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37 ね〜なになに?見せて〜

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

「数々の功績を(たた)え、アルティス・フェイトに、公爵位を授ける事とする」

「謹んでお受け致します。身を粉にして、この国に尽くす事を誓います」

 玉座の間には、数十人もの貴族が並んでいた。

 割れんばかりの拍手に包まれるアルティス。

 神々しいまでのアルティスの姿に、素のアルティスを知らない貴族の面々は、眼を潤わせ息を呑んだ。


 叙勲式(じょくんしき)の夜、盛大に舞踏会が開かれた。

 神の子だの英雄だのの噂が広まった今、この強大な力を持つアルティスを、

 どこの国も喉から手が出る程欲しがる。

 今の内に、英雄アルティスは、ハルステイン王国のもので、

 フィオナ王女との関係も公に知らしめる……

 その為の、王国始まって以来1番盛大と言える舞踏会を、各国の元首を招待し開いたのだ。


「あいつさ〜10年も行方知らずだったんだろ?まともな教育受けてないのに、舞踏会って、まともに踊れんの?」

 突然現れた英雄に、嫉妬する若者は少なく無かった。


 華やかに始まる舞踏会の中、フィオナは彼らに囲まれていた。

 ダンスの誘いを受け、困っているフィオナ。

「いえ……ちょっと今晩は……」

「そうでしたね。今晩は先ず、婚約が決まりそうだと噂の、

 アルティス様との踊りを、ご披露頂くのが先ですかね〜?」

 下心の有りそうな、にやけた顔が気持ち悪い。


(失念していたな〜 アルがダンス出来る訳ないよね……それを分かっていてこの男達は……)

「アルっ!アルってば〜 ご馳走ばかりガン見してないで……」

 (よだれ)を垂らさんばかりに、豪華なご馳走を楽しんでいる周りの人々を、見つめるアルティス。

「だって、食べちゃダメってハートさんが……」

「私たちの分は、後でたくさん用意されてるから……」

 耳元でボソボソと、何かを告げるフィオナ。


「ん?踊れるけど?」

「まじ?」

「まじ!何時かきっと必要になるはずだからって、姉さん女神から特訓受けてる。

 教養も色々、人族が知らないような事まで完璧ニャン」

「だけど貴方、政治とか全然分からないとか言ってたでしょ?」

「そう言っとかないと面倒だったから〜 テヘペロッ」

「ユフィは知ってましたよ?姉さま?」

 まじらしい……

「それでは1曲。お相手頂けますか?我が婚約者殿」

 そう言って、フィオナの手を取り歩き出す。

 紳士然とした完璧な立ち振る舞い。

 見目(みめ)も良いこの2人に、観衆の注目が集まった。


 曲が始まる。アルティスの体は流れる様に自然に動く。

 髪の動きや、衣装のたなびく動きまでもが美しく、

 観衆の目が釘付けになる。あちこちから感嘆の溜息と声が()れてくる。

 フィオナはアルティスとのダンスが、只々(ただただ)気持ち良く楽しかった。

 割れんばかりの拍手と喝采の中、演奏が終わった。


「チッ、あいつ踊れんのかよ」

「何言ってんだよ?あれは踊れるとか言うレベルじゃないだろ。

 誰だよ、踊れる訳ないって言ってたの?」

 馬鹿にしてやろうと言う目論見が外れ、悔しそうに顔を歪める若者数名。

 性懲(しょうこ)りも無く、又近づいてきた。


「ダンスお見事でした。アルティス公爵。是非この辺で、一言ご挨拶でも頂けないかと……」

(誰だコイツ?フィオナが、さっき言ってた奴か?

 ダンスでダメなら挨拶で恥をかかせようって?)


「フィオナ姫、この方々は?って、

 あっ、思い出した!あんた10年前のお披露目会で、小便漏らしてた奴じゃん?」

 5歳のアルティスの殺気に当てられ、漏らしたバンジャラス伯爵の嫡男コーリンだった。

「き、貴様っ!」

「そういえば貴方10年前、とんでも無いことをしでかした上に、

 アルティス・フェイト公爵に大恥をかかされた、バンジャラス伯爵家の嫡男コーリン様でしたね。

 私あの時私、テラスの上から全部見てましたのよ?それにしても貴方今、貴様とか仰って?

 貴方は爵位も未だ持たぬ、唯の伯爵家嫡男。アルティス・フェイト公爵への不敬なのではありませんか?」

 コーリンは何も答えず、顔を真っ赤にしてスゴスゴ消えていった。


 一方アルティスは、壇上で挨拶をしなければならなくなった様だ。

「本日は、お忙しい中ご主席頂き誠に有難うございます。この度公爵を賜りましたアルティス・フェイトと申します。」

 文句のつけようの無い、理路整然、完璧にて簡潔な挨拶……が続く。

 誰だこのクールなイケメンは?

 舞踏会は、アルティスとフィオナの婚約の発表で、大喝采の中、終演を迎えた。



「疲れたわね?」

「こう言うの慣れて無いからね……」

 着替えを終え、記念すべきこの日の為に、

 王城の最上階のバルコニーに用意されたディナー。

 今は、フィオナの肩をそっと抱き、宝石を(ちりば)めた様な満天の星空を見上げるアルティス。


「貴方が戻って来てくれて、本当に良かった……」

「随分心配させてしまったみたいでごめんね……それにしても今夜のフィオナは少し大人っぽいな」

 珍しく胸元の開いた、真っ赤なドレスで身を飾ったフィオナ。

「今夜の為に、少し背伸びして用意したのよ?どう?」

「何時もの可愛いフィナも好きだけど、今夜のフィオナも良いね。

 俺思うんだよ?幸せ者だなって。神界では家族になってくれた神々が居て。

 地上に戻ったら、王家に父と母が出来。ハートさんという祖父まで出来た気分。

 それで妹まで戻り、フィナが何時も(そば)に居てくれる。

 これが何時迄も続くと良いな」

 そう言いフィオナをそっと抱き寄せる。

「私も、とっても幸せよ。アル大好き」

 アルティスの胸に顔を埋めフィオナが呟いた。

 自然に顔と顔が近づき唇が重なる。優しくゆっくりと時が流れた。



「アルの奴、あんなに尻尾を振りおって〜」

「貴方、アル君には、尻尾は有りませんよ?」

「ね〜なになに?見せて〜」

「ユッフィーにはまだ早いです」

「え〜〜〜〜ずる〜い!」



「フィオナ!やったね!」

「これこれ、のぞきはダメじゃぞ!ソフィア」

「自分だってじゃない!お父様」


「え〜の〜〜若いものは」

「何、のぞいているのです?創造神様」

「いや、お前もじゃろ?」


 アルティスとフィオナの、この姿は、皆んなの心を幸せにした様だ。

 アルティスは、沢山の気配を、この夜だけは感じる事が出来なかったらしい……

(それどころじゃね〜し!)

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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