35 アルティスが世に認められた瞬間
神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。
叙勲式を控えた、ある日の夜。
公爵に陞爵すると、アルティスとフィオナの婚約が、正式に結び直される事になる。
その叙勲式が執り行われる、その日の夜、各国からも来賓を迎え、盛大に舞踏会を開く事が決まった。
その際に婚約を発表する運びとなっている。
だが結婚……いや婚約前には、フィオナに言っておかなければならない大事な事があった。
これ迄、避けてきた話をフィオナとしなければならない。
アルティスは、城のバルコニーで、王都の夜景を憂鬱そうに眺めていた。
「お待たせ〜ごめんなさい。ちょっと遅くなっちゃたね」
フィオナがやって来た。風呂上がりなのか、いい匂いが優しく鼻をくすぐる。
「何なの話って?」
「フィナ、君が大好き……一生そばに居て欲しい」
「えっ? は……はい……私も……貴方の……隣に……ずっといたい……です……」
(今までも、お嫁に〜〜とかって、ずっと言われてたけど……
こんな風に真剣に言われるのは初めて……これ正式なプロポーズなの?)
突然の予期していなかったアルティスの言葉に、ほんのり顔を赤らめるフィオナ。
「だけど、その‘’一生‘’ってのが問題……」
「…………?」
生まれてから暫く、アルティスには、魔力が無いと思われていた。
ハルステインでは、子供が産まれると早々に、神から授けられる加護と、
その子の魔力特性の判定を、教会の司教から受ける事が、世の慣例となっていた。
そして、それぞれの適正に合った教育がされるのだった。
魔力測定器である水晶に、触れさせられたアルティスには、水晶が光らなかった。
光の強さや色で、魔力量や魔力の属性を見極める。
ほぼ全ての人間に、大なり小なり魔力は有った。光らないはずはないのだ。
しかしアルティスのその身に秘めた力は、
神聖力……即ち一粒一粒、意思を持ったエーテルの力である。
そもそも魔力……マナはエーテルが作り出すもの。
それを体内に取り込み、貯めたものが、その者の持つ魔力だ。
エーテルが、常に大量のマナを作り出しているアルティスは、
幼少時の魔王バートランド同様、作り出すマナと集めて溜め込むマナが混乱し、
それを、産まれたばかりのアルティスは、本能のなすまま、押さえ込んでいた。
その為、アルティスには水晶が反応しなかったのだ。
両親は、魔力の無いアルティスの将来を思うと、心配でならなかった。
しかし、産まれて数ヶ月もすると、エーテルと心を通わせていたアルティスは、
エーテルの真似をする事で、既に魔法を使う事が出来ていた。
その魔力量も無尽蔵だ。
両親は、心配している事を、アルティスに悟られない様、気遣ったが、
アルティスは、幼いながら、その不安な感情をを感じとるのだった。
3歳になったある日、自ら望み、再度水晶に触れてた。
今度は水晶が、眩しい程に光り輝く。
アルティスが、エーテルから生み出されるマナを、水晶に注ぎ込んだからだ。
水晶は虹色に光り、やがて渦を成して7色が混ざり、
目を開けていられない程の銀色に輝きだす。
〝ガシャ〜ン!〝という音と共に、水晶は跡形もなく砕けて消えてしまった。
強力な魔力の持ち主、アルティスが世に認められた瞬間だ。
虹色に輝くと言う事は、過去に例が無かった。
それはたぶん、全ての属性を持っていると言う事に他ならない。
そしてあの激しい輝きと、水晶を破壊してしまう程の、計り知れない魔力量。
そもそも、この水晶が壊れる筈はなかった。
大昔の大賢者が造ったと言われ、数千年の昔から存在し、何をしても傷一つ付かなかった水晶だ。
「あっ、壊しちゃった……」
そう言うと、アルティスは、水晶に触れていた手に、更なる魔力を込めた。
光出した両手の中から、破壊されたはずの水晶がゆらゆらと、幻の様に現れる。
アルティスがあの水晶を、復元させたのだ。
この事が更に、教会の人々を驚かせる事になる。
神の子か?はたまた神が使わせた神童か?周りの神官達が、驚きで言葉を失っていた。
このアルティスの神聖力の波動は、神界にまで届いていた。
「創造神様これは……?」
「うん……ペンダントでは収まりきれなくなっとるの〜これは……
あの子の中で、エーテルが増え続けておる」
遥かなる昔、創造神は、自分の持つ神聖力の半分を使い12柱の神を誕生させた。
愛の女神 生命神 魔法神 大地神 武神 剣神 技能神 商業神 学問の神 豊穣の女神 芸術の神 娯楽の神
其々に専門を任せ数万年。
そろそろ頃合い。地上の事は地上に任せ、干渉するのを止める時期が来たと考えた。
数万年の間に増え、かなり戻った創造神の神聖力だったが、
その半分以上の神聖力であるエーテルを宇宙に放出したのだ。
これにより元々漂っていたエーテルの量が、2倍に膨れ上がった。
その力が植物、動物、海や大地……それらに宿り、
神の加護無くして、自力で繁栄して欲しいとの願いからだった。
しかしその輝く力、エーテルの大半はいつまでも、ただ世界を漂い続け、どこにも宿ることは無かった。
「創造神様、どう言う事でしょう?」
「ありとあり得る所に宿ってくれるものと思っておったが、少しばかり誤算じゃったな。
あの1粒1粒には魂と言うか、意思があるのじゃよ。
こうなったら、わしにもただ見ている事しか出来ないのじゃ……」
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