆さん優しいもんね。私の事も可愛がってくれて」

「可愛いフィオナの為ならばって?」



「す、凄いっすね〜 圧巻ですよこの人、人、人。一体何人集まるんですかね〜?」

「5000人超えの予約だってさ」

「そんなに部屋あるんすか?」

「おお、大丈夫なんだと。この宿……ホテルって言うらしいけど、

 上に7階まで有るだろ?大勢宿泊出来るらしいぞ?」

「たった2年で、このリゾートを作るとは驚きっすね。

 ホテル?の従業員とか、料理人とか、人は足りてんすか?」

「ここの噂を聞いて仕事を求め、どんどん人が集まって島民が増えたらしいぞ。

 島民の住む所も、白い建物で統一されてて、凄く綺麗で皆んな住みたがるんだと」

「ところで、予約も取らず来ちまいましたけど、俺らはどうすりゃ良いんすかね?」

「そう言う奴も多いらしくてな、島民が越す前の仮設住宅を、タダで貸してくれるそうだ。

 飯も出してくれるってよ?」

「凄いお人ですね?アルティス様は?」

「だよな?そこで猫みたいな格好して、フラフラしてる奴とは大違いよ」



「な、何ニャ?この人は?ニャンでこんなに多いんニャ?」

「アル。猫になってるニャ……う、移ったわ〜〜」

「あんニャも驚いてるって事ニャ」

「1000人位とは聞いてたけど、それどころじゃないわよね?」

「どう見ても数倍いるキャも?」

「フィオナ姫、参列者のご家族やお連れも居るでしょうし、他にもひと目、世紀の結婚式を見たいと集まってきたらしいですぞ?」

「ハートさん。こんな人数この島に収容できるのです?」

「アルティス様の意向で、5000人以上収容出来る施設を建設しましたから大丈夫との事です。

 そもそも船や宿泊施設も、全て予約制ですので心配ないかと」

「ハートさん。それ、全然足りないって。予約取らずに来た人が大勢いるらしいよ?

 だから仮設住宅を貸すことにしたんだよ?

 ハーゲンさんに、手筈お願いしたから、今頃大忙しだと思うよ?

 時間があったらハートさんも手伝ってあげてね」

「そうでしたか。では私も兄上のところに行って参ります」

「でも、この人だかりだと、観光はもちろん、残念だけど、お散歩も出来なさそうね?」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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