45 バカだったわ……
神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。
「……と言う事で、貴方方?魔王を倒すとか言ってないで、自重して下さいね?」
「何をおっしゃるフィオナ姫。
貴国でももちろん、我がカンターベラ国においても、魔族は敵!絶対悪ではありませんか?」
「バカなの?話聞いてました王子?そもそも8人も居る魔王を、貴方方でどうやって倒しますの?」
「は……8人? や、やだな〜 魔王が8人もいる訳ないじゃないですか〜?」
「バカだったわ……貴方の国にも、諸々の事情を知らせた通達が、いってるはずですよ?
その上で各国の代表に、アルティスの元に集まって欲しいと、
人族最大の国ハルステイン王国のリヴァルド王……私の父の名で召集がかかっていますよ」
「何だって?たかが公爵風情が、各国の王を集めるだと?バカにしているのか?お前」
「貴方の御父上も、各国の王も、皆なさん、アルティスの事は理解していますよ。
集まる事にも納得していると思いますが……理解できていないのは貴方だけでしょう」
「嘘だ!こんなガキに、父上が跪く訳がない!」
「はぁ〜 跪く……ですか…… そうだ、貴方、転移装置使わせて差し上げますから、
一度カンターベラにお帰りなさいよ。
行けば理解できるはず……貴方の国で、アルティスの事知らない人は1人もいないのですから」
「何言ってるんだ?フィオナ姫?俺の国の皆んながこいつの事知ってる?な訳ないだろ?」
「だから、説明するより一回帰れ!も〜イライラするわね」
「意味わからん。そっちこそバカなんじゃないか?」
「貴方ね?この前のカンターベラの大洪水の時、どこで何してたのかしら?」
「……い……いや……魔王討伐の旅をだな〜……」
「遠くに居て、なにもしなかったと?」
「いや……そもそも知らなかったし……知ったのは、かなり後だったんだ。仕方ないだろ?」
「あの時、被害を受けた人々を助けたのは、このアルティスなのよ?それも知らない?」
「……………………」
「大量の水、食料、物資……全て、この公爵風情が自費で用意し、
助けたのよ?
あの国で、この公爵風情は、神の如く崇められてるのよ?
貴方はどうかしら?あの国で、貴方をまだ勇者だと思っている人は、居るのかしらね?
ね、アルからも何か言ってあげたら?……て、何、目をしばしばしてるの?」
「誰なのこの人?フィナが言ってた、勇者の王子さん? キラキラ眩しくて話に集中出来なかった……
金髪は良いとして、金糸の服に金の指輪とネックレス。趣味悪……」
「こ、この貧乏公爵が!」
「何を言ってるの?さっきの話、理解したの?アルは、自分の使うお金は持ってないけど、
それは全て、惜しみなく他国の民の為にまで使ってるからなの!まだ分からない?
大体貴方、アルが言う様に、キラキラキラキラきもいのよ。
男はね、いざという時にギラッと銀色に輝けば良いのよアルみたいに!」
「フィナ?国際問題が何とか言ってなかった?
なあ?キラキラ王子さん。そっちの勇者パーティーの怯えよう見て、
何にも感じないのかな?こいつらを、きっちり躾してやろうと思って来たのに、
この怯え様を見て拍子抜けしちゃってるの俺」
「はぁ?何を感じれと?俺はカンターベラ国の勇者なんだぞ!勝手に口をきくな!不敬にも程がある。
ここで俺と対等に話をしても良いのはフィオナ姫だけだ。
そうだ、なんなら俺の嫁にしてやっても良いぞ?」
「「「「「あっ……」」」」」
言ってはいけない事を……狼狽えるハルステイン王国の勇者パーティー。
アルティスの目の色が変わった。迸る殺気。空気が凍った。
「立てよ……お前今、何てった?」
この一瞬で、アルティスの恐ろしさを理解した第二王子は、立つどころか息をするのも忘れ、震えるばかり。
股間から温かいものが流れ出した。
「あっ……温かい国際問題が股間から…… この人が勇者?勇者って一体?」
呆れて、いつものアルティスに戻っている。
「それからハルステイン王国のあんた達、勇者とか聖女とか名乗るのもう辞めてくれる?
勇者を騙って王国民に、たかるのは金輪際なしにしてね?
神の啓示を受けて……とか言ってるみたいだけど、創造神は、決してお前達の様な者に、加護を与えたりしないから。
近々創造神の孫、アルティスとして、王国全体に正式に神の啓示を出すよ。分かった?」
〝コクコク〝と頷く勇者……いや元勇者パーティーの面々。
「帰ろフィオナ」
「貴方達、王城に滞在するのを許可しますから、これ以上教会に迷惑をかけるのは辞めて下さい。それじゃ」
そう言ったフィオナだが、彼らが王城に来る事はなかった。
後日、勇者の事は、創造神の孫、アルティスとして正式に啓示された。
教会の大聖堂。アルティスが壇上に立つと、ほんの一瞬ではあるが、後ろに神々が顕現したと皆はいう。
創造神の孫という事を誰1人疑う者はいなくなった。
アルティスの声はいつもと違い低く重々しいものだった。
それ以降、暫くは元勇者パーティーの噂を聞くことが無かったそうだ。
しばらくはね?
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




