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03 私のアルティス?

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

 アルティス……それは忘れたくても忘れられない名前……あのアルティス?……私の……


「あの……アルティス……様?

 魔王を瞬殺してしまう貴方は何者なのですか?」

「魔王?あれ魔王じゃないよ?ただの魔族でしょ?弱すぎ」

 猫真似はやめた……

「あの?普通に喋れるんですね……?」

 恥ずかしそうに頭をポリポリ掻くアルティス。


「えっ?でも、あの私を(さら)った魔族は、魔王ではないのですか?」

「弱すぎ……雑魚」

 弱すぎ?勇者パーティが、なす術無くやられた……あの恐ろしく強い魔族が雑魚?


 何をどうやったら、あんなにあっさりと魔族を殲滅出来るの?

 理解の遥か上をいくアルティス。


 今、目の前で起きた、この出来事を、どう理解したら良いのか分からない……

 ただこの少年の強さが、規格外だと言う事だけは分かる。


「ねえ、ハルステインの王都ってどっち?」

「王都に行かれるのですか?北東150km程行った所です」

 山の向こうを指差す。

 その指差された方をジット見つめるアルティス。

「ああ、この大勢の人の気配が有る所か……うん、分かった。」

 アルティスは気配を感知する事が出来る。

 この国の広さ程なら、地の果てまでも。


「ありがと、じゃっ!」

 そう言うと空中に浮きかける。


「あのっ!“じゃっ!”じゃなくて、ありがとうは私が言うべき……

 それに……貴方の事もっと……そう! お、お礼もしなくては……父……王にも貴方の事、魔族の事、報告が……」

「王?君のお父さん王様なの? えっと……俺のじいちゃん神様!」

「???貴方は神様のお孫様?それであれ程の力が?」

「ウソ」

「へっ?」

「ハハハッ……全くのウソって訳でも……

 う〜ん…… あのね、5歳の時に創造神のじいちゃんに拾われて、孫の様に育ててもらった……みたいな?ま、そんな感じ」

「ご……5歳の時? やっぱり貴方は……」


「そんじゃっ!」

 2〜3ぽ歩き、飛び立とうとし、何かを思い出したか、ふいに振り返るアルティス。


「あれ?君、王女様?  もしかして、ヒナ?」

「ヒナじゃなくてフィナ! フィオナです!

 ……って…… 私の事知ってる?私をヒナって呼ぶのは唯1人……

 やっぱり貴方は……5歳のお披露目会で、“姫様……ヒナって言うの〜?可愛い〜〜♡

 僕のお嫁さんになって〜”って、いきなり抱きついてきたアル?

 何度フィオナだって言っても、私の事“ヒナ”って呼んでた……

 やっぱり貴方は私のアルティス?」


「………………」

 顔は分からなくなっても抱きつかれた事は覚えてるのね……

 まあ、最も10年も経てば大人の顔にもなるし……でも“私のアルティス”って言った?私の?


「あのすぐ後、貴方は行方不明に、貴方を探しに出たフェイト伯爵……貴方のご両親一行までも行方知らずに……

 あの頃、既に人外とも言える程の力を持っていた貴方は、更に神界で神様の(もと)で育てられ、その力が更に磨かれた?それであれ程の……?」

「あの……本当にヒナ? ちょっと、その顔、綺麗にして良い?」

 そう言うと答えも聞かずに、フィオナの顔に手をかざす。


 アルティスの手から大量の水が噴き出しフィオナの顔にドット掛かる。

 魔法?無詠唱?

「どわ〜〜っ!ごめん!」

 めっちゃかけ過ぎた。

 慌ててもう一度手をかざすと、暖かい風がフィオナに纏い、瞬く間に髪や服まで乾く。


 汚れが落ちた顔は、疲労で少しやつれてはいるものの、息を飲む様な美しさが戻っていた。


「あっ本当にヒナだ!」

 愛らしかった少女の顔は、大人になりかけ、眩しいほど美しく成長していた。

 確かにこの顔はフィオナだ。


「ヒナっ!」

 いきなり抱きつくアルティス。

 5歳の時とやる事一緒かよ?


「離れろ!無礼者!姫を離せ!」

 騎士団長のマイルが叫ぶ。

 あっ、魔族に言ってた事と同じこと言われた……


「良いのです!マイル…… アル離して!」

 良いの?悪いの?どっちだよ!?

「アルティスは私の婚約者だった人なの!」

 そう言いながらフィオナは顔を真っ赤に染めていた。

「えっ?婚約者? うん? 知らんぞ? それで……()()()?いつたい何んの事だ?」


「あ、あのっ!詳しい話は又……それより、貴方が私の知るアルティスだったら……

 この怪我人達を治せるのでは?」

「その必要は無いと思うよ?」

「な……何故?」

「見て」

 空を指差すアルティス。

 空からは沢山のキラキラ光る粒が、ゆっくりと流れ落ちて来ていた。

「あれは……」

「女神の癒しってやつだね? 神は本来、あまり地上の出来事に干渉しないはずだけど……先を急げってさ」

「あの……でしたら私を一緒に王都まで連れて行ってもらえませんか?」

「連れて行く?」

「貴方は空を飛んで行くのでしょ?先程は私を抱いて尚、物凄い速さで飛んでましたよね?

 王都ではさぞ心配して、知らせを待っていると思うのです。一刻も早く戻りたいのです。

 どうか私を王都まで、一緒に連れて行って頂けないでしょうか?」


「ヒナは飛べないの?

 連れて行くのは良いけど?むぎゅーってしないとだよ?落ちたら危ないからね?」


 人は普通飛べないよ。高位の魔法使いなら浮くくらいは出来るけど?


「むぎゅーではなく、そっと優しく、ふわーっとでお願いします。それと悪い顔になってますけど?」

「ソ・ン・ナ・コ・ト・ハ・ナ・イ・ヨ……フィオナ」

「あっ、フィオナって呼べるじゃん……」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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