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27 魔王の一人、バートランドにゃん

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

「たっだいま〜〜」

 アルティスが、1人の男の首根っこを掴み、引き()りながら戻って来た。

 先ほどアルティスが、不機嫌そうに座ってたと言っていたあの男だ。

 その男の姿は、先程とは違い、立派な角が生えていて、魔族だと分かる。


「ねえ皆んな、ストゥールの王城に帰る?」

「えっ?あそこは魔族だらけでは?」

「ん?もう誰も居ないよ?すっからかん。

 それはそれで、不用心だから、帰った方が良いんじゃない?大切な物、色々有るんじゃない?」

「未だ、30分も経ってないじゃない?まさか、もう全部の魔族倒したとか、言わないわよね?」

「終わったよ。なあ?魔王さん」

 腕を上げて魔族の体を持ち上げると、魔王と言われた男が、コクコクと怯えながら頷いている。


「あの?貴方がアルティス様? 私はフィオナの幼い頃からの友人で、

 ストゥール王国の、第一王女エレノアと申します」

「そだよ。ボクはアルティス、人間ニャン♡」

 アルティスが、可愛らしく猫耳で微笑む。

「プッ……ププププッ……」

 下を向き、真っ赤な顔で、肩を振るわせ、笑いを堪えるエレノア。

 いや、堪えてないか?笑っちゃってるし?

「ごめんなさい。フィオナから聞いてた通りの、自己紹介だったもので……

 アルティス様、なんて可愛いお方」

 違う意味で、顔を赤くして、アルティスを見上げるエレノア。

「私のアルティスだってば……」

 小さな声で、抗議(こうぎ)するフィオナ。

「ねえアル。説明してくれる?何があったの?」


「た、大変です!地下の人間共が、全員、居なくなっております!」

「は〜〜あ〜〜?何を言ってる貴様…… 鍵はどうした?」

「掛かったままです!」

「地下の大ホールに、鉄格子を付けただけの急拵(きゅうごしら)えだったが、簡単には脱出出来んだろ。

 隠し通路でも有ったのか?さっさと確認しろ!」

「いえ、ノルマン陛下!違います。その寸前まで、大勢の声がしていました。

 突如、静かになり、不審に思い見てみると、

 中が霧の様な光で満たされており、それが消えると、誰一人居なくなっていたのです」

「寝ぼけてるのか?何をふざけた事を!」

 ノルマンが地下に降りると、やはりそこは、もぬけの殻だった。


「千人近くの人間が、忽然と消えるわけないだろうが!見張りすら満足に出来んのか?

 この無能共!虱潰(しらみつぶし)に探せ!」

 手を振り上げ、殴りかからんばかりに怒鳴る。

 〝ドガンッ!〝

 しかし突如、誰もいなかった筈の、ノルマンの背後から後頭部を殴られ、

 ゴロゴロと吹き飛ばされる。壁に半身がのめり込むんでしまった。


「グワァアアア……」

「ハハハハッ……手加減したとは言え、お前、結構頑丈な?さすが魔王ってか?」

「ううううぅぅぅ……」

 アルティスの横では、更にもう一人(うずくま)っていた。


「お、お前は先程の……」

 残りの1人がいう。

「もう自己紹介はしないよ?ん〜と、そうだな、お前からは、色々聞きたいから、ここに居て、な?」

 アルティスが、指を2本、チョンと男の額に()れると、男は身動きが取れなくなった。

「ほ、他の者はどうした?」

「ん?もう誰もいないぞ」

「あれだけの人数だぞ……この短時間に、お、お前まさか全部、こ、殺したのか?」

「へ〜〜……お前、仲間の事、心配するんだ?」


 そう言うと、後の2人を掴み、アルティスは消えた。

 国境迄、転移すると、魔族領との結界を、いとも簡単にスルッと通り抜け、2人をポイっと投げ出す。

「生きてる? ん?大丈夫ね? バイバ〜イ」


「さ〜て、お前にはもう少し聞きたい事があるんで、

 我らの王の元に、一緒に来てもらおうか」

「ふざけるな!絶対行かんぞ」

「いや、お前に拒否権はないから……そもそもどうやって拒否ろうと?」

「……ぐっ……」



「……て事で、連れて来た」

 ストゥール王城に戻ったアルティスが言う。

「ほ、本当に、この魔族は魔王なの?」

「そだよ?」

「で、お前は、8人居ると言われる、魔王の一人なのか?」

「そ、そうだ。俺が魔王の一人、バートランドだ……な、勝手に口が動く!」

 先程の2本指のチョンで、アルティスの言いなりになってしまっている様だ。


「違うだろ?バートランドにゃん!だろ?」

「バートランドにゃん……」

「プ〜プププ〜 お前、俺の友達になんない? 仲間を心配したりして、けっこう良い奴ぽいし」

「……ぐぐっ……」

「あ、嫌?あそ、それは悪かった。で、お前達は何しにストゥールに行って、

 王城の皆んなを、拘束したんだ?目的は?

 それとフィオナを、どうするつもりだったんだ?」

「人族に攻め入る拠点にする為だ……ぐっ……くそっ……

 ハ、ハルステインでは、上手くいかなかったからな……

 こ、この姫さんは、ノルマン……あ、あそこにいた魔王の一人なんだが、

 人質にとれば、何か使い道が有るんじゃないか?そ、そう言ってな……」

「何故、攻め入る必要があるんだ?」

「し……知らんよ。我らは、別に今の生活に、満足しているからな。

 わ、わざわざ危険を冒してまで、人族の地に攻め入る必要なんてない……」

「ん?お前の言ってる事は、矛盾してないか?」

「い、いや……だ、だから……我らは、そんな事をしたい訳ではない……

 魔族の国、8国は、互いに揉める事もなく、平和だったのだが、

 ここ最近、何故か最大の国、シャトレの魔王が、人が変わった様に攻撃的になってな。

 我らエレノア王国などの、小さな国は、従わざるを得なかっただけだ。

 お前が連れて行った、あの2人の魔王の国も、似たり寄ったりの事情さ」

 だんだんと抵抗する事を諦め話し出す魔王バートランド。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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