56 前世の記憶
神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。
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「エリアス!何もたもたやってるんだ!今日の祈りが間に合わなかったら、
お前も、お前の妹も食事抜きだからな!ほんと使えんな!」
「お、お待ち下さい。司祭様。私は構いません。でも、アイリスはまだ5歳。
育ち盛りに、食事抜きはかわいそすぎます!」
「知るか!そう思うなら、さっさと終わらせろ!この無能聖女が!」
およそ司祭には似つかわしくない、下品なまでに大きな宝石の指輪を、
にやけた顔で見つめながら、朝から肉料理の並ぶ豪華な朝食をとっている司祭サイモン。
醜く太った腹が、普段からどれ程贅沢な生活をしているかを物語っていた。
そして、いつもの様に、サイモンの前には腰巾着アレックがいる。
「司祭様。あんな無能聖女追い出して、新しい娘を探した方が良いんじゃないですか?」
「馬鹿かお前は?無能どころかエリアスの魔力は膨大だぞ?
ああ言って、従わさせているだけだと、何故分からん?無能はお前だ!」
「も、申し訳ありません……」
エリアスとは、前世のソフィアの名前だ。
1200年厄災の大洪水で、両親を亡くし、まだ2歳だった妹とスラムでなんとか生きていた。
〝1200年厄災〝それは1200年毎にやって来ると言い伝えられている厄災。
1200年に一度、一ヶ月にも渡って、天変地異が続くと言われている。
エリアスは運よく流れてきて大木に、アイリスと共にしがみつき難を逃れた。
その時、エリアスは未だ12歳。
しかしエリアスは生まれつき魔力が多く、めったにいない聖魔法を使える子供だった。
雨だけ防げるスラムの片隅で暮らす様になった、エリアスとアイリス。怪我や病気の人を治し、僅かなお金を稼ぎ、食い繋いでいたのだ。
ある日、偶然、教会の司祭であるサイモンに、怪我を治している所を見られる。
「食べ物、着る物、住む所。全て困らない様にするから、教会で働かないか?」
そう誘われ、アイリスのことを思うと、その方が良いだろうと、その提案を受け入れ、教会に入った。
しかし、ここで待っていたのは、スラムより酷い生活。
夜中の3時に起こされ、聖杯が聖魔力で満タンになるまで、祈りを捧げさせられる。
それが終わるのは、夜10時近くだった。
粗末な着物に、固いパンと、具のほとんど入っていないスープ。
アイリスの為にそれすら分け与え、エリアスの身体はガリガリに痩せていた。
自分で作った薬草畑の薬草を食し、命を繋ぎ。
風呂にも入れず、横の小川で体を清めた。
アイリスを人質に取られている様な状況で、逃げようにも逃げられず、
死にたくても死ぬ事すら許されず、3年の月日が経った。
一方、司祭のサイモンには、エリアスの祈りの効果で、魔物が減り、豊作が続き、
その見返りに、国から多大な寄付が入り込んでいた。
神に仕える者とは、到底思えない豪遊を繰り返し、下品な装飾で身体を固めている。
「おい、エリアス。明日から暫く、国王軍の遠征に付いて行け」
「あ、あの?アイリスを連れて行っても?」
「バカを言うな。戦ではないが、そんな小さい子を連れて行けるわけないだろう?」
「で、でも……」
「心配するな。ほんの2週間程度の遠征だと聞く。
こちらでちゃんと面倒は見るから、お前はしっかり、聖女の仕事をしてこい」
(ふん。2人を一緒に遠征になど出せるものか。逃げられてたまるか)
アイリスをこの人達に任せられる訳がない……そう思うものの、拒否など出来るはずもなかった。
「良い?アイリス。絶対に皆んなの前で、魔法を使っちゃダメよ?」
「うん、分かった。お姉ちゃん。早く帰ってきてね?」
アイリスは、膨大な魔力を持つエリアスを、更に凌駕する程の魔力を秘めていた。
聖魔法も教えればすぐに覚えて使える、まさに天才だった。
そんな事を、司祭に知られたらどうなるか?
自分が、良い例である。何が何でも隠し通さねば……エリアスは、そう考えていた。
国王軍の遠征は、延びに延び、やっと帰る事が出来たのは1ヶ月後だった。
「アイリス〜〜アイリス〜!……あ、あの……アイリスはどこですか?」
「……あの子は、死んだよ」
「し、死んだ……う、嘘ですよね!」
「流行病でな?どうにもならなかったよ」
「う……嘘をつくな〜〜!!隠していたけど、アイリスは、聖魔法を使えたんだ!
病気で死ぬはずがないだろ〜〜」
エリアスの怒りが限界を超え、身体が、禍々しい紫のオーラーで歪む。
「許さない許さない…………」
〝ああああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〝
先ずは司祭。近くの者から順番に、それに侵食され、倒れて行った。
〝オウ!オウ〜〜オオオォォォ〜〜〜〜〜〜〝
15歳の少女とは思えない声を上げ、教会のバルコニーから自らの身を投げその命を絶った。
この後、エリアスの呪いなのか……この国は、一ヶ月は続くと言われていた1200年厄災どころか、
300年も厄災が続いたと言う。
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