06 おっぱい少女
神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。
「ネエ?おっぱい少女。
もう障壁張らなくても大丈夫だよ?十分頑張ったから後は俺に任せて」
「えっ? あれ? 貴方は? おっぱい少女?私? あれれれっ?」
思考が追いつかないソフィヤ。
ソフィアは驚いた。
ここにはもう誰もいないはず?
いつの間にか、横にサファイア色の瞳の少年が、静かに立っていた。
前方を見ると、魔族の全ての攻撃が、広範囲に光の壁に跳ね返され、防がれている。
日が暮れて暗くなった夜空が、眩しい程の光の壁。
信じられない光景が広がっていた。
50人もの魔導師が張った障壁でも防ぎきれず、多くの犠牲を出してしまっている。
今はソフィア1人で、ボロボロになりながらも抵抗していた。
それを……澄ました顔をして、世間話でもしているかの様に、私に話しかけながら?
「それにしても魔族逹多くね?食事冷めちゃわないうちに、いっぺんに片付けて早く帰ろ〜〜」
片付ける?何を?この魔族達?
ソフィアは混乱した。
アルティスの身体が光り出し、その光る手を此方にかざす。
その光に包まれるソフィア。
あっ……とっても暖かい……
そう思ったら身体中傷だらけだったはずが、痛みが消えている。
そして何故か魔力まで回復してる様だった。
手を見てみると、やはり傷は跡形も無く消えている。
この少年が治してくれた?
そうとしか思えない……でもどうやって?
回復魔法だとしても何の詠唱もない。
何故か自分の魔力さえ回復している。
こんな聖魔法、聞いた事もない。
何が起きているのか分からない。
ソフィアは考える事をやめた。
今はそれどころでは無い。
気付くと何故か横が眩しい!
見ると少年の放つ光が更に増し、身体全体が銀色に眩しく輝いていた。
そして魔族の長い隊列に向けその手をかざす。
すると、魔族の足下に大きな魔法陣が、幾重にも浮き上がり、数キロに渡って青く光出す。
やがて目の前に出来ていた障壁が消え、魔法陣から幾何学模様を纏ったドームが浮かび上がり、魔族を包囲している。
「よし、これで外には漏れないかな?」
そう言うと、アルティスのサファイアの瞳が、銀河の星々の様に輝く。
それに呼応する様にドームの中に、明るい光の粒が、小さな飴玉程の大きさで、無数に浮かび上がる。
「殲滅」指をピンと鳴らすのを合図に、無数の光の粒は、ギラギラ光りながら超高速で動き出し、次々と魔族を貫いていく。
直進して線を描き、静止して光る粒になる、そして又、光の線になり魔族を貫く…それを繰り返す。
大きな音をたてるでもなく、ドームの中は、無数の線香花火が現れたかの様に煌めく。
光に貫かれた魔族は、霧の様に光の粒となり、ドームの中は更に煌めきを増す。
血や肉が飛び散らないとは言え、魔族を殲滅しているのだ。これは残酷な景色なのだろう。
しかしその光の美しさに目を奪われてしまう。
夜なのに昼間の様な明るさに、高まる胸を抑え切れない。
そして目の前は眩い白に染まる。
10分程経っただろうか?光の輝きは徐々におさまる。
視界が回復してくると、先程まで埋め尽くされた魔族の姿は一切消え、静寂に包まれていた。
「光は外に漏れて無いよな?うん……」
キョロキョロ周りを見渡すアルティス。
「おっぱいの子……
地下の皆んななの所に案内してくれる?」
「おっぱいの子じゃありません……」
顔を赤らめながら、小さな声で抗議するソフィア。
あのドームは、光を外に出さない為?魔族以外に被害を出さない為の障壁なのだろうか?
それにしても何故地下に人がいる事を知っているのだろう?
「あの?可愛い?おっぱいの子?」
「可愛い……を付けられても……じゃなくて、おっぱいから一度離れて…………私はソフィアと申します」
可愛いと言われ、更に顔が赤くなる。
「ボクはアルティス、人間ニャン♡」
……ポカン?とするソフィア。
ソフィアにも「人間ニャン♡」は効かなかった。
創造神が腹を抱えて笑っている姿が目に浮かんだ。“ チェッ……”
地下に案内されると、そこは地獄絵そのものだった。
「酷いな……」
そう言いながら、ソフィアの後ろを歩くアルティス。
鼻をつんざく血の……そして皮膚の焦げた匂い。あちこちに落ちている血痕。騎士団の損傷は激しい。
暗いはずの地下が、神聖力を纏ったアルティスから、滲み出る霧の様な光の粒で、明るく輝きだした。
暫くすると地下全体が、光で満たされる。
「おっぱ……ソフィア?俺は急ぎ王城に帰らなければならない。
もう既に、こっちに人が向かっているはずだから、安心して待っていて」
「し、城に?貴方は王城から来られたのですか? ちょっ……ちょっとお待ち下さい。
アルティス様は、私にして下さった様に、上位回復魔法が使えるのですよね?
私には、あの様な強力な聖魔法は使えません。
お願いです、ここの人達を助けて……」
聞こえたのか聞こえなかったのか?
アルティスの姿はもうそこにはなかった。
そそくさと消えてしまったアルティス。
どんだけ腹が減ってんだい!
「ソフィア」
絶望に膝を崩すソフィアを後ろで呼ぶ声がした。
「何が一体どうなってるんだ?ソフィア?」
振り返ると、虫の息だったはずの魔法騎士団長のスパイクが、元気そうに立っている。
いや、団長だけじゃ無い?皆、怪我が治っている様だ!
「ソフィア……」
又も、後ろから声が掛かり、振り返るソフィア。
「きゃ〜〜〜お化け〜!!!」
そう叫ぶと、物凄い速さで逃げだした。
それもそのはず。
その声は、火魔法を直撃され、全身丸焦げで、即死だったはずのカリンだったから。
ドン!!誰かにぶつかり尻餅をつく。
見上げると、そこには水魔法で凍らされ、バラバラに砕けたはずのサーシャが!
「どうなってるのよ〜?!」
泣きそうな声でそう叫ぶ。
「いやいや、こっちが聞きたいよ。何がどうなってる?」
「まさか、い……生き返ったの?死んじゃってたよね〜?」
「いや?死んだの?私?……う〜ん?よく分からない……」
「貴方は丸焦げ……貴方は凍ってバラバラ……やっぱ、お化け!?」
「落ち着け……ソフィア」
団長が声をかけてきた。
「怪我人はおろか、死んだ奴も生き返った様だ……さっきの光る霧は何だったんだ?
攻撃の音が止まった様だが、魔族はどうした?教えてくれ」
「教えてくれも何も、私にも何が何やら……でも魔族はもういません。全部消えて無くなりました……」
きっとあの少年が、何かしてくれたのだろう。
と〜〜ってもお腹が空いてたみたいだけど……
バレバレだよね。食事が冷めないうちに早く戻りたいって言ってたし……
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。