68 アルティスが5人
神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。
「ねえ、ユッフィー。アル見なかった?朝食の後から、どこにも居ないのよね」
「どうしたの?」
「モーニングの衣装合わせに、
仕立て屋さんが来るって言っといたのに、どこにも居ないのよ?」
「アル兄、服に興味薄いもんね?結婚式用?」
「それもなんだけど、取り急ぎ私の卒業パーティー用ね?」
「卒業パーティー?フィオナ姉様の?何でアル兄がモーニング?」
「私のエスコートよ?アルは、私の婚約者なんだから彼にエスコートしてもらうのよ」
「あ、それか。 ちょっとアル兄の気配探ってみようか?」
「ユッフィー、そんなアルみたいな事出来るの?」
「出来るよ?エーテルの力を借りるの。でも、エーテルが反応するのはアル兄だけだから、
アル兄と違って、他の人の気配とかは分からないんだけど」
「い〜な〜。私も、それ出来る様になりたいな。アル直ぐ居なくなっちゃうんだもん」
「じゃあ探してみるね。あれ?変だな?何処にもアル兄の気配を感じないよ?
もしかすると、又、異空間に行ってるのかな?」
「アルが異空間を使えるのは知ってるけど、そこに居るってどういう事?」
「そのままだよ?剣やら体術やら、特に魔法の訓練は、いつも異空間使ってやってるよ」
「そうなの?でも何でわざわざ異空間なの?」
「地上でやったら、周りが大変な事になるからじゃない?」
「……確かに、ここにはアルが訓練出来る場所はないかも……
特にあの見境のない魔法……軌道を間違えたら、王都が吹き飛んじゃうわね。
あ〜 でもどうしよう?」
「エーテルにアル兄の居場所聞いてみる?」
「エーテルが教えてくれるの?て言うか、エーテルと話せるの?ユッフィー」
「話すと言うか……意思の疎通が出来るって事よ?
え〜〜と……あっ、ほらそこに楕円の穴……その中の異空間に居るって」
10mほど先の庭に、何やら楕円形の穴が渦巻いている。先程迄は、何も無かったはずだ。
「居るかも?気配がする。覗いてみようよ?」
「な、何あれ?アルが5人。1体4で、戦ってない?どれが本物のアルなの?ユッフィー分かる?」
「訓練しているって事は、あの1人の方がアル兄でしょ?」
次々に剣を繰り出す4人のアルティス。
それに囲まれた真ん中のアルティスが、その剣を受け流し受け止める。
あり得ないほどのスピードで、フィオナ達には目で追う事が出来ない。
光が走ったと思えば、火花が飛ぶ。1人2人と、次第に4人のアルティスが消えていった。
「お〜い!アル〜!」
「アル兄〜〜!タイムタイム!」
「あれ?フィオナとユッフィー?なんだ?あ、そこの穴、首突っ込んじゃダメ。
異空の狭間だから危ないよ?」
「訓練してたの? さっきの4人のアルティスは何?」
「魔神が連れてきた剣神、闘神のコピー。2神にそっくりだったし、力も技も同等……
あれをヒントに、俺のコピー作って、訓練相手させてるんだ〜」
「同等って4人相手に圧倒してたじゃない?コピーは経験値が無いって言ってたけど、それで?」
「あのコピーは経験値も付与してあるから、本当に俺同等の力だよ。
魔神が俺同等のコピーを作れるとは思わないけど、念の為ね」
「だったらどうして、同等なのを、4人同時に相手して圧倒出来てたの?」
「色んなことやってるからね。今のは自分の限界を越えるブーストを試してたんだよ」
「うわ〜 それ以上強くなって何がしたいのやら……
とか、のんびり話をしてる場合じゃなかった。
仕立て屋さんが来てるのよ。そう言っておいたじゃない」
「うへ。すっかり忘れてました……」
「うん良いよ!素敵じゃない!アルティス。ホワイトタキシードすごく似合ってる!」
「そう?そうかな?こういう堅苦しいのは、動き難くて苦手なんだけどな……」
「素敵素敵!ですよね?仕立て屋のお姉さん?」
「はい!とてもお似合いで……」
トロトロの目で見る仕立て屋さん。目がハート。
「身長もさらに伸びて、これは益々、注目の的だわ。女子の目が皆んなハートになりそうよ?」
「注目……は、嫌だな。やっぱり、ホワイトやめて、もっと地味にしよ?」
「ダメ!ぜ〜ったいダメ。それが良いの」
「あ〜分かったよ。フィオナの卒業パーティーのエスコートだからな。お前の言う通りにするよ」
「うんうん!」
「ところでだ?何でフィオナはそんなに肩とか露出してんだ?」
「ダメ?」
「綺麗だけどさ?男共のいやらしい視線が……」
「あ〜ら。アルティス?やきもち?」
「何だそれ?美味いのか?」
「美味いわよ……海苔も巻いたら最高よ……」
いや、醤油が必要だろ?そもそも、餅も海苔も無いのでは?
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




