43 あ〜うん、ユッフィーが1番
神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。
王城、夜のバルコニー。空には銀河が美しく輝いている。
それに対して、アルティスの瞳の銀河はどこか悲しげに曇る……
風を受け白いロングコートをはためかせながら、遠くを切なそうに眺めるアルティス。
苦悶に下唇を噛み一筋の血が流れていた。
「あ、アル……どうして?……そんな顔……」
「ん?フィナ?何で涙を流して……」
「うっうっ……えぐうっ……ぁぁぁぁ」
嗚咽を漏らすフィオナ。
「貴方……何故?そんな悲しい顔……初めて見た……そしたら……うぐっ……私、悲しくなって……
涙が……止まらなく……」
アルティスの悲しそうな顔を見たら、わけもなく自分が居た堪れなくなった。
アルティスの心の痛み、苦しみ、悲しみが、直接フィオナのものになる程、
2人の絆は深まっていた。
「優しいなフィオナは……ちょっとね……あの悪魔の神の事……考えてただけだよ」
「何故それで、あんなに悲しげな顔を?あんな顔のアルティス初めて見た……
何が貴方を……悪魔の神……何か思い当たる事でも?」
困った様な顔をするアルティス。フィオナの手を引き、優しく抱きしめる。
「俺の事知ってるみたいだった……今言えるのはそれだけ……
でも、俺そんなに悲しそうな顔だった?」
静かに頷くフィオナ。
「もう一度フィオナって呼んで」
「……フィオナ」
フィオナは暖かくて、とても柔らかかった。
「癒されるな……」
「何?」
ニッコリ笑うアルティス。目がフィオナへの愛と優しさに溢れていた。
「アルよ、地脈の調査ご苦労だった、礼を言うぞ。大変だったそうじゃないか?」
「え、そんなでもなかったよ?改まって礼を言われる程の事じゃないから気にしないで?」
「いやお前、地脈を調べに行ったら、悪魔の巣が在って、悪魔と悪魔の神を撃退し、
悪魔の魔道具を壊し地脈を治す。更に聖魔法で世界樹を復活させる?
普通なら多くの犠牲を払いながら、数ヶ月は掛かる仕事だぞ?」
「ん〜〜そう?自分では、そんな大仕事してきた自覚無いけど?」
「アルティス……それをさらりとやり、大した事はしていないと言えるお前は、
この国で治る様なスケールでは無いな……
ま、何はともあれ、礼を言う」
「俺は自分のやりたい事をやってるだけだから……」
「やりたい事?そうかそうか……」
嬉しそうに、何度も頷くリヴァルド王だった。
「ところでアル君?貴方スノタールで、フィオナと同じ部屋に泊まったんですって?」
悪戯っぽい笑顔で、エリザベスが話を変えた。
「ソフィアも一緒だったし、アルだけ別のベットで……」
フィオナがアワアワ言い訳をする。
「あら残念ねアル君?フィオナ貴方、奥手ね?」
「フィオナ、オクテデ、マジメスギ。オカタイ。オレマジメキライ」
「な、何カタコトになってるのよ?」
「ねえアル君、私とフィオナ、どっちが綺麗?」
「フィオナ」
「即答?でもほら私の方が、胸もあるし大人の色気?有るんじゃない?」
「胸?服着てるし、よく分からない……」
「アル君、未だフィオナの裸見た事ないの?」
「フィオナ、オクテデ、マジメスギ。オカタイ。オレマジメキライ」
「だから何故カタコト?見せた事あるわけ無いでしょ?変なことばかり言わないでよ?お母様」
「でも私の裸は見たのでしょ?」
「見てない……」
「嘘、聞いたわよ?」
「俺が見たのは、骨と皮だけの何かです」
「まあ、酷い!でも今は元に戻って、中々綺麗だと思うわよ?見てみます?」
「是非とも!」
後ろからコップの水が飛んできて頭にかぶる。フィオナだ。
「フィオナと比べてみます?」
〝コクコクコク〝
更に今度は横から飛んでくる。今度は事もなく避ける。
リヴァルド王だ。そんな物、避けようと思えば、いつでも避けられるし……
「冗談だって、このやきもち焼きのリヴァルド父さん」
「で、ほらほら〜?服の上からだけど、どっちが良い?」
「う〜ん?やっぱフィナの胸の方が可愛いかな?
フィナも大人になったら、エリザベス母さん位が良いのかもね? でも、やっぱ分かんないや……」
「あ〜ら、負けちゃった。残念ね〜」
「エリザベスお前な〜」
「アル兄様、私は私は〜?」
ユフィリナが参戦してきた。お前、胸無いじゃん?
「好きじゃ無いって言ったらユッフィー泣くし、好きって言ったら皆んなから変態扱いされるから……
後5年経ったら比べようか〜?」
「え〜なんでなんで〜?ユッフィーが1番て、言ってよ〜」
「あ〜うん、ユッフィーが1番」
「やった〜 エッヘン!」
「あ〜もう、お腹いっぱい。もう胸の話は良いや〜 何でこうなった?」
「ホホホ……」
エリザベスさん。元気になって良かった良かった。本来の美しさもすっかり戻っている様だ。
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