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24 あのお金ならもう無いよ

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

 先だって、ハーゲンの元に、叔父ラグナルがやって来て、

 白爵位をアルティスに継く事を、伝えたと聞く。

 伝え終わると、こそこそ逃げる様に帰ったそうだ。


 3ヶ月後にアルティスの叙勲式が行われる事が決定した。

 アルティスが、爵位を継ぐ事になるはずであった。爵位を継ぐだけなのに、叙勲式とは?

 実はアルティスは、陞爵(しょうしゃく)を言い渡されていたのだ。


「ヤダヤダ!父さんの愛した領民を守る為に、伯爵になろうとしただけで、

 その上の上の公爵なんて絶対無理無理無理〜〜」

 侯爵を飛ばしての陞爵。領地も3倍近くになるとか。


「だがアルよ」

 リヴァルド王は、アルティスの事を、アルと呼ぶ様になっていた。

 元々フィオナを、誰にも嫁にやりたく無いという我侭(わがまま)で、

 アルティスに、厳しい態度を取っていただけで、

 アルティスを嫌っていた訳でも、その力を認めていなかった訳でもない。

 エリザベスやユフィリナを、助けてもらったのを機に、

 フィオナの事は諦めがつき、そうなると、

 あの王を王とも思わない、アルティスの態度、そしてアルティスとの会話が楽しくなった。

 息子が欲しかったリヴァルド王は、

 アルティスの事が、実の我が子の様に思えてきたのだ。


「アルはフィオナが欲しいのであろう?だったら伯爵ではちと釣り合わないのだ」

「え〜だって、父さんが伯爵の時に、婚約結んだんでしょ?今更〜」

「あの頃は、わしに、まだまだ沢山、子供が出来ると思っておってな……

 つまりフィオナを伯爵家に、嫁にやるつもりだった訳だ。

 しかし今は事情が変わった。

 長女であるフィナの婿は、将来この国の王になるのだぞ」

「ちょっと待て?王?王配とかってのじゃないの?あれれ?

 いやいやいや、それダメなやつでしょ? 俺、政治、分からないし、

 そっちはフィナに任せて、色々自由にさせてもらおうと思ってたのに〜

 やらなきゃいけない事、それと、やりたい事も沢山あるんだけど、俺〜」

 思った事が、口から出てしまっているアルティス。


 誰もが認める英雄が、王に相応しく、

 他国に対しても、牽制が効く。

 (ゆえ)にアルティスを王にすえるのが、一番良いと言う事になったと言う。

 (うっ、考えてもいなかった!ど〜する俺〜)

 フィオナを欲しいのならと言われ、公爵の件は受け入れるしかなかった。


 異例中の異例では有るが、花嫁の親で有るにもかかわらず、

 親族のいない花婿……アルティスの為、後見人となったリヴァルドとエリザベス。

 いずれ婿になるアルティスを養子には出来ないので、後見人という形をとったのだ。

 これにより、正式にアルティスは、王族の一員となった。

 侯爵を飛ばしての公爵への陞爵も、スムーズに行える。


「ねえアル?貴方、何時も同じ服着てるけど、(たま)には別の服、買ったら?」 

「これじいちゃんが作ってくれた、すごく丈夫で、

 色んな効果が付与された、国宝級の服なんだぞ」

「貴方に付与された服とか必要ない気が……」

「超速で動くと摩擦で、直ぐぼろぼろになっちゃうんだよ」

「ああそうなのね」

「下着とかはもちろん有るけど、後、シャツとか何かは何枚か持ってるよ?

 なんか、服とかどうでもいいから……気にしたなかったな?

 あ、そうそう、白いロングコート、ハートさんが買ってくれて、俺が色々付与したやつも有るよ」

「白いロングコートか〜 数年前、白いコート流行ったんだよ?光と影の英雄が着てたから。

 他の服も有るのは分かったけど、沢山のお金が有るんだから、少しは使わないと……」

「ああ、あのお金ならもう無いよ」

「う……嘘よね?」

「まじ。あれ全部、ハートさんにお願いして、フェイト領の食料配給とか、

 上下水道、道路なんかのインフラ?とかに使って貰もらってる。

 急ぎ学校も直してるところ」

「それじゃ、全部無くなるわね……ってか、それだとむしろ足りなくない?

 お父様に相談してみたら?」

「もちろん全然足りないけど、我が一族の、やらかした事だからね。俺が何とかしなくちゃいけない。

 それに大丈夫。フェイト領は元々、鉱山採掘が盛んで、栄えてたんだけど、

 険しい山が多く、そこをちゃんと道路とか開発しなかったから、ジリ貧なだけで、

 まだまだ魔石とか鉱物が、沢山有るんだ。何とミスリルまで出てきたんだよ」


 ハートとフェイト領の役人が見守る中、空からアルティスが降りてくる。

「ハートさん!凄いよ!ここいらの山々。宝の宝庫」

「左様でございますか。何とか財政を立て直せれば良いのですが」

「これ見てよ〜」

 アルティスが左手を挙げると、空中に穴が空き、

 亜空間から、色とりどりの魔石が、ゴロゴロ流れ落ちて来た。

 足元が埋まる程の量だ。

「こ、これは全部、魔石でございますか?

 何とこれだけで、白金貨、数千枚の価値が有るのでは……」

「後ね、これ」

 亜空間の穴に手を入れると、3M有ろうかという、銀色に輝く隕石の様なものを取り出す。

「こ、これは、まさか……ミスリル鉱石?」

「だと思うよ」

「こんな大きな塊が?」

「ちゃうちゃう、鉱石を集めて、高熱で燃やして、不純物を蒸発させたらこうなったの。

 一度屋敷に戻ったら、また採ってくるから。一度ハートさんに見てもらおうと思って。

 それに普通の鉱石は置いてきちゃったしね」

「お待ちくださいアルティス様。まだまだ有ると?」

「まだまだ沢山有るよ。感知出来てる」

「アルティス様。一度に余り沢山の量を、市場に出してしまうと、市場価値が急降下してしまいます。

 少しずつの方が宜しいかと。

 それにこれだけでも当面、領地立て直し資金を心配しなくて済む程助かりますぞ」

「そなの?」

(すた)れてしまい、減ったとは言え、炭坑夫も、まだまだおりますので、

 その生活も考えて、彼らにやらせましょう」

「空の上から見たけど、山道、酷い荒れようだよ?出来るの?いっそトンネル作っちゃう?」

「いえ、トンネルと言われましても……20km近く有りますから、何年掛かるやら分かりませんぞ」

「え、直ぐ出来るよ?」

 右手の肘に左手を添えて前に出すと。青い光が伸びて山肌に当たる。

 直径10m程に広がり、〝ズウウウン……〝と鈍い音を響かせその光は山に吸い込まれた。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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